想い出のぬいぐるみ

やと

想い出のぬいぐるみ

私にはとても仲良い友達がいた。

その子とは病院でで会った。

体育の授業で怪我をして足の骨を折ってしまい病院に行って固定して母が受付をしている所を椅子に座って待ってると私服だが点滴スタンドを持って危なげながら歩いている少女がいてなんだか見覚えがあると思って思い出そうとしているが思い出す前に母が帰って来て家に帰ることになってしまった。


次の日学校に行くとクラスメイトが心配の声をかけて来てくれた。

だが一番後ろの端っこの席が空席だった、教卓にある席順の名前を見ると田島ひかりと書かれていた。

なんだか気になって先生に聞いてみる事にした。

「先生、同じクラスのひかりちゃんってなんでいないの?」

「ひかりちゃんは病気で病院に入院してるんだ」

これではっきりした、ひかりちゃんはあの時に病院で会った少女だ。

私は興味本位でその日に家に帰って直ぐに病院に行って病院をあちらこちらと周って見たがひかりちゃんには会えなかった。もう帰ろうとした時にとある病室が目に入った。そこにはひかりちゃんが苦しそうにせき込んでいた。それを見ているとひかりちゃんは私に向かって声をかけてきた。


「なにやってるの?」

「田島ちゃんだよね?」

「そうだけど」

「私同じクラスの白井優」

「そうなの?」

「うん」

「白井さんはなんで此処にいるの?」

「骨折しちゃって」

「痛そうだね」

「うん」

「ひかりちゃんって学校来れないの?」

「うん、もう暫く行けてない」

「そっか、誰かお見舞いに来ないの」

「友達いないから」

「じゃあ私が友達になる」

「え?」

「毎日は来れないけどお見舞いに行くよ」

「良いの?」

「うん、だから次からは白井さんって呼ぶんじゃなくて名前で呼ぼうよ」

「分かった、じゃあ優ちゃん」

「うん、じゃあまた来るね」

この時私はなんでひかりと友達になりたかったのか分かってはいなかった、ただ一人寂しく病院と言う場所で囚われている一人の少女に少し興味を持っただけだったのかもしれない。


それから私は学校終わりだったり休みの日はひかりに会いに行った。

「私といて楽しい?」

「なんでそんな事聞くの?」

「だって此処に優ちゃんが楽しめるものなんてないし」

「私はひかりに会いに来てるんだよ」

「そっか」

まだ幼く病気に侵されてる少女とは思えないほどに笑顔いっぱいになって私も嬉しかったでも後々ひかりは寂しいとサインを出していた事に気づいた。

「あら優ちゃん来てたのね」

「お邪魔してます」

「邪魔なんかじゃないよ」

ひかりの両親がお見舞いに来た

「これからもひかりと仲良くてあげてね」

「はい」

ひかりの両親とは仲良くてしてもらっている、居合わせるたびにお菓子をもらったりして第二の親と言っても過言ではない。

そんな学校で友達と話をして家では家族と話をして病院でひかりに話をするそんな日常は私にとってはかけがえのないもので人生で一番楽しく充実した時間だったでもこの先、神様は私から大切な人を奪っていく最初に奪われたのはひかりの両親だった。


とある日、いつものようにひかりと下らない話をして過ごしていたら看護師さんが血相を変えて病室に入ってきた。

「ひかりちゃん」

「どうしたのそんなに焦って」

「ひかりちゃんのお父さんとお母さんが運ばれてきたの」

「え?」

ひかりは走れない為、看護師さんにおんぶしてもらい手術室の待合室に向かう。手術室の赤いランプがついたまま何が起きてるのか分からないままじっとしているしかいない。

「お母さんとお父さんはなんで手術してるの?」

「それは、交通事故で」

「何処に行こうとしてたの?」

「、此処」

暗いトーンで話しずらそうに話す。それはそうだ、自分のお見舞いに来る途中で交通事故だなんてひかりには辛すぎる運命だった。

暫く沈黙が流れて手術中と言うライトの色が暗くなって先生が出てくる

「先生お父さんとお母さんは?」

「残念ですが、亡くなりました」

その言葉を聞いてひかりは喚くわけでもなくただしくしくと涙を流している。そんなひかりを見て看護師さんはひかりを抱きしめて「ごめんね」と自分は悪くないのにただそれを言っていた。


少し日が経ちひかりの両親の葬儀が執り行われた。

ひかりはただじっと時間が過ぎるのを待ってるかのように誰にも話さないし泣いたりもしなかった。その姿はまるで人形みたいだった。


葬儀が終わりお手洗いに行く途中でひかりの両親の友達なのか親戚なのか分からないが大人の女性二人が話をしているのを聞いてしまった

「あの子、ひかりちゃんだっけ?頼る親戚もいないみたいなのに可哀想ね」

「そうね、でも自分の親が亡くなったのに泣きもしないなんてなんだか冷めてる子ね」

「まああの年齢だししょうがないわよ」

そんな会話を聞いてしまって反論をしたくなったがこれはひかりの両親を天国に送ってあげるものだと思いぐっとこらえた、私なんかが喚いて壊したくないと思った。

そうして戻ろうとした時にひかりが一人で外を見つめているのを見つけた

「ひかり大丈夫?」

「うん」

本当は大丈夫な訳ないのにそんな当たり障りのない事を言ってしまった。でもそれ以外にこの当時の私がかける言葉が無かった。若干十二歳で親を無くしそんなひかりに残ったのは莫大な慰謝料だけ。お金なんかより今のひかりには親が必要なのに。

