第2話

「月夜はどうすればいいんですか?」

「今から支部に連絡する」

 男性はブレイダーズの使う無線で救援を求める。

「救援は出せない。人員が足りない」

「ブレイドエナジーの循環が安定しない。変身できない。ただちに救援を」

「なら戦線を放棄して帰投しろ」

 と返答が返ってくる。



「民間人が一人取り残されているんです。しかも子供が人質にされています」

「救援は出せない。ただちに……」

「ふざけるなっ!」

 フレアブレイドは腹を立てて、無線機を叩きつけた。


「少し待ってくれ。ブレイドエナジーが安定して

 循環するようになればすぐに助けに行く」



「しばらくっていつなんですか……」

 太陽に問われた男性はそれに対してなにも答えることができなかった。


「俺が絶対に助ける。だから君はすぐに避難所に向かってくれ。頼む」

 懇願するように言う。


「俺は? 俺はどうなんですか?」

「どういう意味だ?」

「俺がブレイダーズに変身できれば月夜を助けることができる。

 変身できるかどうか調べる方法はありませんか?」

「あるにはある……だが仮に君が変身できるとしても

 戦わせるようなことはできない」



「それであいつが死んだら俺は自分を許せません。俺のせいであいつが傷つくのは嫌なんです」

 と太陽は言う。



 彼は少し悩んだ後、

「君の敬意には表する。名前は?」

「炎太陽です」

「俺は赤神勇一。アプリオン」

 勇一はスマートフォンを取り出して、ブレイドアプリを起動させる。

 ブレイドアプリで対象を撮影し、ブレイド適合率を測定する。

「そうか……」

 と勇一は測定結果を見て暗い表情を浮かべる。


「どうしたんですか?」

「適合した。つまり変身できる」

「本当ですか」

「だけど俺が監視する。俺から常に離れないようにしろ。それが条件だ」

 と勇一はにらみをきかせる。




「変身の仕方を教えてください」

「まずは装置にある赤色のボタンを押せ。後は変身シーケンスが起動して

 AIが変身をアシストする。それに従え」


「変身なんてさせん」

 怪人は姿を現して、車椅子に乗った月夜を思い切り投げ飛ばす。

「月夜!」

「太陽。この子は必ず助けるから変身しろ」

 勇一は素早く月夜の近くまで駆け寄る。


「俺が受け止める。だから君は自分の身を守ることだけ考えろ」

 勇一は最後の力を振り絞り、強引に変身した。

 落下してくる月夜を受け止めると、彼をすぐに降ろした。

 そこで限界を迎えた勇一は変身を解いてしまう。


「くっくくく。無様だな。フレアブレイド」

 怪人は引力を発生させ、車椅子の下まで素早く移動した。

 勇一を絶命させるため、固めたねじ曲がっている金属片を引力で固めた。

 巨大な球体を彼に叩きつけようとしている。

「そんな……」

「フレアブレイド。絶望しながら死ね」

「俺は誰も死なせねぇ」

 巨大な金属球が勇一と月夜にぶつかりそうになった時、彼らの前に変身に

 成功した太陽が現れて金属球を光線で押し出して溶かして破壊した。


「大丈夫か月夜。赤神さん」

「俺は大丈夫。月夜君? けがはないか?」

「俺も大丈夫です」

「あのスクラップ野郎。ぶっ潰してやる」

 太陽はニヤニヤと上から笑っている怪人を睨みつける。




「太陽君。さっきの話だがもちろんわかっているね」

 と勇一は言う。

「はい」

 と太陽は頷く。



「今使った光線をあいつに向けて放て」

「ええと……どうやってやってたんでしたっけ?」

「さっきやったようにだな……」

「いや。さっきはなにも考えていないんですよ」

「うおぉぉ。どうすればいいんだ。俺はぁぁ」

 太陽の言葉を聞いた勇一はどうしようもないと思って、吠えていた。



「とりあえずムカつくからぶん殴るっ!」

 熱くなった太陽はその場から逃げ出した怪人を追いかける。


「おい。約束は……」

