第2章 商業都市グリード

報告

各国に点在する通信室。

伝令とルフェルは帝国へと報告を行っていた。


「・・・以上です、


通信先は帝国。

王と、8柱武貴が揃う先。帝国のトップが揃う先だ。


ルフェルの背には汗が流れる。

まさか、自分が帝王と直接言葉を交わすことになるとは、と。


「大儀である。・・・ルフェルの報告と、伝令が持ち帰った伝言。実に興味深い」


「はっ。おそらくキョウは、人類にとっての台風の眼になるかと。同行する邪神についてはよくわかりませんが、それを差し引いても有用化と」


「・・・ふむ。」


帝王は考える。

来訪者としての能力は、単体では筆答すべきものはない。良くも悪くも、多少便利程度の異能を持った人間に過ぎない。

だが、神という超越者から与えられ、端末とはいえ逸脱者を超えて超越者である神格が同行し、また気に入られているという事実。この1点だけでも破格だろう。


加えて・・・


「伝令よ。持ち帰った言葉に偽りはないな?」


「は、はい。確かにかの魔神は言いました。我々人類に、協力する用意がある、と。鵜呑みにするわけにはいきませんし、私が判断することでもありません。・・・が、確かに真実の響きがあったように感じられます。」


「そうか。」


未踏地域。

それは過去の魔神戦争の舞台であり、そしていまだに人類が・・・人と魔族の、共通の敵を生み出し続ける戦場であり、未知の領域。

その解決に協力する用意がある、というのは大きなメリットだ。


(むろん、鵜呑みにするわけにはいかぬ。・・・だが大きなチャンスであることもたしか。ここからは会ってみてから、か・・・)


「分かった。ルフェルは中央商業都市まで引き続き護衛として同行しろ。伝令より物資を受け取ってな。


また王国は分からぬが、少なくとも帝国は現時点で、最大限の便宜を図る用意があるという点も伝えろ。ただし、深入りはするな。かの邪神の地雷がどこにあるか分からないゆえに・・・な」


「承りました、陛下」


大任だ。

だが、成し遂げなければならない。帝国の・・・いや、人類のために。


「追加で報告なのですが。戦場の帰路にて、来訪者と思しきものから襲撃を受けました。目的は不明、ですがおそらく見極めかと。」


「その報告も受けている。キサマにも共有しておこう。・・・別の伝令より、前線基地、および魔族の野営地も壊滅したそうだ。になるだろう。」


そう。

、だ。

確かに、硬直した戦線が崩壊する。だが、その程度。人族はもとより魔族も痛手ではあるかもしれない。脅威を感じるかもしれない。だが、傷んでいたとはいえ武貴と材のの傭兵パーティで対処できる程度の戦力。それよりも・・・


「かの襲撃者の残骸は来訪者・キョウの手に。今のところ奪還の兆候も見えない。相違ないな?」


「はい。町に戻り次第、陰ながら追加の護衛を張り付けておりますがとくにそういった報告は受けておりません」


「で、あるか。」


目的が読めない。

未知の技術というのは、独占してこそ。もちろん永遠に秘密が守られるわけはないが、少なくともその開発者権利と先行性は可能な限り守るべきであろう。

それの奪還が、一夜明けた今もない。前線基地を壊滅させたであろうほかの後詰め戦力がまだ近隣に潜んでいるにもかかわらず、だ。


「・・・権利収入、だったか。捕縛した兵装の研究権利を売る、と」


「はい。キョウの能力は金銭を消費して振るわれるものであるためかと。」


「つまり、かの技術は来訪者であればある程度理解ができ、かつその価値があると確信できる程度には広がったものであるということか。」


「おそらくは。」


面白い。

おそらくこれは、ほかの来訪者にも意見を聞いてみる必要があるだろう。だが、確保しておいても損はあるまい。


「ルフェル。キサマはパーティに戻った折、帝国が優先的に契約する旨を伝えろ。また、他者に先はこさせるな。帝国皇帝としての勅命だ。我が国が優先契約を行う代わり、ほかに回させないよう伝令しろ」


「承りました。しかし、よろしいのですか?まだ金額すら見えぬものですが。」


「よい。金でケリがつくなら安いものだ。」


だが。

王国やダークタウン。そしてほかの商人たちも、本当に有用なのであれば座視するほどぬるくはないだろう。


おそらく中央商業都市グリードは戦争が巻き起こるだろう。

武力だけではない、金を中心とした「経済戦争」が。

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マネースクワッド ~剣と魔法の世界で、お金の力で生きていく~ BFP @butterfly20200403

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