第35話 正体のわからない冒険者

 ようやく到着した街はパルテナというらしい。ここは服飾が有名だとか。怪物から出たものを使ったり、加工したりして売っていると言っていた。

 ここで冒険者の人たちとはお別れだが、私にはまだ仕事がある。ギルドに水晶を渡す作業が。


「隣の街エペンプールから届けてまいりました」

「よく来た。私の部屋にまで来てくれ」


 この街のギルドに到着し、エンベルトがドアを開ける。その後ろに私は1個だけ水晶を持って立っている。彼の背でまだ見えないが、ここのギルドはどんな人がいるのだろうか。


「行こうか、アーロ君」

「分かった」


 中に入って行くエンベルトを追いかけつつ、ギルド内を見る。エペンプールはダンジョンを中心に栄えていたから初心者から熟練者までいたが、ここは場慣れした者たちだらけだった。装備が金属製のものばかり。それに私を見る目も鋭い。品定めされている気がする。

 私は今ただの子供だぞ。冒険者の人たちが警戒するほどの存在じゃない。


 見られながらもエンベルトについて行き、ギルドマスターの部屋に着いた。中に入ると、部屋の左右に本棚がびっしりと並べられていて、ギルドマスターの机らしき場所には何も置かれていなかった。エペンプールと違って綺麗好きらしい。応接用の机の上にぽつんと赤い布が置かれているだけで、それ以外は何もなかった。


「アーロ君、ここにおいてくれる?」


 エンベルトが指差す布の上に置いたが、この後どうすればいいのか。


「ありがとう。それと、ここから先は見られたり聞かれたりしたらダメだから、受付のところで待っててくれるかな?」

「秘密?」

「そう。」


 門外不出か。まぁ見たところで私には理解も出来んし、魔法とやらも使えん。いても意味はないだろう。それよりもだ。この空腹をどうにかしたい。朝はスープのみだったから腹が減っている。


「……わかった。ねぇ、ギルドマスターさん、この街って屋台とかある? あれば近くの屋台行ってお腹を満たしたいんだ」

「いや、ここはない。なんだったら受付に言ってギルド内にある食事場があるからそこに行くといい」

「わかった」


 少し重い扉を開け、外に出る。出てからしばらくしてその場に留まったが、エンベルトが何か呟くと、先程まで聞こえていた音が聞こえなくなった。音を消す魔法なんてものもあるのか。確かにそれだと、盗み聞きされる心配もないな。


 水晶を渡したいまだと、特にやることはない。お腹も限界だ。受付に向かうか。


 ギルドマスターの部屋の前から離れ、受付に向かう。


「受付さん、ここの食事場使ってもいいですか?」


 冒険者が依頼を受けたのを見届け、他にいないか確認したのち、受付の女性に声をかける。仕事中に邪魔するわけにもいかないからな。


「君は、隣の街から来た子?」

「うん。水晶を運ぶ手伝いの為にきた。それで、食事しても大丈夫?」

「大丈夫よ。街を出る時に証明書を貰っているでしょ? それを見せれば大丈夫よ」

「分かった。ありがとう、お姉ちゃん」


 話している間も自分のお腹から空腹を知らせる音がなっている。お礼をいい、行こうとしたら後ろに影が出来た。首を少しだけ上げれば、顔は見えないが、少し汚れている銀色の鎧を着ている冒険者が私を見下ろしている。


「邪魔だったね。すぐ退くよ」


 横にずれ、食事場を探すことにした。あの冒険者、顔は見えないがただ者ではない雰囲気はある。下手に関わらない方がいいだろう。

 食事場へ移動しようとしたとき、服を掴まれ、少しだけ首がしまった。


「なに?」

「私もこれから食事だ。共にしよう」


 目の前の冒険者の顔のところまで持ち上げられた。子供とはいえ、そこそこの体重はあるのだがな。

 あんな規格外な大剣をもつ者もいるから不思議ではないが。


「大丈夫だよ。僕1人でも食べられる」

「1人は寂しかろう。おごってやる」


何故、こんなに私に優しくするのかが分からん。初対面ほど怪しいものはないだろう。


「なんでおごってくれるの? 僕とあなた初対面だよ」

「今、会ったという縁があるだろう?」

「へんなの。とにかく降ろして。僕1人でも平気だし」


足をバタつかせて結構激しく動いているのだが、相手の腕がびくともしてない。これが力の差か。


「奢ると言っているのに、1人で食うのか?」

「そうだよ」

「お主こそ変ではないか」

「別に普通じゃない? 僕と年齢が近い冒険者さんもたまに1人で食べてたりするところを見るよ」


ここにはいないが、エペンプールではよく見る光景だ。もともと1人で活動していたり、依頼中に何か遭って1人になっていたりな。

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現代軍人、異世界いったら呪いでショタの姿に?! やさか @yasaca1

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