第4話

俺には才能がない。

物書きとしての売れるためじゃ普通じゃダメなのだ。

俺はマリファナに火をつけることで創造性が増す。

これで俺は、まだ勝負できるようになる。

誰もいない路地裏に来た、絶対ばれることはないだろう。

監視されている感覚がするが、もう我慢できない。

俺はマリファナに火をつけて一口吸った。

幸福感が体の中に充足していく。

俺の中の創造力よ、目覚めてくれ。

アイデアよ、降りてこい。

その時、後ろから人が来たような気がした。

俺はとっさに後ろを見た。

そこには二人組の警察がいた。

世の中の99%は不条理で出来ていると感じる。

神様がいるなら俺に小説家になる夢を諦めろと言っているように感じる。

このままだと捕まると思った俺は、一目散に走って逃げた。

しかし警察に完全包囲されていて、どこにも逃げることは出来なかった。

俺は必至に抵抗したが男の警官5人に取り押さえられた。

俺は警察に捕まった。

取り調べで、俺はこれまでにあったことをすべて話した。

スマホの中に人がいて、その人と仲良くしていたことを必死になって説明した。

ただ誰も俺の話を信じてくれなかった。

ただ薬物依存から抜けるために、さらに統合失調症という診断がついて精神病棟にぶち込まれた。

激しい離脱症状との闘いが始まった。

手が震えたり、100キロマラソンを走った後のような激しい疲労感、漠然とした憂鬱な気分や不安感、頭が割れそうな頭痛。

一言で言うならば本当に自ら命を絶ちたくような気分になって最悪だ。

全身をベッドに拘束されてトイレすら自由に行かせてもらえなかった。

幻覚や妄想もあったような気がする。

なんでだろう。

離脱症状の中、高校の時に死んだ彼女の思い出を見た。

体が徐々に動かなくなる病気になるって言った時、内心冗談だろと信じたかった。

ただ、君は俺に嘘をついたことなんかまったくなかったし、泣いている君を見て言葉が出なかった。

ただ、俺は最後の時まで一緒にいるとその時誓った。

そこから病院にも毎日通うことにした。

「今日も来てくれたんだ、毎日来るの大変じゃない?」

「そんなことないよ」

たわいもない、学校であった話をするのが毎日の楽しみだった。

学校であった話をする

「ノアの箱舟事件が学校であったさ」

「ノアの箱舟事件?なにそれ(笑)」

「ノアっていう子が複数の高校生と不純異性交遊して退学になったのさ!」

「隣のクラスの鈴木ってやつも自主退学になって、総勢10人が箱舟に乗せられた!」

彼女は軽い下ネタに愛想笑いをしていた。

そこで気づいた、性の話をしてしまったことを。

彼女の体がどんどん動かなくなるという現実から目を背けったのかもしれない。

「早く良くなってね!じゃあ、また明日来る」

帰る間際に必ずいうことにしている。

徐々に錆びたブリキの人形のような動きしかできなくなってきている。

そんな現実から目を背けたかった。

よくなることなんてないかもしれない、ただ俺は信じた。

しかし、状態はどんどん悪くなっていく。

「喉を切開しなくちゃいけないみたい。」

「え?」

一瞬気が遠くなるような感覚を味わった。

しかし彼女の前では、弱気な姿を見せてはいけないと思い涙をこらえた。

「少しでも長く生きるためには喉を切開して呼吸器を入れる必要があるみたい」

彼女は内心怖かったのに違いない、ただ俺には悲しい顔を見せないように顔を引きつらせているが分かった。

俺は彼女をただ抱きしめることしか出来なかった。

そして毎日来て、話かけ続けるとその日約束した。

帰り道に涙が溢れ出てきた。

家で自分の部屋にいて彼女に何かできることはないかと考えた。

ずっとこの記憶が思い出が残り続けるようにスマホでこれからを撮影しようと思った。

次の日、病室で

「元気になってからも見返せるように思い出撮ろう」

「思い出、最近写真撮ってないからいいね」

最近は病院の周りを散歩することしか出来てない。

以前はいろいろな場所へ遊びに行って写真を撮ったが今は外出することが出来ないため思い出フォルダに写真が追加されることはなくなっていた。

「それじゃ、動画取ります。3、2、1スタート」

なんでこんな時に思い出すのだろう。

妄想の中で、もう一度君に会えてとても嬉しかった。

余韻に一人浸っていた。

ただしばらくすると離脱症状と共に消えていった。

最悪な気分ではなくなったが俺の中から加奈は消えてしまった。

ただ、最後に彼女に言われた言葉が心に残っている。

「青のこんな姿はもう見たくない。」


精神病棟を出た後にまず一番最初にスマホの中のあの子に言い過ぎたことを謝罪をしたかったのでスマホを開いた。

スマホからメッセージが来れば、俺の経験は真実だったってことになる。

俺は信じた。

この経験が、思い出は全部真実であると。

しかしいくらスマホに呼びかけも何も反応はなかった。

まだまだ話足りないことはたくさんあったのに。

君の本当に名前を知りたいと思った。

「もう一度動いて。頼むから、、、」

大学にはなんとか復学した。

現在はしっかり大学に通っている。

夜風に当たりながらこれまであったことを思ったことを思い出していた。

この時期は肌寒い季節で上着をクローゼットから取り出して、着ようとしたときにポケットから煙草が出てきた。

吸いたくなるかなと思ったが、吸う気分にならなかった。

煙草はあれ以来吸ってない。

当然だが薬とは縁を切った。

俺は半端のタバコを手で握りしめてゴミ箱に捨てた。

夜風に当たりながらぼーと考えた。

この経験を誰かに伝えたい。

俺は本を改めて書こうと思った。

今の自分なら書ける。

何となくそんな感じがする。

下手くそな、大嫌いな自分の文字でもいい、自分の文字で伝えたいと思った。

本のタイトルは、そうだ

「スマホの中から君へ」

これにしよう。

再び夢を追うことに決めた。





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スマホの中から君へ @ooemansaku

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