なかなおり!


 えーんえーん


 ゆりあちゃんがーー


 えーんえーん


 ゆりあちゃんがーー



「先生、べつにあたしなんにもしてません」


「でもね、藤沢さん…みくるちゃんは叩かれたって言ってるんだけど」


 このクラスで唯一、あたしだけが先生に苗字で呼ばれている。別になんとも思わないけれど、先生があたしを「扱いにくい」と思ってるのがひしひしと伝わってきて、イライラする。

 そっか。先生はバカで従順なおこちゃまの相手するのが『お仕事』だもんね。


「ねえ藤沢さん、とりあえず謝ろう?」


 先生が困った顔で言った。

 意味がわからない。なんで何もしてないのに謝らなくちゃいけないの? 

 意味がわからない。


 頑なに拒否し続けていたら、学年主任のところに連れて行かれた。 


「藤沢!悪いことをしたらしっかり謝らなきゃダメだろ?」


 学年主任の鈴木先生はにかっと笑って言った。


「…あたし何もしてません」


「藤沢、言いたくない気持ちはわかるよ。でも大丈夫!先生は怒らないよ!謝らないとみくるとの関係が悪くなってしまうだろう?だって、大切な友達だもんな!」


 あんなやつ、別に友達じゃない。


「藤沢!返事はしような!俺たちの学年の学年目標、覚えてるだろ?挨拶、返事…」


「はい」


 コイツが大嫌い。自分のことをいい先生だと思っている、大馬鹿者だ。


「じゃあ、みくるに謝りに行こうな!大丈夫!俺も一緒に行ってやるから!」


「…はい」





「みくるさん、ごめんなさい」


「…いいよ」



「すごい!すごいよ藤沢!ちゃんと謝れて偉い!みくるも、許せて偉い!強いぞー!じゃあ、最後に仲直りの握手だな!はい、握手して!」


「よおし、偉いぞー!握手もしたし、これから二人はまた友達だな!」


 うるさい。こんな嘘つき被害者面女と仲良くできるかボケ。



 みんなみんな、なにもかも、どこまでも、塵だった。


 終わればいいのに。早く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

(勘違い!)魔法少女の日常 隣乃となり @mizunoyurei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