第二回 まあいとめう2
まあい「ずいぶん前といっても2月ほど前にパルメニデスを読みましたの」
めう「1を主張する年老いたパルメニデス一派とそれに反駁する若かりし頃のソクラテスの対話編よね」
「おそらくそうだわ」
「おそらく?」
「わたくしもうぜんっぜん入ってこなかったですの、文章という文章がですわ」
「だからわたくしこまってしまったのですけど今日謎がとけましたの」
「あら、なにか気づいたのね」
「そうですのよ。あるというのはそもそも一種類じゃないですの」
「1か多かみたいな議論の話をするなかで一種類じゃないってややこしいわね」
「ごめんあそばせ、いったんパルメニデスは置いといてくださいまして」
「つまり目の前にリンゴがあるみたいな手に取るような話やあるかどうかわからないけどあるとしか考えられないと考えるような、あるとは一線を画した、でも薄皮一枚向こうの、曖昧模糊とした、あるがありますの」
「あなたいま、すごいこといってるわよ、いろんな意味で」
「いいのですわよ、だってこのあるは曖昧模糊なのにもかかわらず とっても確信にみちているのですもの」
「いいえ、ごめんなさいいいところばかりをいわないで、ちゃんというわね。この曖昧模糊とした、あるも、さきにあげた、あるのようにいくつかのとらえかたがあるのですわ」
「ほうほう、さきほどのあるは 目の前のものを手に取った、あると、あるとしか考えられない、推論のあるを言っていたわね」
「そうですわよ、では曖昧模糊とした、あるは曖昧模糊としているが確信に満ちたあると、曖昧模糊としていてあるかないかなどわからない、あるがあるのよ。ごめんなさいこの後者に関しては人に言うのがはばかられるくらい、いっている私ですら何を言っているのかなぞなくらいわからないものなの」
「大丈夫話半分みまん、生返事以上にはきいているわよ」
「ありがとう。さて話が長くなるのは面倒なのでさっさと話しをしめるわよ」
「ようはパルメニデスにおいて、パルメニデス一派はこの曖昧模糊とした、ある、のさらに曖昧模糊としているが確信に満ちた、あるをいいたかったのよ。」
「ほう」
「対して ソクラテスは、ありふれた、手に取るようなあるとあるとしか考えれないと考える、あるの話をしていたのよ。つまり」
「…互いに彼岸にいた。ということかしら、平行線ね」
「そうですわ、それを証拠にパルメニデス一派はソクラテスを最後まで退けずににこやかに自分たちに立ち向かえるほど聡明なわかいソクラテスと議論をつづけるわ」
「ソクラテスがクリティカルに批判すればするほど、彼岸のあいだをながれる川の全景があきらかになるようで、むしろ好意的に受けていたようにも感じられたわ」
「ただ、かれらもソクラテスに彼岸のあるを感じさせることはできなかった」
「そうなのよこれが、これから2000年におよぶ西洋学問の特徴を端的にとらえているように思えてならないわ」
「という結びにしておくと面白いのでこんなものかしら」
「あなた途中から、ゆっくり、のつもりで話していたでしょう」
「しーらない」
会話 玄緑澄 @gennryoku
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