第7話:チーム結成④

 コンビでの訓練が実施される。

 モンスターは弱いほど数が多い傾向にあり、まずはそれを掃討してから強い個体に対処するというのが基本方針だ。

 その為、距離をとっての制圧射撃からの近接攻撃への移行が理想的なのだが、即席のチームでなんとかなる確率は低い。

 即席故に援護もままならず、生き残るのが精一杯だ。


「意外と粘っているな。難易度はハードだから、部隊単位での対応が必要な数と質なのに」

『エクシアさんが動けてる。倒すまではいかないが、敵を引きつけて味方に撃破させる行動を取っている。戦術理解が高い。弱い駒が強い駒を釘付けにするのも仕事、ということかな』


 ナインボールと幽霊のミカエルが会話する。


『ちょっと意地悪したら?』

「意地悪?」

『巨人の投入』

「それは難しいんじゃないか? 彼女達はまだアーキバス魔導学園の一年生になったばかりだ」

『倒す倒せるじゃなくて、緊急時にどう動くのか知りたいと思うよ』

「確かに」


 ドスン!! と音を立てて空から巨人が降ってくる。10メートルほとで、完全武装をしている。小さい相手に手間取っていたエクシアは悲鳴のような声を上げた。


「巨人!?」

「流石にこれは……あの二人なかなか鬼畜ぅ」

「この数に巨人の相手なんて」

「驚くのはこれで終わりぃ。作戦を立てるなら早くしましょう。私以外役に立たないんだからさぁ」

「どうするの?」

「まず巨人の撃破は無理。撤退戦、もしくは巨人のモンスターの殲滅を優先するべきねぇ。その間、巨人が大人しくしているとは限らない」

「囮が必要、ということね。なら私がやる」

「できるの?」

「やるしかない、でしょ?」

「上等ぉ!」


 セラフィムは射撃をしてモンスター達を牽制する。


「引き撃ちしててぇ。私に当てなきゃそれで良い」

「引き撃ち?」

「後退しつつ射撃の意味。作戦開始ぃ!」


 セラフィムが突っ込み、エクシアの道を切り開く。エクシアは素早く駆けて、巨人に向けて射撃する。巨人は俊敏な動きでそれを避けて、エクシアに襲い掛かった。

 巨人から放たれるパンチを、綺麗に避ける。

 セラフィムはゴブリンやオークを吹き飛ばしていく。


「良い判断だ。誰か一人を囮にして時間を稼ぐ。二人とも生き残るのはこれしかない」

『あとは二人の地力と集中力が試されるわけだが』


 結論から言って全滅した。

 巨人以外のモンスターは掃討したものの、魔力の残量がゼロで、巨人に攻撃が通じず、すり潰されて全滅した。

 ボロボロのエクシアたちに対して、ナインボールは笑顔で迎え入れる。


「いいね。連携、突発的な事態に対するニュートラルな精神、作戦の立案と実行、どれをとっても高得点だ」

『もし人数が多ければクリアできたかもしれない。そう思ったよ』

「お褒め頂き光栄です」

「巨人の投入は流石に酷いですよぉ」

「すまない。咄嗟の判断力が知りたくて。戦場だと突発的な事態が起こる可能性がある。それに対する反応も訓練しておかないと」

「……意地が悪い」

「これにて訓練は終了! 各員帰って良し!」

「ありがとうございました」

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男は一人、残りは女の子だけの魔導師学園生活 フリーダム @hsshsbshsb

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