最終話 竜騎士、空を仰ぐ







「ふははははっ!!!! 時代遅れの竜め!! やはり余は正しかった!!」



 王は一人、遺物兵器の中で高笑いしていた。


 モニター越しに映る竜たちが遺物兵器の装甲を前に成す術なく撤退している。


 ゴーレムが次々と破壊された時は焦りを見せたが、本体へ如何なる攻撃も通らないと理解してからはまた余裕な態度を見せていた。



「ゴーレムの数は減ったが……。なに、あの竜どもを殺して魔石を奪い、また増産すればよい!! やはり魔法帝国の遺物兵器は素晴らしい!!」


「……お父様」



 その時、操縦室に小さな影が入り込む。



「おお。我が娘、アンリエッタよ。どうかしたのか?」


「申し訳ありません」


「ん? 何を――」



 ドスッ。


 駆け寄ってきた王女、アンリエッタが王に抱き着いた瞬間だった。


 まるで何かを刺したような鈍い音が響く。


 王は目を瞬かせ、一瞬遅れて何が起こったのかを理解した。

 自らの腹部に手を伸ばすと、真っ赤な液体が付着する。



「な、何を、何をする、アンリエッタ!!」


「お父様は、やりすぎたのです。ご安心ください。お父様を一人には致しません。わたしもすぐに、後を追います」


「ま、待っ――」



 もう一度、アンリエッタが王に刃を突き立てる。


 遺物兵器は自らを操る者を失い、その機能を完全に停止した。


 異変に気付いたレイドス・ベントレー連合軍とエルデウス率いる竜騎士が内部に突入すると、そこには二人の亡骸が転がっていた。


 全身血塗れの王の亡骸と、それと寄り添うように自らに刃を突き立てた王女の亡骸。


 そのあまりにも凄惨な光景を目撃したベントレーの指揮官は絶句し、兵士たちは何が起こったのかを薄々と察する。


 王女が王の犯した罪をともに背負ったのだと。



「……王女殿下」



 エルデウスら竜騎士はその場で黙祷を捧げ、亡き王女の勇姿を想像する。


 親を殺すなど、並大抵の覚悟ではできない。


 その真意は本人のみぞ知るが、一つの父娘が悲しい結末を迎えた原因を、遺物兵器を破壊せねばならない。


 エルデウスはその場に居合わせたベントレー、レイドスの指揮官を説得し、遺物兵器を破壊。


 戦争はドラグレイア王の死という形で決着した。












 三年の月日が流れた。



「エルちゃん先輩、お疲れ様☆」


「ああ、テレシアか。早かったな」



 俺はドラグレイア王の暴走を止めてから傭兵団を結成した。


 今では定期的にエリナやヘカテリーナから依頼が回ってくるので、それなりに安定した生活ができている。


 あの戦いが終わった後、竜騎士は再び各地へと散って行った。


 ドラグレイアだった土地はベントレーが吸収したが、支配するにも人間が一人としていなくなった国は管理が大変だったらしい。


 暫定的に俺を暫定国家元首として竜騎士たちにドラグレイアを再興させるという話もあったが……。


 丁重にお断りした。


 俺たちにできるのは戦いだけだからな。傭兵として生きていく方がいい。


 最近はレイドスの御用達傭兵とした名前も売れてきたし、こっちで食っていく方が性に合っているのだろう。



「で、エルちゃん先輩。そろそろ決めた?」


「……いや、その……」


「早く決めないと全員お嫁さんになっちゃうよ?」



 そして、俺には問題が残っていた。


 テレシアやアルティナ、更にはマキナやカムイが結婚を迫ってきたのだ。


 正直、一人を選べなかった。


 テレシアは脳筋だから夫婦喧嘩したら怖いし、アルティナは変態だし、マキナ革命を起こそうとするし。


 カムイはかわいいが、竜だからな。


 返事は保留にしているが、エリナからは早く決めろと催促されている。


 悩ましい。


 別にテレシアたちのことは嫌いではないし、むしろ好意を抱いている。

 しかし、いざ結婚しようと思うとイメージが湧かないのだ。


 終いには――



『人間は面倒じゃのぅ。ヤりたい時にヤりゃいいのじゃ』



 と、テュファニールに呆れられる始末。


 俺はこれからの未来図が想像できず、空を仰ぐのであった。










 完。





―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「ちょっと駆け足になってしまった」


エ「またなー」



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お国が竜騎士を一斉解雇してきたので後輩たちと亡命、傭兵団を結成してゼロから成り上がるっ! ナガワ ヒイロ @igana0510

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