第8話 ふつうのコピー機

「コピー機お借りします」


みなさんそう言ってから、コピーを始める。


もちろんタダではなく、ちゃんとお金を入れて使うタイプだ。


僕は初めてその言葉を聞いたとき、とてもびっくりした。


僕はコンビニでコピー機を使う時にそんなことは言わない。


「〇〇文具店に備え付けてあるコピー機」をお借りする、みたいな感じ?


自分は無意識にも「お金を払ってるんだから好きにしていいだろ」と思ってるんだなと気づいた。


コンビニのハイテクに比べたらかなり型落ちのコピー機だが、人として大切なことを思い出させてくれた。




僕はレジも打つが、基本はPOP書きを頼まれている。


じっと考えてると、いくら楽しいPOPを書いているとはいえ、顔は(`-ω-´)キリッとなっていたに違いない。


「お忙しいところすみません……」


と、お客さんから声をかけられた。


すみませんこちらこそ!!!


僕は店員に、お忙しいところすみません、と声をかけたこともない。




さらに別の人だが、社員さんがやりとりして、そのお客さんのほしいものはここには無いとわかったあと……


「わかりました。すみませんお手数かけて。では、失礼します」


と、お客さんが言った。


業者?!


僕は店員に、失礼します、と挨拶をしたことはない。



もちろんそれぞれの方の性格や仕事で身につけたものもあるのでしょうが、なんだかすごい。


レジが終わったあとも、ほとんどのお客さんが「どうも」とか「ありがとうございました」とか、会釈をしていく。


そのお店の歴史や場所が醸し出すもの、子どもの出入りや家族連れが多いせいかもしれないが、自分は10代ですでにネット環境があった”人間関係スルー世代”だから、それって本当はすごくない?って思う。

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ぶんぐてん 千織 @katokaikou

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