沸き立つ想いと京都参拝

雛形 絢尊

第1話

私は深くお辞儀をした。

言うべきではないが、私は運命的な

出会いをと神様にお願いしたのだ。

もしかしたらもしかするかもしれない。

私はお辞儀をやめ、再び境内を散策する。

近くの茶室でお茶を呑み、

一息つきながら私は

水占いというものを水で浮かべた。

なんとも微妙な『末吉』が出た。

人気のおみくじのようで

私は足早にその場を去った。

沸き立つ井戸や大きな御神木を

この目で見ながら私は歩いている。

せっかく京都に来たのならやはり

こう奥ゆかしい景色を焼き付けるべきだ。

そんなことを頭の中で浮かべていると、

肩がぶつかってしまった。

すいません、と私は慌てて振り返る。

あ、ごめんなさいと。若い女性だ。

随分と目が合ったような。

軽く会釈をして彼女は去ってしまった。

私はもしや?なんて思いながらも

神様に感謝を告げ、私は鳥居の外へ。


清水で作った蕎麦を食べ終え、

私は淡々と鴨川沿いを歩く。

人通りが少なくなり、

流れる川の趣を感じる。

運命的な出会い、運命的なもの。

そんなものがあるのだろうか。

川を眺めていると、飛び石が見えてきた。

子供心を曝け出すように私は大胆に石を渡る。

心地よい風がまるで体の一部かのよう司る。

向こう岸から誰かが同じようにやってくる。

彼女は、先ほどぶつかってしまった相手だ。

こんな偶然、もしや。

漸く向こうも気づき、

彼女は「先ほどの」と声を掛けた。

私も偶然ですねと言った。

「さっきの水みくじ、

あなたの結果見ちゃったんです。

ちょうど後ろに並んでて、私も末吉でした。」

彼女は一つ石を渡り、

「私たちもう3回会ってますね」と言った。

「そうですね、今日一日で」と私は言った。

「小野小町の話のようにあと97回

巡り会えたらあなたと結婚します」

と彼女は笑いながら言った。

どういったわけだか、飛び石の上で

私は遠回しにプロポーズされたのだ。

「それではとりあえず、

祇園の方でお茶でもしましょう」

私はこの縁が不思議でならない。

それは今でも尚続く、縁だったのだ。

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沸き立つ想いと京都参拝 雛形 絢尊 @kensonhina

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