「早く死にたくなっちゃった」

「え?」

「だって天国に行けばお母さんとお父さんに会えるから」

「怖くないの?」

「怖いけど、一人になるよりましだよ」

「一人じゃないよ、私がいる」

「ありがとう」


それから私はひかりの病室に行く事を増やした、ひかりは私といる時は笑顔を見せてくれるがふとした瞬間に見せる切ない顔が私の心をちくちくと痛ませた。

そんな時だった、私は究極の選択を迫られる事になる。


「優、今ちょっと良い?」

夜にリビングでくつろいでいるとお母さんとお父さんが椅子に座って私にも椅子に座って話を聞くように呼ばれた

「何?」

「あのね、お父さんの仕事の都合でドイツに行かないと行けなくなったの」

「え?」

「驚くのも分かるけど急に決まってしまってな」

「いつに行くの?」

「来週には行かないといけないんだ」

「なんでそんな急に」

「ごめんな」

「私だけでも日本にいれない?」

「出来ない事はないが、優を預けれるとなると鹿児島のおばあちゃんの家しかないな」

「そんな」

此処は東京だしおばあちゃんの家は本土から船に乗って行くくらい秘境だ。仮に日本に残れてもひかりに会いに行くには三時間くらいかかる、今のように頻繫に会いに行ける距離ではなくなってしまう。迷っているとお母さんが私に一言言った。

「ドイツに行けば優が好きなぬいぐるみを作る勉強もできるよ」

「そうなの?」

「うん、向こうではお母さんの親戚の家にお世話になるんだけどそこの人がぬいぐるみを作る仕事をしていて優がぬいぐるみが好きだって話をしたら是非教えたいって言ってくれてるの」

ドイツはぬいぐるみの発祥の地で手でテディベアが生まれた場所、そこでぬいぐるみを作る仕事をしている人に出会えるなんて魅力的だった。

「でも」

「ひかりちゃんでしょ?」

「うん」

「ひかりちゃんじゃんなくて優の気持ちで考えてね」

「分かった、でももう少しだけ時間を頂戴」

「勿論、でも時間はないからね」

「分かった」

私はどうすれば良いのか分からず、学校へ行ってもひかりに会い行っても頭から離れなかった。そんな日々が続いて数日、答えを出さないといけない時間が来た。


「優ちゃんなんだかここ最近元気ないけどどうしたの?」

「そう見える?」

「うん」

「そっか」

「何処か具合が悪い?」

「そうじゃなくて」

「どうしたの、なんだか変だよ」

「ひかり」

「なに?」

「私ドイツに行かないと行けなくなったの」

「え?」

「お父さんの仕事の都合で急に決まっちゃって」

「そっか」

「本当にごめん」

「大丈夫だよ、いつ頃帰ってこれるの?」

「分からない」

「そうなんだ」

「本当は今までみたいに日本でひかりといたかったんだけど」

「私は大丈夫だよ、最初に戻るだけ。違うのはお父さんとお母さんがいないだけだから」

「大丈夫じゃないでしょ」

「なんでそんな事言えるの?」

「だって泣いてるよ」

「え?」

そう言ってやっとひかりは自分が泣いている事に気づいた

「本当の事言ってもいいんだよ」

「私は優ちゃんにドイツに行ってほしくないだってそしたら私は本当に一人になっちゃう。もう誰もいなくなって欲しくない」

そう言われても現実は変わらない。

「ごめんね、ごめんね」

私も釣られて涙が出てしまう

「孤独は辛いよ、優ちゃんまでいなくならないで」

「ごめん」

私はそれしか言えず病室を出ようとする

「優ちゃんなんて知らない」

それが最後の言葉だった。嫌いと言いながらも私をまだ優ちゃんと呼んでくれた事が私の背中を押した気がした。


そして私は日本を離れた。


二年半後、私はすっかりドイツに染まっていた。最初は言語の壁にぶつかって言いたい事が言えなかったりしたが親戚のおばあちゃんにドイツ語を教わりながら持ち前の明るさで友達を作り今では日常会話を難なくこなせるようになり、家にいる時はおばあちゃんにぬいぐるみの作り方を教わった。この人はぬいぐるみ作りを仕事にしていて色んな国から注文が来ているほどに腕があって時に厳しくそして優しく教わって学校とプライベートも充実していた時だった。公園で散歩をしている時に車椅子に乗っている少女がいた、どうやら段差があり上手く前に進めない様子で困っていたので近くに行って車椅子を押してあげた。

「ありがとう」

「え?」

いきなり日本語でお礼を言われてびっくりした

「だって日本人でしょ?」

「そうですけど」

「私も日本人なの」

「そうなんだ」

「うん、でも生まれはずっとドイツだけど日本人だから日本語話せるんだ」

「そうなんだ」

私はなんだか懐かしい感じがした、それはこの女の子がひかりにそっくりで声まで似ていたからだった。

「そんな私の顔見て、なんか私の顔に何か付いてる?」

「いや、その、貴方が友達にそっくりでびっくりしちゃて」

「そうなんだ、どんな子?」

「友達って言うか、もうその子は友達って思ってないかもしれないけど」

「なんで?」

「それがね」

気づけば私は簡潔にひかりの事を話していていた、この子から感じる面影、話し方、表情が似ていて思わず今の自分がひかりの事をどう思っているかも話してしまっていた。

「なんか話しすぎたね、ごめんね」

「全然良いよ、なんだか楽しかったし」

「そっか、じゃあ私はこれで」

「うん」

「じゃあね」

「あ、待って」

「何?」

「心配なら手紙書いてみたら」

「手紙」

「うん、電話とかでもいいけどちょっと緊張しちゃうと思うからそういう時は手紙が良いよ」

「分かった、ありがとう」

「うん、またね」

「またね」

そうして公園を出た、気付いたら三十分も経っていた。そう言えば「またね」って言われたけど私連絡先も教えたい訳でもないのにどうしてだろう、そんな事を考えていたが今はそれよりも手紙を送る事を考えた。帰りに手紙と封筒を買って家に帰った。直ぐに自分の部屋へと行きペンを持ってみるが何を書けばいいのか分からなかった、今更手紙なんて送っても意味はあるのか。でも送って返事が帰ってこなくてもひかりには伝えたい事は沢山あった、だからこれを送ってもし見られなくても破られて捨てられても何をされても私はここで手紙を送らなければ一生後悔する気がした。それしてドイツに行ってからなど書き始めたら筆が進んで気づけば三枚も書いてしまっていた。それを封筒に入れて日本に送った。


