高濃度な不安に襲われる、珠玉のホラーサスペンス

 読むごとに、足元が覚束なくなるような不安定な気持ちにさせられました。
 設定から展開まで緻密に作りこまれ、非常に良くできたホラーサスペンス作品だと言えます。

 主人公は高校生のシュウヤ。彼は自分の住んでいる町に異常なほどの居心地の悪さを感じている。
 そんな彼がある日、町立図書館で一人の少年と出会う。どこか見覚えのある顔をした少年は、幼馴染のルリオであることを思い出す。
 それをきっかけに、シュウヤは自分の中には封印されていた記憶があることを思い出す。

 小学生の時、シュウヤには親友がいた。大きな屋敷に住むルリオとフウカの兄妹、屋敷の使用人の子であるトウコ。その三人と一緒に過ごしていたが、ある時をきっかけにそんな日々は終わりを告げる。ルリオの両親であるキョウイチとエレナの乗った車が事故に遭い、一緒に車に乗っていたフウカも命を落としたことがわかる。

 しかし、図書館で再会したルリオはなぜか、フウカが今も生きているかのように話をしてくる。彼女は今も必死に小説家を目指しているという。
 シュウヤはそんな彼を見て、疑問を抱くようになる。フウカが死んだという自分の記憶には誤りがあるのか? それとも、ルリオが狂気に駆られてでもいるのか?
 真相を探るため、シュウヤは再びかつての屋敷へと向かうことを決める……。

 主人公であるシュウヤの記憶が曖昧であることもあり、何が現実で何が虚構なのかという、不安な感覚が終始付きまといます。
 そうしたミステリー的な興味が強くかきたてられ、最後まで緊張感を持って読み進めさせられることになりました。
 そして、ラストで遭遇する真実。

 あまりにも強烈な感興を持って、物語は終わりを迎えます。シュウヤの身に起こったことはなんだったのか、この町では一体何が起こっていたのか。その真相と結末は、あなた自身の目で見届けてください。