3.シゲル(受)vs ヨシヒコ(攻)

「マスコミは?」

 ネクタイを外しながらヨシヒコが問う。


「ホテルの前でたむろしてるよ」

 カーテンの隙間から外を覗きながらシゲルが応えた。


「何故、いつもの料亭じゃなくて、ホテルの部屋なんですか、だって」


「料亭じゃエッチできないもん、って言ってやったらよかったのに」

 ヨシヒコはズボンも脱いで靴下だけの格好で言った。


「言っていいのかい?」

 シゲルは靴下を先に脱ぎながら訊いた。


「言ってみたいよ」

 そういいながらヨシヒコはシゲルのズボンのファスナーに手を伸ばす。


「シャワー先に浴びろよ」

 シゲルはそう言ってヨシヒコの額に口づけた。

 シゲルの方が背が高いので、向き合うとちょうどシゲルの唇がヨシヒコの額の位置にくる。

「時間がないから一緒に浴びようよ」

「そうだな」


 熱いシャワーを浴びながら、二人は抱き合い唇を重ねる。舌の絡まる水っぽい音はシャワーでかき消される。


「ヨシ‥コ」

 感極まったシゲルがヨシヒコの名前を呼んだ。


「いま、ヨシコって言っただろ!」

「言ってない、ヨシヒコと呼んだんだ」

「ヨシコって聞こえたんだ、ごめん」


「妻とは、もうずいぶん‥‥‥」

「言わなくていい、俺だけのものだよな、シゲル」

「ああ」

「愛してる、シゲル」


「僕もだよ、ヨシヒコ、ずっと二人きりになれなかったから、寂しかったよ」

「党首なんかにならなければよかった」



次回は北のエライ人と南のエライ人

お楽しみに!

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もしもライバルのはずの二人がBLだったら 藤木美佐衛 @nyakosense

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