ハッピー屍:前
「たすけて、くれぇぇぇぇぇぇ──‼︎」
駆け込んできたのは淡い髪色の青年だ。肌は紙よりも白く、白い
「
青年はぶつぶつ呟き卓のキ物の下に逃げ込む。買い物をしに来たようには見えないが、店に入ったからには金を落としてもらおう。チェンは卓のキ物に寄り、笑顔で青年を迎える。
「
「うーわー‼︎ 綺麗なお姉さん‼︎ 窮地に花‼︎ 掃き溜めに鶴‼︎ 助けてお姉さん‼︎ 助けてぇ‼︎」
青年は卓の下からにゅっと這い出て、チェンの手を両手で握った。氷のように冷たい手にチェンは目をみはったが、すぐさま笑みをもどす。
「お姉さんではないけどね。洗濯機のキ物が入ったけどどうだい? もちろん財布は持っているよね?」
「えっ、男⁉︎ お姉さんじゃなく⁉︎」
負けじと手を握り返すと、青年は手を振りほどいた。チェンの営業を無視して彼はわめき散らす。
「とにかく助けてください‼︎ お袋とダチが凄い顔して
言うが早いが青年は
とりあえず店先を覗くと、確かに怒声をあげながら周囲を見回す一団があった。
面倒事の臭いしかしない!──チェンは静かに扉を閉めた。チェンの顔が陶器だったら、艶やかな笑みに亀裂がはしったことだろう。
死人のように白い肌に、氷のように冷たい手。極め付けに死装束。青年の様子は
加えて彼は家族と友人から
つまり青年は
色白で体温が低くて変わった服の趣味をしている普通の人かもしれない。チェンは青年の様子を伺うことにする。
「お兄さん、何でそんな格好してるの?」
父の思惑を知らぬリャンは、
「
青年はげんなり語る。
「で、気付いたら暗くて狭い場所に居てさ。ビビって飛び出たらお袋やみんなが居るだけじゃなくて、坊さんが経を唱えてて。なんでだか俺、この格好でドライアイスの詰まったせっっまい箱? に閉じ込められてたみたいでさぁ」
それ、あんたの葬儀では? ──チェンは天を
「ちょっと失礼」
青年ににじり寄ったチェンは彼の脈をとる。あって欲しい脈動は微塵も感じられない。
「またまた失礼」
今度は死装束の胸許に耳を押し当てた。聴こえてきて欲しい音──鼓動はいっさい聴こえてこない。
裁縫道具を持ってきて、白い肌を針で
この針、手品用だっけ……? 自信を無くしたチェンは自分の手の甲を針で
「お兄さん、触れ合い大好きすね? お兄さんがお姉さんならお触り嬉しかったのになー」
──どうしよう、
チェンは数秒悩んだ後、リャンの首根っこを掴んでともにバックヤードに身を隠した。青年に悪意や害意はないようだが、子供を得体の知れないものの側に置くほどチェンは能天気ではなかった。
黒電話の受話器を外す。不本意ではあったが、とある人物の番号にダイヤルした。
「
大いに混乱しながら、チェンは
我鳴、怪キ物譚 ろいひ @r_obake
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。我鳴、怪キ物譚の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます