メディアが伝えない障害の事実

星咲 紗和(ほしざき さわ)

本編

近年、メディアで障害について取り上げられることが増えてきました。バラエティ番組やドキュメンタリー、ニュースなど、様々な形式で障害者の日常生活や苦労、支援の現状が紹介されることは、以前に比べると確かに多くなっています。しかし、障害についての情報が広がる一方で、メディアが伝える内容は必ずしも全てを正確に、あるいは十分に伝えているわけではありません。むしろ、その一部しか語られていないために、誤解や偏見を助長することさえあります。


まず、メディアはしばしば障害者を「特別な存在」として描く傾向があります。感動的なストーリーとして、障害者が困難を乗り越える姿が強調されることはよくあります。しかし、これは障害を持つ人たちが毎日直面している現実の一面に過ぎません。障害者の多くは、日常生活において「特別」な存在でありたいわけではなく、ただ普通の生活を送りたいと願っています。彼らにとって、障害はその人を全て定義するものではなく、彼らの一部に過ぎないのです。それにもかかわらず、メディアが取り上げる際には、その障害に対して過度にスポットライトが当てられ、あたかもそれが全てであるかのように見えてしまうことがあります。


さらに、メディアは時として障害を持つ人たちを「可哀想な存在」として描くことがあります。視聴者の感情に訴えかけるため、彼らの苦労や困難ばかりが強調され、「弱者」として扱われがちです。しかし、障害者が求めているのは同情ではありません。彼らが本当に望んでいるのは、彼らの生きづらさに対して適切な配慮がなされ、必要な支援が提供されることです。特に、健常者と同じように社会に参加できる機会や、彼らの声が適切に反映される仕組みが求められています。


一方で、障害に対する理解が浅いために、偏見や誤解が生まれることもあります。例えば、発達障害や精神障害については、まだまだ正しい理解が進んでいないのが現状です。メディアで取り上げられる際にも、その複雑さや個々の違いが十分に説明されず、「典型的な症状」だけがクローズアップされることが多いです。その結果、視聴者は障害に対して一面的な印象を持ちやすく、実際には個々の違いが大きいことを見落としてしまいます。


私自身、発達障害や統合失調症を抱えており、社会からの理解や配慮が不十分なために、生きづらさを感じることが多々あります。こうした障害を持つ人たちは、特別に扱ってほしいわけではなく、ただ周囲の理解を求めています。具体的には、周りの人々がもう少し配慮を持ち、無理な期待をせず、自然に接してくれることが理想です。私の友人であるトゥレット症候群を持つ女性も、同じような経験をしています。彼女は、メディアでの障害者の描かれ方に対して強い違和感を持っており、「私は可哀想に思われたくない。ただ、私の症状を理解してほしい」と言います。彼女が求めているのは同情ではなく、彼女の存在をそのまま受け入れ、配慮を持って接してもらうことです。


また、メディアでは時折、障害を持つ人たちが「感動の対象」として描かれることがあります。彼らの苦労や努力が称賛される一方で、その背後にある日常的な困難や課題は十分に伝えられません。障害者が健常者と同じように生活するためには、さまざまなサポートや配慮が必要です。それは時に目に見えにくいものかもしれませんが、その支援がなければ、彼らの生活は非常に厳しいものとなります。しかし、こうした現実はあまり報じられず、成功や努力だけが強調されることが多いのです。そのため、一般の人々は「障害があっても頑張れば何とかなる」という誤ったイメージを持ってしまうことがあります。


障害者の中には、日々の生活の中でさまざまなストレスや不安を抱えながら、それでも前向きに生きようと努力している人が多くいます。彼らは特別な賞賛を望んでいるわけではなく、ただ普通に生活し、社会に参加できることを望んでいるのです。健常者と同じように、生きづらさを感じることなく、自然体で生きていける社会を目指すことが重要です。


そのためには、メディアの役割が非常に重要です。障害者をただ「感動の対象」や「可哀想な存在」として描くのではなく、彼らの現実をありのままに伝え、必要な支援や配慮についても積極的に報じていくことが求められます。そうすることで、障害に対する理解が深まり、健常者との間にある壁が少しずつ取り払われていくでしょう。


私たちが目指すべきは、障害を持つ人たちが特別扱いされることではなく、彼らが健常者と同じように、自分のペースで自然体で生きられる社会です。配慮は必要ですが、それは「可哀想」という視点ではなく、「共に生きる」ための支援として行われるべきです。障害を持つ人たちが、周りの目を気にせずに自分らしく生きられる環境を作ることが、私たち全員にとっての課題であり、目標であると私は信じています。

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メディアが伝えない障害の事実 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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