魂たちの世界で描かれる、小さな決意と友情の物語

 本作品は、生まれ変わりを前にした魂たちの準備期間を描いた物語である。山じいの見守る宮殿で、子供たちは次の人生への目的を定めていく。

 主人公フサコは「パンを焼きたい」という素直な願いを持つ。その願いに込められた思いは、物語の展開とともに深みを増していく。地球という困難の多い星を選んだ彼女の決意は、静かな強さを感じさせる。

 物語の転機となる川の街への旅。そこでエリは女王の誘いに応じ、姿を変えられてしまう。フサコとタカヨシは友を探しに再び川の街を訪れる。手鏡は単なる道具ではなく、本来の姿を取り戻すための鍵として意味を持つ。

 山じいとの対話、友との冒険、そして自分で選択することの意味。それらが自然な流れの中で織り込まれていく。

 本作品は、「魂」というテーマを扱いながら、押しつけがましさを感じさせない。読後に残るのは、清らかな印象と、小さな勇気の大切さである。