数日後

「優」

「何?」

「ちょっと下降りてきて」

「分かった」

下のリビングに行くと母さんが封筒を持っていた

「何それ?」

「優宛よ」

「え?」

「はい」

封筒を手渡されて誰からだろうと裏をみたらひかりの名前が書いてあった。驚いた、正直返事が帰って来るなんて思いもしなかった、直ぐに自分の部屋に行って中を見たら手紙が入っていた。

そこには去り際に酷い事を言ってごめんなさいと言う事と現状が書かれていた、それと現状は変わりなく心臓も悪いのは変わらないだそうだ。私は残念と思うと同時にまだ生きていると分かって良かったと思えた。そして最後にはまた手紙を送って欲しいと書かれていた。


それから私達は手紙を送りあった、それが少し経ったある日にはいつもの封筒ではなく少しでかい箱が送られてきた事があった。

そこにはいつもの手紙と小さいテディベアのぬいぐるみがキーホルダーになって送られてきた。その時の手紙に書かれてた事が衝撃だった、この縫いぐるみは特注で世界に二つだけらしくこのぬいぐるみを見て必ず誰かが気付いて私達を再会出来るようにしてくれると書かれていてその時はびっくりしたがなんだかそんな気がして私は出かける時に持つバックには必ずこのぬいぐるみを付けるようにした。


半年後私は日本に帰ってこれる事になった、それをひかりにも手紙で伝えたら「待ってる」と書かれていて私も楽しみにしていた、高校も無事に決まり日本の家に帰ってきて荷物も部屋入れて落ち着いてきたのでひかりに会いに病院に向かおうと部屋を出ようとした時にふと最後にひかりに言われた一言が私を縛った。ひかりは手紙では会いたいと言ってはくれたが本当はどうなのだろうか、気を遣ってそう書いただけで実は手紙が送られてきて看護師さんに返した方が良いと言われただけなのではないかそんな負の考えが浮かんできてひかりに会いに行くのが怖くなった。ひかりの両親が亡くなった際に「一人じゃない」と言ったのにドイツに行ってしまった事でひかりは手紙では許してくれたけど直接会うのが怖かった。そしてずるずると時間は過ぎていき気がつけば高校に入って三ヶ月が経ち私はなんでか色んな男子に告白される事が多くなった、これは自慢ではなくただのモテ期がきたのだろう。でも私の頭の中のではいつひかりに会いに行けばいいのか分からず完全に時期を逃してしまいどうすればいいのかと言う考えが頭を巡って恋愛どころではなく次第に私は孤高の人として言われるようになり女の子の友達と気楽に話せて恋愛に引っ張ろうと考えない人達としか絡まなくなっていて聞いた話では私は話したことない人からしたら目つきの悪さも相まってきつい雰囲気を醸し出してるらしく殆ど知らない人は寄り付かなくなっていた時に一人の男子が現れた。


「白井さんちょっといい?」

「なに?」

「こいつがなんか話しがあるんだって」

「なに?」

こいつもそう言う話しをしにきたのか、でもこんななよなよしたやつタイプじゃないしこう言うのはすっぱりと言ってやった方が良い

「いや、あのなんと言うか」

「なんなのそう言うなよなよした奴嫌いなんだけど、もう私行くね」

「ちょっと待って」

「痛いんですけど」

腕をつかまれたので恐怖を感じた

「あ、ごめん」

「なんの本当に」

「あの、田烏ひかりって知ってる?」

なんでひかりの事を知ってるのだろうか、今私は始めて知った人間に興味を持った。

「なんであんたがひかりの事知ってるの?」

「いやちょっと病院で会って」

「ちょっと来て」

「あんたひかりとどう言う関係なの?」

「ただの友達だけど」

「そうなんだそれで私になにか?」

「いや、ひかりの見舞いに行ってほしくて」

「なんで?」

「いやひかりが友達だって言った人白井さんしかいなかったし」

「なんで名前が同じってだけで私がひかりの言ってる人だって分かったの?」

「朝に見かけた時にひかりと同じ縫いぐるみバックに付けてたから」

「なにそれ、きも」

「いや普通に傷つくからやめて」

「じゃあ正解って事で行くよ」

「本当?」

「行くって行ったでしょう」

「よし」

なんだか凄く喜んでいるのを見るとなんだか悪い気がはしない、ずっと感じていた恐怖もふっと消してしまいそうな不思議な男の子と言う感じが初めての印象だった。


「ひかり、入るよ」

「はーい」

少し緊張しながら久しぶりの病室に入った。

病室に入って白井さんを見た瞬間にどっと涙きだした。

「優ちゃん、久し振り」

「ひかり久し振りね」

此処は何も変わらなかった場所もひかりも、ただ少しだけ違うのはひかりの周りに色んな写真が飾ってあった。

「その顔じゃあ喧嘩分かれでもしてひかりと会うのが気まずいとか思ってたんでしょ?」

「なんで分かったの?」

「だって貴方ずっと緊張してたし」

「それだけで?」

「まあ縫いぐるみ見ただけで呼ぶとかどうかしてるでしょ」

「まあ確かに」

「優ちゃん、ごめんね」

「まだひぎずってるのね、もう怒ってないよ」

「そっか」

やっと会えて私も少し舞い上がってしまっていたが一人蚊帳の外って感じで立ち尽くしていたのでお礼として説明してあげる事にした。

「で、どう言う事?」

「貴方にも分かるよりに簡潔に言うと、私達は小学生の時に病院で会ってそれから同じ学校って事で仲良くなって中学でも学校は同じだったけど途中で海外に行く事になってなかなか会えなかっただけ」

