むしろタイトルに乙女とか入れない方が読む人増えるんじゃ無いかと思うくらいハードなゆで加減の『むせる』作品。
なんだろう……サンライズのロボ物とアマコアシリーズとエースコンバットシリーズへの愛とオマージュがグリム童話やギリシャ神話なんかと悪魔合体して産まれたような超傑作ロボ戦記物。
書籍化して各種メディアミックスでアニメ化待ったなしなレベルの完成度の高さ。
作者さんホントにアマチュアですか?ホントはプロの人じゃない?俺が知らないだけ?
今すぐ読んで本作品の主人公、乙女ゲー世界に紛れ込んだ異物である、天然ボケで猫好きな朴念仁のモブこと鉄の男ハンスがどこから来てどこへ行くのかみんなで見守ろう!
コレはある種の命題というか、人間というものが向き合わなければならぬ「感情」という名の欠陥、それに対しての合理による徹底した理性での行動、そしてそれが糾弾されるという現実を分かりやすく示した、一つの例題というものではないだろうかと思ってしまう
それほど迄に、私はこの物語の主人公たる存在の在り方に、好感を持つと同時に、己がこの境地に到れるか否か、否であるという感覚を拭えないままでいる
「機械仕掛けの神」すら生温く感じる、徹底した鋼の理性、感情を切り離した合理を研ぎ澄ませた、「機械仕掛けの魔剣」の物語。
それをどう捉えるのかと言った形で、人の信条が覗けるような気までしてくる、そんな不思議な作品だと思います(コレ褒めてるの?)
話の作り込みや表現もさることながらキャラクター1人1人が個性的であり実在するゲームの2次創作かと思うほどである。
しかし読み進めるにあたって障害が発生してしまう。というのもこの小説はフロムソフトウェアのゲーム、特にBloodborneのパロディが機体や二つ名、言い回しなどに多分に見られる。そのため、読んでいるとストーリーよりもパロディに目が行ってしまい小説の世界に没入することができない。だが安心して欲しい。小説がフロムゲーに寄せてくるのなら我々もフロムゲーよろしく周回すれば良いのだ。その強すぎる愛ゆえに人を選ぶ作品ではあるが良作と呼べる作品だろう。
本作はやがてラスボスに至るとされている主人公ハンス・グリム・グッドフェロー大尉を中心に描かれる、ハードなロボット戦記である。
大尉は転生者でありながら特別な才能を持ち合わせず、ただ「あらゆる事態に備えている」ことを強みとし、誰よりも人を殺すことに長けた「首輪付き」なのだ。
それはそれとして、もう一つの見どころが私人としての大尉のクソボケっぷりにある。
この大尉、こと戦闘から離れると自己評価がどうしようもなくピンボケしているのだ。
そのため、素面で放った発言が乙女心にクリティカルヒットしては(なんで?)と真顔になるというすれ違い漫才が繰り返されることになる。
どうしてそんなお茶目なところもある大尉が「首切判事」「死神」と呼ばれるような極限の使い手になったのか、また大量虐殺に繋がる衛星落としを阻止しようとするヒロインの前にラスボスとして立ちはだかることになったのか。
一読者として、その謎が明かされるのを心待ちにしている。
カミーユを女体化させて曇らせたら可愛いだろうなとか、ガンダム世界で乙女ゲーがしたいという、作者の願望が発端となって、この作品が生み出された訳だが、神憑りと言う他ない作品である。
新たな物語が紡がれると共に増える巨大な文脈、大きな矢印、作者をも引き込む引力は、深淵のようで読者を引き込んで離さないし、とにかくエモい
また、所々にガンダムやフロム作品、グリム童話などのオマージュが散見され、ご存知の方であればより多く楽しめ、作者の神憑りの一端に触れることだできるだろう。火傷するので注意。
今現在、連載中であり、興味のある方は是非後でと言わず、連載時の独特な味わいと共に読んで頂きたい。
最後に、本作の主人公であるモブは、一風変わった獣と見間違えられる程の思想を持ち合わせている為、感情移入できないという方もいらっしゃるだろうが、この作品はモブ視点であり、何故そう到ったかを丁寧に描写されているのでどうか手を止めないで頂きたい。