それは美しくも受け入れ難い言葉なのかもしれない
- ★★★ Excellent!!!
ソメイヨシノの花言葉は「高貴」「清純」。
あの美しい桜にぴったりな言葉ですよね。
海を渡ったフランスでは
「Nem’oubliez pas」。
私を忘れないで。という意味だそうです。
桜の儚さを感じずにはいられない、これもまた素敵な言葉です。
春満開な桜は決して長続きしません。だからこそ燃えるような情熱と艶やかな気高さを感じるのかもしれませんね。
私は桜の大樹の中に空洞があることを知っていた。それは、ちょうど人ひとり分の空間。今から、背中に背負った貴方を私はそこへ収めようと思う……。
桃、白、赤。
モノクロな独白に色を付けるのは鮮烈なるこれらの色たち。丁寧に積み重ねられる心理描写を土台にして、一層色濃く見えるのです。
色の見え方はあくまで主人公の主観。色の発色により主人公の乱れた精神状況を表す、だまし絵みたいな側面もあるのかもしれません。
大樹の空洞。
私はこの場所にSF的な要素を感じました。自然によってもたらされた場所というより、かぐや姫の竹のように、どこか宇宙味のある無機質でこの世とは隔絶されたもの。そんな雰囲気を感じたのです。
儚く寂しげな桜というテーマに込められた死生観。
貴方の言葉は私を生かすのか、それとも……。
素晴らしい作品をありがとうございました。