「そうなんだ、ってかさっきなんか僕の事馬鹿にしたよね」

「別に馬鹿にはしてないよ。見たまんまの印象で話しただけ」

「それが馬鹿にしてるって言ってるんだ」

「誠も優ちゃん仲が良いんだね」

「どこを見たらそう見えるのよ」

「そうだよ大体今日初めて喋ったのに」

「こんな見るからに陰キャで空気読めないやつ嫌い」

「空気読めないってなんだよ」

「だって皆の前でこの事話さなくても良いじゃん」

「それは皆が勘違いしてただけだし」

「そんな事言って実はみたいな」

「天地がひっくり返ってもない」

「俺もない」

「なんであんたが上からなのよ」

「ひかりちゃん点滴変えるよ」

「はーい」

看護師さんが入ってきた

「あら今日は誠君だけじゃないのね」

慣れた手つきで点滴変える看護師さんが珍しそうに言ってくる

「初めまして白井です」

「初めまして」

「誠君は調子どう?」

「大丈夫です」

「ちゃんと薬飲んでる?」

「はい、言われた通りに」

「なら良いけど、そうだひかりちゃん花火何時だっけ?」

「そうだ、もうやろうかな」

「花火?」

「そう言えば今日って言ってたな」

「花火大会とか行けなかったし写真のモデルに花火やりたいなって」

「今日やるの?」

「うん、もう買ってあるんだ」

そう言ってベットの中からビニール袋いっぱいに花火が詰まっていた

「それ全部花火か?」

「そうだけど」

「そんなに必要なの」

「まあ色んな人誘ったしコンビニで買ったんだけど買いすぎたかな」

「買いすぎだよ」

「じゃあ皆呼ぼうか」

そう言って看護師さんにひかりが誘った人達を呼んでもらって病院の庭に集まってもらったらひかりを診ている先生や看護師さん達など入院している子供から大人、お年寄りまで庭には祭りでもやってるのかと言える程に人が集まった。

