第18話 関わろうが関わらないだろうが、世は進む

 後部座席は色々賑やかだ。


 生前に市内の遊園地や動物園に子供たちを預かり、息子の秋水か、孫の正行が運転するレンタカーで行楽に行ったことがある。


 その時も賑やかだった。


「華佗先生もそうだけど、もいい子だったでしょ?」


 あの、間抜け面の河童のことだろうか?


 確かに短い間だったが、よく食べ、ニョダクに懐いていた。


「ああ……」


 俺が言葉を継ごうとして彼女は続けた。


「ニョダク」


「は?」


 この会話を聞いていたクトゥルフ(精神的に一部繋がっている)が補足的に言った。


「クダニド。こいつ、ニョダクが男の娘おとこのこって知らへんで」


 俺は青ざめた。


 察したように室内にまた、風が吹いて、今度は俺のバンダナを後方に飛ばした。


 それまで抑えていた布が無くなり、髪の毛がわっしゃと飛び出た。


「わははは!」


「何、その変な逆毛!」


 後部座席がうるさいし、横を見れば必死で運転しているクダニドも笑うのを必死で我慢している。


 

 クトゥルフたちと同じ邪神仲間で彼女改め、あんにゃろうことニョダクの兄のシアエガとグラーキの毛を植毛した。


 彼らは棘のような毛をしておりツンツンしている。


 だから、はたから見ると爺さんが八十年代ポップスのバンドヘアをしているように見える。


 自分の毛がある程度育てば、自然に抜けるらしいが今の車内を見ると当分、平穏な暮らしは先らしい……



 崩壊しつつも平和な世界は、今日も通常運転である。



おわり

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後は知らん 隅田 天美 @sumida-amami

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