夜明け前の薄青に

夜明け前の薄青に

午前5時。いつもより早く目が覚めた。

カーテンの隙間から漏れる、薄青い光。

月光が水底を照らしているみたい。


少し、散歩してみようか。


長袖にデニムパンツ、カーディガンを羽織る。

ポケットに出し忘れのソーダキャンディが1つ、散歩のお供に連れて行く。

東の空が白み、降り積もる夜と薄明が混ざり合う。

もうすぐ朝がくる。


吐く息ばかりが白くて、私の心は追いつかない。

どうしたら真っ白になれるのか教えて。

あなたのように白くなれたら、あの人に振り向いてもらえるのだろうか。


こんな気持ちに気づかなければ良かった。

夜と朝の狭間で眠りについて、いつまでも目が覚めなければ良いのに。


心だけが冷えて、一足先に冬がくる。


ポケットから取り出したソーダキャンディ。

指先で摘まみ、そっと舌に乗せる。

ぱちん。

ソーダの奥で、瑞々しい朝の香りが弾けた。


どこまでも爽やかで、優しくて甘い。

気持ちに寄り添ってくれるような気がして、少しだけ泣いた。

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