「じゃあ皆花火持っていってそれぞれ楽しみましょう」

ひかりの一言で一斉に皆がひかりに感謝を告げながら花火を持っていった。

「あんなにあったのにもうなくなったな」

ひかりは子供やその親だったりお年寄りに捕まって沢山の人に囲まれてとても楽しそうだった

「ひかりがあんな笑顔なの久し振りに見た」

「やっぱり来て正解だっただろ」

「なんかあんたの手の平って感じで嫌だけど取り敢えず良しとするわ」

「素直じゃないな」

「それでひかりの事どう思ってるのよ」

「どう思ってるって?」

「本当に空気読めないね」

「よく分からないから聞いてるんだけど」

「ひかりの事好きなの?」

「直球だな」

「こう言わないと分かんないでしょ」

「そこまでじゃないよ。でも自分は人の事好きになった事ないから分かんない」

「好きってなんか気付いたらその人の事考えてたりまあ人によって変わるからこれってものはないけどただその人が喜びそうな事考えたりそれは気付いたらって感じだよ」

「じゃあそうなのかも」

「そうなのってひかりには時間がないんだよ」

「分かってるけど自分の感情を押し付けたくないんだよ」

「馬鹿」

「シンプル悪口やめろよ」

「うるさいそんなんじゃひかりは渡せないね」

「なんで親目線なんだよ」

「だって中学までずっと一緒だったし」

「そう言えば今日ひかりが誤ってたけどなにがあったの?」

「私が海外に行くってなってひかりが泣き止まなくてちょっと揉めただけそれにもう海外に行く前に解決してるし」

「じゃあなんで帰ってきて直ぐに会わなかったんだよ」

「それはちょっと気まずかっただけ、あなた少し気を使いなさいよ」

「でも親も大部前に亡くなってたんだし寂しかったのに」

「分かってるよでもそう思うならもっとひかりの事考えてあげて」

「考えてるよ」

「じゃあ舞台用意してあげる」

「舞台?」

「そう私らの文化祭に呼ぼう」

「でもひかりは外に出るの難しいだろ」

「それがあんたの仕事でしょ」

「無理言うなよ」

「ひかりに対する想いはがあれば大丈夫でしょ」

「それとこれとは話しが違うだろ」

「それにあんたの小説映画やるんでしょ?」

「なんで知ってるんだ」

「昨日ニュースでやってて、学校の皆知ってたよ」

「そうなんだ」

「文化祭の後に映画言ったら完璧」

「完璧ね」

「ちょっと二人でいちゃいちゃしないでよ」

「してない」

さっきまで人気者だったのにいつの間にかそれをかいくぐって僕らの前に来た

「誠皆が感謝してたよ」

「俺に?」

「うん」

「なんで?」

「だって花火やろうって決めてくれたじゃん」

「花火やろうって言ったのひかりだろ」

「私だけじゃあ出来なかったよ」

「そんな事ないだろ」

そう言うと白井さんが溜め息をついて僕に一言言った

「あんたの後押しが嬉しかったんでしょ」

「そうなの?」

ひかりが恥ずかしそうに顔をそらした

「全く本当に空気読めないな」

「うるさい」

「誠君久し振り」

白衣を着た先生が柊君を連れて行った。

「そう言えばひかりの言ってた事本当に起きたね」

「縫いぐるみの事?」

「そう」

「まあお呪い程度だと思ってたからびっくりしたよ」

「ひかりが縫いぐるみに必ず誰かが気付いて私達を再会出来るようにしてくれるなんて言った時はなに言ってるんだって思ったけど現実に柊君みたいな人いるんだね」

「優ちゃんを本当に連れてきた時は誠に関心したよ、懐かしいね二人で話すの。入院してた時は優ちゃん泣き虫だったのに海外に行って変わったんだね」

「うるさい、で、柊君の事どう思ってるの?」

「私は誠の事…」

ひかりは凄く悩みながら答えを出そうとしていた

「無理に答えなくて良いよ」

「うん」

もうそこで私は悟った、なら私にできる精一杯の後押しをしてあげようと思った。


「ひかり」

「優ちゃん、最近よく来てくれるね」

「まああの時と変わらないね」

「そう」

椅子に座ってスマホを確認したらいつもの時間になった

「そう言えばもうそろそろ来るわね」

「誰が?」

「そんなの一人しかいないでしょ」

「そっか」

そう言うとひかりが布団を被って寝たふりをし始めた、多分私が花火の時に柊君についてどうおもっているのか聞いてしまった事で少し会うのが恥ずかしくなってしまったのだろうと思った。

「ひかり起きてる?」

ほら来た。

「いや、何でもないよ」

「もしかしてキスしようとか考えてたんでしょ?」

「そんな訳ないだろ」

「顔を真っ赤だよ。もうウブだなー」

ひかりが楽しそうにからかってくる

「やめろよ」

「ごめんってば、そんなに怒んないでよ」

「こっちは心配してたのに」

「心配?ああ、文化祭の事?」

「それもあるけど」

「それなら問題ないよ」

「なんで?」

「もう外出許可もらったし」

「本当に?」

「うん、薬のんでちゃんと報告したら良いって」

「あんなに反対されてたのに説得できたのか?」

「誠がついてたら良いって」

もう駄目かと諦めていたのに先生には感謝だと思った

「それに誠の小説の映画やるならなんとしてでも行かなきゃね」

「本当に行くのか?」

「なんで?」

「なんか恥ずかしい」

「別に誠が出てる訳じゃないでしょ?」

「そうだけど、脚本を共同でやらせてもらったしなんか恥ずかしいんだよ」

「ずっと小説読んできてるんだから今さらでしょ」

「それとこれとは違うんだよ」

「変な所で照れるなよ気持ち悪い」

「来てたのかよ」

「来たら悪いの?」

白井さんがいつの間にか病室に来ていた

「それより文化祭来れるって本当?」

「うん、当日はちゃんと行くから」

「無理しないでね」

「大丈夫だよ。優ちゃんのクラスはなにやるの?」

「喫茶店だよ」

「そうなんだ。誠は屋台だったよね?」

「うん」

「楽しみだな。高校の文化祭に行けるなんてないと思ってたから」

「じゃあひかりが楽しめるように準備しとくから」

「うん」

「ここの所毎日来てるな」

「それは貴方もでしょ?」

「俺は良いんだよ」

「それはひかりが決める事でしょう」

「私は二人が来てくれるので嬉しいよ」

「ひかりはこの人に甘いのよ」

「そうかな」

「そうよ」

「ひかりもこう言ってるんだし良いじゃん」

「調子乗らない、それにお見舞いに来てるならパソコンやめなよ」

「仕事なんだからしょうがないだろ」

「誠はそのままで良いんだよ、私は誠が小説書いてる所が見たいんだから」

なんだかこれが病室ではなかったら青い風の中で椅子に座り制服を着て笑顔で話せる世界線があったのではと思ってしまう。でも私はまだそんな可能性を諦められない密かに毎日近くの神社で神様に祈っている。

「じゃあ私は先に帰るね」

「うん」

帰ろうと病室を出て歩いていると柊君と看護師さんが話しているのが見えた、なんだか盗み聞きするようで申し訳ないけど思わず聞き耳を立ててしまった。

「ひかりちゃんと文化祭と映画に行くのよね?」

「はい」

「ちゃんと薬と報告するように見ててあげて」

「分かってます」

「ひかりちゃん久し振りに外に出る為に辛い薬投与して頑張ってるからちゃんと見てあげてね」

「分かりました」

直ぐに柊君がこっちに歩いて来るので足早とその場を後にした。

分かっていた、ひかりが苦しんでまで文化祭に行きたいと言う気持ちももうひかりの心臓が限界に向かっているのも、そんなそぶりを見せなくても。だからこそもっと早く会いに行けば良かったと今になって後悔してしまう。


そうして文化祭は始まった。

文化祭は二日間行われる今日は学校関係者だけで行われるので学校にいれるのは生徒と教師だけなのでで今日はひかりは来れない、クラスTシャツを着て楽しそうだ。そんな私も最初の文化祭ということで舞い上がっていた。

