第31話 新たな宝のなぞ?
イズミが送って来た、なぞ。
「いやいやいや」
思わず首を振る。
僕らは夏休みを利用して、海外旅行を楽しみに倉野さんの家に泊りに来ただけだ。例え、部活のメンバーで来たと言っても、そこに謎解きが入る余地はない。
水上くんも同じことを考えたようだ。
「理事長の謎って、結構解くの大変だったよね。たった、十日ちょっとしかいないのに解いているヒマがあるかな」
すると、ふふっと津川先輩が笑う。
「確かに絵画を探し出すのに二ヵ月近くかかったからね。もしかしたら、これから世界各国を巡らないと解けない謎かもしれない」
そうだとすると、絶対に謎を解くことは不可能だ。
「三人とも、そんなに解くの嫌? トレジャーハンター部なのに?」
久しぶりに倉野さんが険のある声で僕らを責めてくる。この旅行では見ないだろうと思っていた顔色に僕らも顔を青くした。
「いや、トレジャーハンター部は関係ないよ」
「ただ、僕らは旅行を楽しみたいと思って」
僕らがまごまごしていると、背後から手が伸びて来る。
「なーに、ごちゃごちゃ言っているんだい。開けてみよーぜ」
バートさんが箱をあまりにも気軽に開けてしまった。
そこに入っていたものは――
「ん? これは?」
「何これ?」
どう見てもタブレットだ。グレーのカバーがついている。
「えっ! これだけ?」
持ち上げてみても、箱にはタブレットの他、電源コード以外何も入っていない。
僕が確認していることが逆に不思議だったようだ。倉野さんが僕の手の中にあるタブレットを指さす。
「どう考えても、謎はそのタブレットの中!」
だよなぁと、注目を集めながらタブレットの電源を入れた。バッテリーの充電が十分か心配したが、三十パーセントほど残っている。
「アプリが、ひとつだけ」
基本的なアプリの他に、左端にポツンと意味ありげに正方形のアプリが存在していた。青字に黄色のカメラと変わったマークだ。
「タップするね」
タップすると、青い画面に白い文字が出て来る。英語だ。
「イズミプレゼンツ、フォーマリウス?」
イズミは理事長の名前だ。マリウスとは誰だろうと思っていると、すぐに倉野さんが教えてくれる。
「マリウスはオパの名前。つまり、理事長からオパへのプレゼント?」
そうかと、津川先輩が声を漏らす。
「理事長は倉野さんのおじいさんが病気をしたことを知って心配したはずさ。それで、生前におじいさんにこのタブレットを送った。ただ、認知症のおじいさんの興味を引いたのはこのタブレットではなく、昔の謎だったということかな」
なるほど、そこから倉野さんの耳に入って、学園へと向かうという流れが出来たのだ。
「きっと理事長の方も倉野さんのおじいさんに言った言葉を覚えていたんだ。ただ、おじいさん本人が学園に来ることは難しい。それなら代わりに、タブレットを送ったってことかも」
「うんうん。それなら辻褄が合うよ」
水上くんも納得の推理だったようだ。
ただ、亡くなった人のことだから正解かどうかは分からない。現理事長の向井さんなら詳しく知っているかもしれないけれど。
「とにかく、スタート」
倉野さんが横から指を出して、英語の下のスタートボタンを押した。理事長の作ったものだ。いきなり爆発などはしないだろう。
白い画面に変わり、クルクルと惑星の軌道のような動画が出て来た。
「土星? が、いっぱい……」
静止した画像には星は青や黄色、茶色や赤などカラフルな球体が浮かんでいる。周りを三本線の輪っかが回っていた。
「えっと、説明とかは無し?」
「こういうのは触って覚えていくものだよ」
津川先輩が試しに青い惑星を拡大してみた。
「ん? 文字が書いてあるね。えーと、雲のない青い空5?」
英語だけど、これぐらいなら僕にも読めた。
「何のことだろう」
「もっと触ったら何か分かるかも」
倉野さんが今度は隣の赤い惑星を拡大してみる。
「赤茶けた壁4……。もっと意味分からない」
「というか、この惑星っていくつあるんだろう」
水上くんが今度は拡大していた惑星をどんどん縮小していく。
「え、あれ?」
「なんだこれ」
「め、めちゃくちゃいっぱいある……」
惑星は白い空間にたくさん浮かんでいた。何十という単位ではない。どう見てもかなり小さくなった何百もの惑星が並んでいた。
ははっと苦笑するように水上くんが笑う。
「この一つ一つに文字が書いてあるんだよね」
そうに違いない。ただ、その惑星をどうればいいのか。
「あれ、下にスライドがあるみたいだ」
確かに何か引き出すようなアンダーバーが画面の下にある。すっと引き出すと、画面の四分の一ほどを使って横に並んだ写真が出て来た。
「「「「あっ!」」」」
僕らは同時に気づいた。写真の中に雲のない青い空が一枚あったのだ。
倉野さんが急かす。
「さっきの、さっきの!」
「ま、待って。揺らさないで」
僕も指を一生懸命動かして、さっきの青い惑星を探す。なんとか見つけ出した。指でドラッグして、惑星の上でドロップする。
「お、おお!」
写真が惑星の輪っかの上を回り出して、何週かすると消えた。しかも、真ん中の惑星が青く光って、5だった数字が4へと減ったのだ。
「やった!」
「そうか。こうやって、惑星と合致する写真を探していくのか」
津川先輩の言葉にみんなが納得した。ただ、問題が一つ。
「……どう考えても数が」
それこそ星の数ほどある惑星に対して、写真は十枚ほどしか用意されていなかった。
次の更新予定
広くて狭いQの上で 白川ちさと @thisa-s
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