第4話 萌えとの出会い
「……っ、あれ? 停まっている?」
硝子を軽く叩く音で目が覚めた。何時の間にか寝てしまったようだ。窓を見ると小鳥と目が合った。きっと硝子を叩き起こしてくれたのはこの子だろう。
「起こしてくれて、ありがとう」
小鳥にお礼を伝えると、短く鳴き声を上げると飛んで行ってしまった。辺りは既に明るく、如何やら馬車は枯れた木々に囲まれている。此処が獣帝国との合流場所だろうか。馬車を引いていた馬の鳴き声も鞭の音もしない。きっと私を置いて国に帰ったのだろう。
取り敢えず確認をする為に、扉の取手を掴んだ。
「よいしょ……わっ!?」
扉を開けるとサイズの合わないドレスの裾を踏み、前方へと放り出された。異世界に来てから碌なことがない。落ちても骨が折れる高さではない、打撲と擦り剥くぐらいのケガで済むだろう。
来るだろう衝撃に備えて瞼を閉じた。
「……っ、大丈夫ですか!?」
私を受け止めたのは固い土の感触ではなく、柔らかく温かいものだった。まるで毛布に包み込まれているような、安心感と温かさである。思わず頬擦りをしてしまう。
「……っ! あ……あの……」
「ふぇ? ……わ……え……」
途端に温かな毛布に緊張が走り、戸惑う声を上げた。私は不思議に思いながら、瞼を開く。
すると銀色の髪に、蜂蜜の様な輝く瞳を持つ美しい男性が居た。私は急な展開について行けずに、金魚のように口を開閉しては意味のない言葉を呟く。
私の記憶に間違いがなければ、馬車から落ちたのを受け止めてくれたのは彼なのだろう。そして受け止めてくれたのを毛布と勘違いし、頬擦りをしたわけである。私は初対面の人に対して何てことをしているのだろう。
「だ……大丈夫ですか? 今、代わりの者に……」
困惑する彼の頭に髪色と同じく、銀色の耳が存在していることに気が付いた。ピンと立っているが、左右に小さく動いている。その様子を目で追い、思った感想は……。
「……えっ、可愛い……」
独り言が思わず、口から漏れた。すると突然、地面が黄金に輝いた。眩しい光に再度、瞼を閉じる。
「……っ!?」
「えっ!? 何!?」
突然のことに思わず、男性の服を掴んで声を上げる。奇行を繰り返している私の背中に手を回し、守るようにしてくれた彼は本当に優しい。
「こ……これは……」
「え……? あれ? 草が凄い……」
光が収まり瞼をあげると、周囲が森になっていた。先程までは、枯れ木に囲まれていた筈だが、大きな木々が生え悠々と葉を広げている。地面には色とりどりの草花が咲き誇っているのだ。一体全体、何が如何してこうなったのだろう。私は首を傾げた。
萌えは世界を救う!~異世界に召喚され外れ聖女として獣王様と政略結婚させられましたが、陛下の可愛らしさに聖女の力が目覚めたので無双します~ 星雷はやと @hosirai-hayato
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