ファンタジックな世界観が魅力的な、特殊同居(?)型ホラー

 冒頭から出てくる設定を見て、一気に引き込まれます。

 「天使がいらなくなると、神様が空から腐りかけの天使を落とす」というのが常態化している世界。そして「腐りかけの天使が地上に落ちてきて、家具などを壊してしまう被害が頻発している」という。

 数行読んで、もう嬉しくなりました。こんな設定、今まで見たこともありません。

『これ、今までにない小説が読めるやつ!』と、開始数行で確信できて読み進めました。


「魚の雨」や「カエルの雨」など、オカルト分野では有名な現象。それに通ずるような、「腐りかけの天使が降ってくる」という特殊な事態。主人公の家にもそんな腐りかけの天使が落ちてきて、いつも通りに被害を受ける。

「空からヒロインが降ってくる」は、一時代前のライトノベルやアニメ業界では定番の一つでした。そこからはワクワクドキドキの同居ラブコメが始まるのが定番でしたが、「腐りかけの天使」が落ちてきたらどうなるか?

 読んでいて『怪奇実話』だったり『アニメの定番ジャンル』なんかを連想させられ、ニヤリとさせられる場面が多々あります。
 
 でも、腐ってます! そして、臭いです! そんな天使との遭遇譚はどんな結末を迎えるでしょうか。

 少ない文字数の中で、とてつもなく個性的な世界観が広がっている本作。とても濃厚で贅沢な一作です。