そして文化祭は始まって行く、私は自分のクラスの仕事をこなしながら色んなクラスを回って楽しんでいたのだが柊君のクラスの前に来た時、柊君が受付をしていた。

「まだやってたの?」

「まあ、明日一日仕事しない代わりに今日一日受付するって事になったのよ」

「馬鹿じゃないの」

「え?」

「あしたひかりに案内するんでしょ?」

「まあ」

「じゃあ知っとかないといけないとか考えなかったの」

「そうか」

「そうか、じゃないわよ行くよ」

「行くってどこに?」

「いいから」

私は柊君の手をとった

「ちょっと柊君借りるよ」

クラスの中にいる生徒に向かって言った

「もう時間ないだろ」

「良いから」

それから私達は時間が許す限り色んなクラスを回った、ひかりが好きそうな物を出しているクラスを見て回った。

「よし、これで分かった?」

「何を?」

「何って何も考えないで今いたの?」

「まあでもこれでちゃんと予習はできたよ。ありがとう」

「これでひかりを楽しませられないなんて事があったらぶっ飛ばすから」

「いちいち棘がある言い方何とかならないの?」

「柊君こそ空気が読めないの治せないの?」

私達はふっと笑ってしまった。お互いの悪いところ言い合うなんて今までじゃありえなかった、これはひかりがくれた縁だと思い大切にしないとと思った。

「じゃあ今日はこれで」

「うん」

「あ、そうだ」

「何?」

「ありがとうな」

「無駄にしないでね」

「分かってるって」

私達はそれぞれのクラスに帰って今日は終わりを迎えた。

私は今日ただ色んなクラスを回っていただけではないひかりの思い出の中に何を残せるのかそして天国に行っても私が死ぬまでそして死んでからもインパクトを残していられるようにと色々と考えたのがひかりの大好きなもので驚かせると言うアイデアだった、多分私がひかりに会えるのはもう片手で数えるくらいだと思ったか。


文化祭は二日、今日はついにひかりが学校へと来る。

準備は抜かりない。

「今日だよね。優の友達が来るの」

「そう」

「よし、張り切って行くよ」

「あんまり張り切ってばれたりしないでね」

「分かってるって、もう色んな人に声をかけてるから」

そう言う彼女は北島遥と言う。遥は私がこの学校でできた初めての友達だ、遥はコミュニケーション能力が高く色んな人と友達になってるので私も自然と友達が増えた。

「皆そろってるな」

担任の先生が教室に入って来てクラスの皆がいるのを確認して話を続ける

「今日は文化祭二日で昨日なんとなくどんなものかって分かったと思うけど今日は来年受験しようと考えてる中学生やその親御さんも来るからくれぐれも気おつけろよ、馬鹿は程々に楽しもう」

「はーい」

皆が揃って返事した。まだ始めるまで時間があるので各々好きな時間を過ごす、写真を撮る子もいれば先生と話す子や今日のスケジュールを管理する子もいて過ごし方は様々だ。

私は今日此処を訪れる人を見に行った。そしたら受付に結構の人数が並んでいた、去年はここまでの人はいなかった、この学校はそこまで人気がある訳ではないはずでそれなりに勉強すれば結構誰でも入れると思っていたがそう言えば今年入学してこんなにも人を集められる人間が一人いた事を思い出した。

「もう病院でた?」

「まだだけど」

「なんか人多いみたいだから早めに来てね」

「そうなんだ」

「誰のせいだと思ってるの」

「え?」

「兎に角気を付けて来てね」

「分かった」

当の本人は気づいてはいないにたいだがそのくらいがいいのかもしれない。ここで丁度始まりのチャイムがなり人が入ってくる。

それから私達生徒はクラスの出し物を存分に楽しんでもらえるように働いた。

暫くして柊君から学校の前に着いたと連絡をもらって正門まで向かうと人だかりが出来ていた、よくよく見てみるとひかりと柊君が絡まれていた。なんだか面白くて暫く見ていたが本来の目的を思い出したので声をかけた。

「あ、ひかり此処に居たんだ」

「優ちゃん」

「じゃあちょっと行ってくるね?」

「どこに?」

「女の子の用事を聞くのは野暮だよ」

「えー」

「じゃあ一階の自販機の前で待ってて」

「分かった」

この学校はトイレ以外に蛇口があって鏡が付いてる女子からしたらメイク直しする為にあるような場所があるのでそこに向かう。

「じゃあ始めるよ」

「うん、でも私メイクなんてした事ないけど大丈夫?」

「まかせなさい、海外なんて中学生の時からメイクするのなんて普通なんだから」

「じゃあまかせます」

ひかりに似合うメイクをずっと考えてみたがやはりこの大人な雰囲気ときりっとした目元をしているので下手に付け加えるより自然なメイクにした方が絶対に良いと思っていたので考えていた手順道理に進めていく。

