第7話 ふつうのホチキス

あなたは人生で何回ホチキスを買いますか――?


ホチキスは一日に一個も売れない日も多い中、その日は4個売れた。


そういう集中して売れる日というのがなぜかある。



「あ、ホチキス買おうかしら」


レジの途中で気づいた70代女性。


一緒にホチキスの棚に行く。


「普通のならこれですね。芯がいらないのもありますが (相変わらず余計なものまですすめる)」


「いや、普通のでいいわ」


レジで清算を進める。


「ホチキスなんて、久々に買ったわ」


領収証は頼まれていないので、自宅用だろう。


「このホチキス、針の裏がボコっとならないで、平坦になりますから、書類を積み重ねるときにかさばらないですよ」


「あら、それはいいわね」


「今どきのホチキスは力を入れなくていいので」


「あら、そう」


「久しぶりに文具を買うと、結構びっくりしますよ。文具も進化してるんで」


「あらあ、それは楽しみだわ」


レジからの去り際。


「今日は楽しかったわw」と。


ホチキス一個でよくしゃべる店員がいるお店ってことでw


僕がウリたいのは、文具じゃなくて文具店なのだ。

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