夜の学校

ほんや

とある語り部の話

 どうもこんにちは、ほんやと申します。しがない語り部をしております。今日はお集まりいただきありがとうございます。少々お話にお付き合いいただければと思います。それでは始めるとしましょう。


 そうですねぇ……あれはいつのことでしょうか。確か、私が高校2年生だったときだったと思います。私は学校のクラスで班を作って動画制作をすることになったんです。どういうことかって言いますと、作るのは新入生向けの学校紹介の動画でしてね。今までは先生たちが作ってたんですが、どうも最近の若いのの好みがわからんから生徒に作らせてみようと去年から始まったらしいのです。さて、動画を作ることにはなったけれど、内容をどうしたもんか。私の班は6人でしたのでウンウン唸りながら考えたわけです。そこで班のメンバーの男子の一人が言ったのは、夜の学校とか撮ったら面白そうじゃないと。これには一同悪くないと思いましてね。けれどね、夜の学校を撮るには先生とか色々難しいじゃないですか。ですので色々考えました。これは私が提案したことなんですが定点カメラを使うって方法ですね。これは先生に許可が取れまして、無事に夜の学校が撮れたんです。計画としては夜の学校を3日間それぞれ違う場所を撮るって感じです。残念ながらなにか映るってわけではなかったんですが、普段見られない夜の学校を撮れて私らは満足したんです。そこで別の男子がこう言ったんです。比較対象に昼の映像も撮ったらどうかと。これにも一同、一理あると思い1日だけ撮ったんですよ。まあ大変だろうと思って、私は動画編集担当の女子に言ったんです。顔にモザイクとかかけるの大変だけどがんばってねと。実は動画は動画投稿サイトの限定公開の機能を利用して新入生に届けることになっていましてね。一応ネットに上げることだし全員許可を取るのも無理な話でございますのでね、そう声をかけたのでございました。


 はい、その時でした。これまた編集担当の男子が動画を確認しているときに急に呟いたんです。その言葉が何より恐ろしかったのを覚えています。もしかしたら夜の動画をみんなで恐る恐る確認していた時よりも恐ろしかったかもしれません。彼は言ったんです。モザイクとかいる?  と。当時高校生で、更にちょっと高めの偏差値の高校に入学した彼は許可を撮ってない他人の顔をネットに流すという。これが何よりの恐怖でした。その時は笑って済ませましたが内心ではやばいぞこいつという思いでいっぱいでした。


 その後のお話をいたしましょう。実は最終的な動画は提出まで編集チームに任せましたので私は確認していないんですよね。あれは結局どうなったのでしょうか。なんとかなっているように願うしかありませんね。それでモザイクをかける必要性を問うた彼とは現在連絡を取っていないんですよね。今となっては遠い昔の話ですが、彼はその時のネットリテラシーのままで生きているんでしょうか。それとも認識を改め、生きているのでしょうか。今となっては知るすべもありません。こんなところでしょうか。


 それでは以上小噺「夜の学校」でございました。皆さんもどうかネットにご注意を。お聞きいただきありがとうございました。

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夜の学校 ほんや @novel_39

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