「よし」

「完成?」

「うん、どう?」

「なんかメイクってこんな感じなんだ」

「そう、ナチュラルメイクってやつ」

「おーこれが、なんだかがっつりやるものだと思ってたよ」

「ひかりには自然な感じのメイクが似合うのよ」

「そうなんだ」

「うん、元が良いからね」

「なんだか照れるな」

「よしこれで柊君をびっくりさせてやろう」

「大丈夫だかな」

「大丈夫だって、此処でまってな」

「ちょっと来て」

「ひかりは?」

「今連れてくから」

ひかりの所へと連れて行くと柊君は言葉を失ったように微動だにせず何も言わなくなってしまった。

「ちょっと初めてメイクした乙女に何も言わないってどう言う事?」

「本当に空気読めないよね」

「いやいやちょっとびっくりして」

「メイクして顔忘れちゃった?」

「いやめちゃめちゃ似合ってるし可愛いよ」

そう言うとひかりは顔を背けてしまった。

「それでいい」

「え、どう言う事?ちょっとひかりこっち向けよ」

「うるさい、もう行くよ。押して」

「はいはい」

「じゃあ最初は誠のクラスに行こう」

「分かった」

そうして二人は柊君のクラスへと向かって行った。

なんだか二人が同じ制服を着ているように見えて涙が流れた。

「なんだが涙もろくなったな」

直ぐにはクラスには戻らずに三階の誰もいないトイレに入った

さっきひかりの顔をメイクで触ってひかりはあんなにも瘦せてたのかと思った。

ひかりに時間はないと理解はしていたでも少しだけ希望を持ってはいたでも現実は残酷だ。

もう死が目の前にあると思ってしまったら、ひかりは自分の体だし分かっているだろう。

そんな事実を私は受け入れられない、なのにひかりはあんなにも楽しそうな顔をしていた。

そんな考えで頭が痛くなってきたし涙が止まらなくなった。

携帯にラインが入ってきたので涙を拭いて教室に戻った。


「優どこ行ってたの?」

「ごめんって」

「なんか人多くない?」

「だから連絡したんじゃん」

「そうなのね、じゃあ働きますか」

「そうしましょう」

それから次々くるお客さんを捌きながらひかりを待った。

「いらっしゃい、ひかり」

「俺は?」

「ひかりやっぱりメイクして良かったでしょ?思った通り可愛い」

「おーい無視すんな」

「二名様来店です」

「こちらの席へどうぞ」

「何にする?」

「どうしようかな」

「何にしますか?って優に振られた柊君じゃん」

告白もしてないのに勝手に振られた事になってる

「告ってないし」

「そうなの?優が言ってたよ降ったって」

「なんでだよ」

「お連れになってるのは彼女さんかな?」

「はい」

ひかりはこの状況を楽しんでどうやらこのまま俺の彼女と言うつもりらしい

「ならこのカップル限定のパフェなんてどうですか?」

「じゃあそれにします」

「はーい、パフェ入りました」

「パフェとか食べて大丈夫か?」

「大丈夫だよ」

程なくしてパフェが運ばれて来たのだがこれが相当でかく食べるのに苦労した

「はーお腹いっぱいだ」

「少ししか食べてないだろ」

「いやいや結構食べたけど」

「殆ど俺が食べたんだが」

「食べ盛りの男子高校生なんだからいっぱい食べなきゃ」

「はいはい、じゃあそろそろ出ようか」

「もう行くの?」

「うん、ごちそうさまでした」

「はい、気を付けて行ってきてね」

「はーい」

二人は教室を出ていった。


文化祭は後夜祭を残して終わりに向かって行った。

教室には後夜祭に向かって行ったので誰もいない。

「ひかり」

私はひかりと二人で撮った写真を見ていた

「それ、ひかりちゃん?」

気が付いたら遥が教室にいた

「そう」

「それいつの写真?」

「一週間前くらいかな」

「なんか今日より瘦せてない?」

「うん、メイクした時に私も思った」

「我慢しないでいいんだよ」

「え?」

「ほら」

遥にハンカチを渡されて自分が泣いている事に気づいた

「綺麗な子だった」

「そうでしょ」

「うん」

「メイクして綺麗だって思ったし色んな意味で儚くてもう消えてしまいそうだって思っちゃって」

「もうどうしようもないんだね」

「うん、多分私が会えるのは今日が最後」

「分かるの?」

「うんだって小学生の時からの付き合いだし」

「そっか」

「うん」

「じゃあ後夜祭行こうか」

「今は」

「こう言う時だからこそでしょ。それに優にいてもらわないと困る」

「分かったよ」

遥に手を引かれて体育館に行く、これは少しでも気分を紛らわそうと気を遣ってくれたので後夜祭を楽しもうと思った。

もう私は泣かないと決めた、だってひかりはそんな姿望んではいないと思ったから。


後夜祭は色んな生徒が集まっていた、ダンス部が踊ったり自分達で企画して踊ったり歌を歌ったりして中には好きな人に公開告白したりしていた、それに私も巻き込まれたが断った。そうして後夜祭も終わりを迎えて各々帰る時に遥が色んな人に声をかけてくれた。

「写真アルバムにして優に送ったからね」

「ありがとう」

私は帰って電車に乗っている時に柊君に写真を送る、これはひかりと柊君にも秘密にしていた。送られて来た写真を整理してアルバムにして柊君に送った。

「じゃあ今から通知鳴りやまないと思うけど気にしないで」

「え?」

「良いから、ひかりが帰って来てからまたライン開いて」

「分かった」

私が出来ることはもうしたこれでひかりが笑顔になってくれればいいけど。


次の日私は病院にいた、私がひかりの病室に向かおうとしている時私は衝撃な物を見てしまった。

それはひかりが意識がない状態で運ばれていく姿だった。運んでいる医者と看護師さんの様子からもう手の施しようがなくひかりの心臓はもう動くことはないと悟った、それでもひかりの病室に行った。

「なあひかり、これ良く撮れてるな」

柊君が持っていた写真は何時ぞやかひかりが一番気に入ってると言っていた写真だった。

「その写真、ひかりが一番気にいってたんだよ」

「そうなんだ」

柊君はそのまま病室を出ていってしまった。

「白井さんだったよね?」

後ろから看護師さんが話しかけてきた

「はい」

「ひかりちゃんが白井さんにこれ渡してって」

それは私とひかりだけが持ってるぬいぐるみだった、今考えるとこれがなければ私達が再開する事はなかっただろう。

「ありがとうございます」

そうして私はその場を去った、私が出来ることもないし誰もいないこの場所にいても意味はない。


少し日が経ってひかりの葬儀が行われた。

ひかりの葬儀には私と柊君と後は病院の看護師や医者だけだった、ひかりには他に友達はいなかったし家族もいないだから葬儀が終わったら皆仕事で帰ってしまった。私は柊君を探していたらロビーに看護師さんと話をしていたが私が見つけた時に話は終わったようだった。