 勇一はあっという間にいなくなってしまった太陽を見て唖然としていた。


「あいつは昔から突っ走る奴なんですよね……」

 月夜も太陽に対してコメントしたが、勇一とは別の感情を持っていた。


 太陽と怪人は屋根の上を飛び回っていた。

「待てよ。スクラップ野郎。てめぇの鎧も溶かしてやる。

 素っ裸にしてぼっこぼこにしばき回す」

「子供のくせに乱暴じゃねぇか」


「当たれっ」

 太陽は掌から高温の光線を放出し、怪人を狙い撃ちする。

 怪人は素早く引力を操り、金属片を集めて盾を作った。

 しかし盾は貫かれ、光線は怪人に達しかけた。

 体を捻って躱し、冷や汗を流す。

「おいおい。耐熱金属で固めた盾を貫くなんてどういうことだ」

 太陽を見ながら対策を立て始める。

「まだだ。もう一発」

 太陽の光線は盾にもう一度当たる。

 それに瞬時に反応し、回避した怪人はこの光線の弱点に気づく。

「対策は二つ思いついたが……即効性のある方で行くとするか」

 怪人は片っ端から金属を集めて一直線になるように太陽に向けて放った。

「げっ。こんな大量にさばけるかよ」


 太陽が光線を撃ち続けて金属片を溶かしている間、放射する金属片を滑るように駆け抜ける。


「なっ? 近づいてくる?」

 太陽はいきなりのことに対応できずに光線を撃つのを止める。

 大量の金属片を叩きつけられた太陽は、地面に落下して大ダメージを食らう。 

 怪人は即座に追いかけ、残った金属片で蓋を作る。



「くっくく。怪人との戦闘経験がないブレイダーに幹部候補の俺は荷が重かったな」

 怪人はにやりと笑い、ストップウォッチを取り出した。

「酸欠で死ぬのは五分か。念のために十分様子を見ようとするか」

 怪人は手ごろな形をしたコンクリートの破片に腰を掛けて待ち始めた。


 しかし次の瞬間、金属片は爆発四散して吹き飛んだ。


「馬鹿な。自爆したっていうのか」

「ようやく近づいてきやがったな。スクラップ野郎」

 全身から眩いくらいの光が放たれていた。

「こけおどしにしかなんねぇよ。今のお前はボロボロなんだからよぉ」

 ボロボロの金属片をかき集めて、剣の形にまとめる。


「そうだ。そうやって近づいて殺しに行くのが一番賢い。俺はお前をぶっ壊すまで止まらねぇからよ」

 太陽と怪人の距離は目と鼻の先くらいの近さになった。

 怪人の一振りを、体を斜めにして躱し光線を撃ち返す。怪人はそれをしゃがんで躱す。

 太陽は左の正拳で背中を打つ。


「がはっ」

「これで最後だっ!」

 太陽は掌を開いて光線を放った。

 怪人は手首に掌底をして、軌道を逸らす。

 更に追撃で、左の掌底。

 太陽の体はぐらりと揺れる。


 歯を食いしばってこらえた太陽は、怪人に頭突きする。

 痛がる隙を突き、もう一度光線を放つ。

 左腕が溶けた怪人はもがき苦しむが、即座にその場から離れようとする。

 その場にあるものを手当たり次第引き寄せて太陽に向けて打ち出す。

 

「不利になったら逃げるってか。それならそれも全部倒す」

 光線は太陽の身を守るように、彼の体周辺にとぐろを巻き始める。


 使い方を直感的に理解した彼は、ジャンプしながら高速回転して突進し始めた。

 太陽自身を恒星に見立て、光線を衛星のように旋回させる。

「サテライト・レイ」

「こんなもの全部ぶつければ……」

 怪人の目論見も虚しく、鉄片は全て溶かされて突破されてしまった。


「お前の負けだぁぁぁぁ」

 怪人の腹に体当たりして、怪人の胴体を貫いて溶かした。



「はぁ……はぁ……やってやった……ぞ」

 太陽は力を失い、その場で気を失った。

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ブレイダーズ マイケル・フランクリン @michelxsasx

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