第2話 スイミング

「パパ、スイミング行きたい。スクールのみんな夏休み中にスイミング行って検定試験受けるんだって」

「隼人、あんな塩素だらけのプール行かなくても家にプールがあるじゃないか」

「じゃ、パパコーチしてくれるの?」

「コーチかあ、おっ、パパにいい考えがある」



 プルサイドのデッキチェーに豊満な肉体を横たえる女性にカズは声をかけた。


「あれっ。ルナちゃんは?」

「祐奈さんと水着を買いに行ったわよ」

「ぼくも一緒に行きたかったなあ」

「あら、女の買い物について行くなんて嫌われちゃうわよ」

「ママは水着いらないの?」

「これだけ露出してたら充分でしょ」


 花柄のハーフパンツに赤いタンクトップ、サングラスに麦わら帽子はリゾート気分満載だった。


  コーチのホイッスルを合図に次々に水に飛び込んで行く。

 水飛沫をあげ軽快に泳ぐ少年たち。


 

 買い物から帰ったルナはナナの顔を覗き込んだ。


「あらっ、ナナちゃん、泣いたの?」

「ナナたんね、おもちやいたの」

「あら、美味しそう」


 隼人はタオルで拭いた顔を覗かせた。


「ママ、やきもちだよ」

「やきもち?」

「ケントにね『ウーたんはナナのたいちぇつなおともらちなの、やちゃちくちてね』って言ったんだよ」

「ああ、それでやちゃちくしてるのを見てやきもちやいたのね。ナナ可愛い」


 ルナはナナを抱き締めた。

 ルナミはどうしていいかわからないというように、眉尻を下げて途方に暮れている。

 困った顔がヨッシーとそっくりだ。


「ウーたんもおいで」


 二人をバスタオルに包んで抱き寄せた。


「あら、ウーたんの方が少しだけ背が伸びたのね」

「どうかした?」


 祐奈が駆け寄って来た。

「ウーたん、背が伸びたのね。そろそろ休憩にしましょうか」

「休憩か、いいね」


 ヨッシーと話しながらやって来たカズ。


「カズさん、少しは泳いだ?」

「いや、今から泳ごうと思ったんだけど」


 外した麦わら帽子でカズのお尻を叩いたカズのママ。


「この子はカナヅチなのよ」

「ママ、言わないで」

「ふ~ん、パパ、カナヅチなんだ」


 隼人が揶揄った。


「みんなの水着も買ってきたからね」

「ヤッター」

「ヨッシーみたいな競泳用のセクシー水着が欲しかったな」


 確かにヨッシーの水着は、どこに目をやればいいか目のやり場に困る感じだった。

 今はバスタオルを腰に巻いているけど。


「おまえたち、元オリンピック選手にコーチしてもらえるんだ。ありがたく思えよ」

「パパもね、フォローしてくれる人がいて良かったね」

「うん、そうだな、ヨッシー、日本からお越しいただいてありがとうございます」


 カズはヨッシーに向かって頭を下げた。


「いやいや、こちらこそ家族中で押しかけてすみません」


 ヨッシーの長男の祐樹は隼人の1歳上だった。

 

 その日のティータイムは賑やかに笑い声が弾けた。



         【了】



 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ナナたん ケントくん3 オカン🐷 @magarikado

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画