番外編 黒猫さんの飼い猫

「城谷さん。あなた、猫は好きかしら?」

猫耳カチューシャを手に持った黒猫さんが、じっとりとした目でわたしを見る。

「え、めちゃくちゃ好きだよ!!何かあった?」

「いや、わたしのお城に招待する時に、猫がダメだったりアレルギーだったりしたらアウトなのよね。うち、猫が3匹いるのよ」

「お城って黒猫さんの家のこと?」

「ええ。両親が建てた家。クロサイユ宮殿よ」

「城なのか宮殿なのかはっきりしてくれ…」

黒猫さん、猫を飼っていたのか。名が体を表しすぎでしょ。

「どんな猫?名前は?」

「黒猫が黒蜜くろみつ、茶猫が餡蜜あんみつ、黄猫が蜂蜜はちみつよ」

「名が体を表してるー!!」

「いつかクロサイユ宮殿に城谷さん達を招待するつもりなの」

そんなこと企画していたのか、黒猫さんけっこう優しいな。

「ほかのメンバーは、猫大丈夫なの?」

「伯は平気みたいだけれど…みこが動物怖いらしくて」

「あんなに勇ましくて運動神経バツグンなのに意外だなぁ…。じゃあみこさんは来れない感じ?」

「克服すると息巻いているわ」

「やっぱり勇ましかった」

黒猫さんはやけに浮かれている。猫耳カチューシャなんて初めて見た。突っ込んでいなかったが、なんだそれ。

「わたし、家にお友達を連れてきたことがないの。」

「そうなの!?意外」

なるほど。だから浮かれているのか。

「じゃあ、わたしが第一号ってことになるのかな」

そう笑うと、黒猫さんも笑った。

「本場のワッフルを用意するわね」

「サラッと言えるのすごすぎない!?」

「そうかしら?」

「すごいよ!!……あ、あと、黒猫さんってこの町に引っ越ししたからうちの高校に転校してきたってわけでしょ?宮殿とまで言える家を引っ越し先に建てられる親御さんすごすぎる!」

そのままわたしは、ペラペラ話し続けた。

わたしがひとりで盛り上がっている間、黒猫さんは、( 'ω')?みたいな顔をしていた。

わたしの話が終わると、カチューシャをつけたり外したり繰り返したのちに、黒猫さんはドヤ顔で言った。

「城谷さん、わたし思いついたのだけれど、ニッポンのスッポンってすごいダジャレじゃない?」

「なんて反応するべきかわかんないよ」

「今度、猫達の写真送るわね」

「ありがとうございます黒猫さま」


家に帰ると、3匹の猫を肩にのせてカチューシャをつけた黒猫さんの画像が送られてきた。思わず

「‪”‬猫達‪”‬のくくりに黒猫さんも入るんかい!!」と突っ込んでしまった。

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