たのしい給食


 あたしは食べることがあまり好きじゃない。だから給食の時間は大嫌いだ。


 美味しそうに給食を頬張るクラスメイトを見ると、あたしは何だかむかむかする。負けた。あたしよりもずっと馬鹿でどうしようもない子たちに。


「ゆりあちゃん、何読んでるの?」


 後ろの席の女子が話しかけてきた。


 あたしは答えない。どうせ皆には分からないんだから。


「らぶ…くら、ふと…?なにそれ。」


 知らないでしょ。もういいよ。いいから早く食べて。


「やっぱりゆりあちゃんって頭いいね!」 


「…ありがとう」


 うるさい。


「ゆりあちゃんピザトースト食べないの?わたしもらっていい?もらうね」


「…ありがとう」


 うるさい。


 あたしは怒りが爆発しないようにいつも気をつけている。心にモヤモヤと黒いものが集まる。溜まる。でもなんとかこらえている。


 …憂鬱。


 どっかに、ラブクラフトの話ができる小学生はいないのかしら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る