第34話 僕がいた国の話
簡易なテントを作り、その中で休むことになったが、何故か女性と同じ場所で寝ることに。
子供とはいえ、中身はれきっとした大人だ。それに私には向こうに想い人がいる。あとで怒られないか不安になってきた。そこまで嫉妬深くはないのだが、常に近くにいたいと考えているからな。
アレシアは向こうでいうところのまだ子どもに入る範囲だから平気だが、今一緒に行動している女性2人組はちゃんとした大人だ。その2人に挟まれて寝るのはいささか恥ずかしい。今から変えられるだろうか。
「どこ行くの?」
「外は危ないわよ」
そっと毛布から抜け出ようとしたら止められた。そして、強制的に戻された。力が強い。さすが冒険者。
ではなくて、腕に2人の胸が当たっている。どんなに腕を自分の中心に寄せても近寄ってきた。夜になって急激に寒くなったから子供体温の私に引っ付くのも分からんでもないが、近すぎる。
「見張りを手伝おうかなって」
「子供の君はしなくてもいいのよ」
「そうそう」
「それにテントに居たほうが防御魔法もあるし、外よりは安全よ」
防御魔法はエンベルトも確か使っていたな。ただ、魔法使いの冒険者が唱えている場面は見ていない。焚火の用意をする為に一緒に行動して、その後組み立てたりもしていたが、見ていなかった。
「防御魔法って唱えないと出来ないんじゃないの?」
「しているわ、ずっとね」
「ずっと?」
「移動を始める前から少しずつだけれど、かけているの」
「気付かなかった。でも、それじゃ疲れたりしないの?」
「大丈夫よ。気力の消費を抑える護石をもっているからね」
そう言って胸のところに手を突っ込み、何かを取り出して来た。紐で出来ているネックレスの先に青色に輝く石が付いている。これは、なんだろうか。
「これはパンナムっていう石から作られた護石よ」
「ぱんなむ?」
鉱物や宝石には詳しくないのだが、ラピスラズリや水晶は良く知っている。有名だからな。だが、パンナムなんてのは初めて聞いた。この世界特有の鉱石なんだろう。どういう効果があるのかは聞いた。どこにあるかだな。
「それってどうやったら手に入るの?」
「お店に売ってたりするわ。鉱山がどこにあるかはわからないけれど」
「乱獲するのを禁止するために許可がある人以外知らされてないって噂だよ」
「そうなんだ」
それはそうだろうな。悪知恵が働く者が乱獲しまくって、本来手にするべき人が取れなきゃ商売上がったりだろうしな。
「さぁ、寝て」
「話してたら眠たくなってきちゃった」
私の頭を撫で、毛布を深くかぶり寝る体勢になった2人。この状況に慣れずにしばらく目が覚めていそうだが、明日の為に早く寝たほうがいいだろう。
そして朝になり、街へ行くための準備を終えた私たちは目的地の街へと荷車を動かした。
安全に向かえればいいが。ケルベロスの件もあるからな。結局襲われてから一度も来ることはなかったが。
そういえば怪物でも水晶は狙うものなのだろうか? 狙うとしたらいったい何に使うんだ?
「ねぇ、お姉ちゃん。昨日サーベラスが襲ってきたけど、水晶が目当てだったりするの?」
「うーん、よくわからないわ。そもそも昨日初めて見たから」
「そっか。それで対処法が分からなかったんだね」
分からないなりに戦っていたとなったら相当すごかったんだろう。見ておきたかった。
「反対に知りたいんだが、何故君は知っていたんだ? 昨日も聞いたが」
「そういえば、呼んでいた名前も違ったような」
そうなるよな。とっさに呼んだ名前も聞かれていたみたいだし、話しておくべきか。
「僕がいた国にはね、ここと同じようにモンスターがいたりしたんだ。例えばドラゴンとか。ほかには妖精とかもいた」
ウェールズの国の旗は赤い竜。それに関する伝説は多くある。
「ドラゴン?!」
「うん、昔にね。僕は見たことないけど、僕の国の旗の模様になってたりするよ」
ドラゴンというと冒険者たちは驚いている。やっぱりここも神聖なものだったりするのか?
「ドラゴンを旗の模様にするなんて」
「なんか、昔に悪い竜がいてそれを倒したのが旗の模様になっている竜だってきいたことある」
「へぇ。それで旗の模様に」
「うん」
いろいろと諸説はある。マーリンが2匹の竜の戦いを予言し、旗の模様になっている赤い竜が勝ったとか。
ここにもし、赤い竜がいたら私は倒せないだろうな。それ以外でも倒せる自信はないが。なるべく会わないことを祈っておくしかない。
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