一行一行が短く区切られ、とてもとても心地良いリズムで紡がれていく。そして同時に言葉のひとつひとつが、長く長く余韻を残す。 台詞から、登場する品々や色彩から、心理描写から、「2人」の姿がありありと浮かぶのに、詩的な美しさや柔らかさをも感じます。 じんわりと胸に沁みていく、人肌ほどの温もりの、切なさ。 そんな印象を受けました。 大変素敵な作品です。未読の方は是非。
「なごり雪」は、別れの切なさと愛の深さを見事に描いた作品です。特に二人の思い出が心に響きました。別れのシーンも感動的です。曲の方も多くの人々に愛され、カバーされ続けているようですね。蜂蜜ひみつ先生、素晴らしい作品をありがとうございます!✨
誰もが知るあの懐かしのメロディと歌声が読み手の心の中で流れ続ける作品。哀しみも切なさも、優しさも協調も狂おしさも、全てをないまぜにした感情がじっとりと過去の遺物となって朽ちていく。もしかするとそれが別れというものの功罪なのかもしれない。そして誰もが持つ心の瘡蓋をめくる痛みがこの作品に感じられる気がする。
東京駅を発車する新幹線のベル。お別れの時。突端まで駆け出し、行き止まり、感情の唇を噛み殺すように泣いたあの頃。春の薄紅色の花びらが名残惜しい想いを連れてくる物語です。特徴的な句点を排した文体。読点わずか六つを許した全文からは、詩文体を意識したのか、どこかほろりとなごり雪の歌が聞こえてきそうな雰囲気さえ感じます。思い出の曲には、その人の人生が詰まっている。別れの言葉はいらない。この曲を聞けば、あなたに会えるのだから。