「大丈夫?」

「それ今日色んな人に何度も言われたよ」

「無理しなくて良いわよ」

「でもひかりは多分泣いて欲しいとは言わないでしょ」

「そうね、ひかりはこんな時だとしても笑顔で送って欲しいって思うでしょうね」

「そうだよ、だから僕は泣かない」

「でもひかりにもう家族はいないし多分ひかりを一番理解して分かり合えたのは貴方だけなんだからその苦しみと辛さ、独り占めしても誰も文句は言わないよ」

「分かってるなら泣かせようとしないでよ」

「だからこそ言わして貰うけど少しでも変な事考えてたら許さないから」

「それは大丈夫だよ、だってそれがひかりが一番怒る事だから」

「そう、なら良いわ」

それを聞いて安心して外に出た、外では雨はが降っていた。それはまるで雨がぽつりと降りだしたまるで私の心を表しているようだった。


私は次の日も学校へと行った、柊君が心配だったがちゃんと学校には来ているみたいだったので安心した。

ひかりが亡くなっても朝は来るし学校も始まる、ひかりの事を知らない人の時間は進んでいくでも私やひかりの事を知っている人の時間は止まってしまう。


「この時間は理系か文系どっちを選ぶか決めるからプリント見てしっかり決めるように」

担任の先生に配られたプリントにはどちらを選んだらどんな授業だったり進学や職業などが詳しく記載されたものだった、担任の先生はやる事がないのか教卓に立って生徒の質問を受けたりしていた、その時だった。

「きゃー」

隣りのクラスからだった。

「なに」

「なんかあったの」

「ちょっと見てくるからお前ら待ってろ」

それを聞いて担任の先生は直ぐに教室を出ていった

「なんの騒ぎだろう」

「さあ」

「誰か飛び降りたとか?」

「不謹慎すぎるだろ」

「じゃあナイフでも持ってる暴れてる?」

そんな罰当りな事するやついないだろうと思ってた。

廊下を見ていると担任の先生が男子生徒を担いで行った。

それは見間違える訳もない柊君だった。

「今の柊君じゃない?」

「うん」

「大丈夫かな」

「分からない」

程なくして担任の先生が帰ってきた

「先生何があったの?」

「まあぶっ倒れた奴がいてな」

「大丈夫だったの?」

「もう救急車で病院行ったから大丈夫だろう」


授業が終わり私は職員室へと走った。職員室に入ろうとした時に担任の先生がでてきたので話を聞こうと思った。

「先生」

「どうした、そんな焦って」

「さっき運ばれたのって柊君ですよね?」

「そうだけど」

「どこの病院か教えてください」

「T大学病院だけど」

学校を飛び出して駅に向かう途中でタクシーがきたので乗り込んで事情を説明して飛ばしてもらった。

タクシーに乗って数十分で病院に着いて受付に友達が運ばれてきたと言ったら手術室の待合室にて通された。

そこの椅子に座って一人祈る。

神様は意地悪だ、もう私から大切な人を奪わないでと願いながらただ時間が過ぎるのを待った。

少し経って柊君の両親が来たので挨拶をしてただ待った。


手術中と言うライトが消え手術が終わった。

「先生」

柊君の母親がどうなったのかを聞きに行く

「なんとか一命はとりとめしたがいつ目を覚ますかは」

「そうですか」

余談は許さないとはいえなんとか生きてるのなら何でも良かった。


それから五日間柊君は眠り続けた、私はその間ずっと病室にいた

「あ、起きた?」

「うん」

「もう、心配したんだから。柊君まで死んじゃうじゃないかって本当に思ったよ、ひかりと出会わせてそのままなんて私は許さないから」

「ごめん」

「でもなんだか不思議だね」

「なにが?」

「此処ひかりが入院してた病院だし此処ひかりがいた病室だよ」

「そっか、今思ったらなんだか見覚えあるわ」

「そうだ、これ見て」

「何?」

「柊先生病気に負けるな」

「いつまでも柊先生の小説を楽しみにしてるのでどうか無事であって下さい」

「いつも柊先生には元気を貰っているので今度は僕らが元気を送ります」

「皆なんで知ってるの?」

「柊君が倒れてから小説の担当してる人が持病だってTwitterで言ったらしくてそれがネットニュースになって広まったみたい」

「そうなんだ」

「それとこれね」

「なにこれ?」

「さあ私も柊君に渡してって言われただけだから」

「そっか」

「私なんか飲み物買って来る」

「分かった」

戻ってきたら柊君は笑っていた。


六年後

私はドイツの大学に通いながらおばあちゃんにぬいぐる作りの全てを教えてもらいおばあちゃんのお店で働かせてもらうことになった。

でも、今は日本に来ている。

「お待たせ」

「久しぶりだな」

「うん」

今日はひかりの七回忌ということでお墓参りに来ていた

「優はドイツに行って忙しい?」

「いや普通の社会人一年目って感じだけど仕事柄収入は不安定だよ」

「そっか、まあでも俺も同じようなものだけど」

「誠はそのまま小説家でしょ?」

「まあ大学出て出版社に働きながら小説書いてる」

「そうなんだ」

ひかりのお墓の近くで集合だったからそんな会話で直ぐにお墓の前に着いた

私達はお花を備えて手順通りに進めて手を合わす

「今ひかりなんて思ってるかな」

「さあ、でも確かなのはやっと苦しみから逃れて会いたかった両親と会えてゆっくりできてるんじゃない?」

「そうだな、そうであってほしい」

「そう言えば大学二年の時心臓移植したんだ」

「なんかニュースで見たけど、大丈夫なの?」

「うん、もう心配ないくらいには」

「そう」

「それでひかりにあった」

「夢で?」

「そう」

「なんて言ってた?」

「なんか断片的だけど、ひかりが亡くなって直ぐに入院した時に神様にお願いして助けられたけどお願いは一人一回だけだから今度は親戚の友達にお願いしたって」

「結構覚えてるじゃん」

「まあ衝撃的だったから」

「それでさ、どうやら心臓提供してくれたのがドイツの女の子だったらしいんだけどなんか知ってる?」

「そういうのって詳しくは教えてもらえないって気いたけど」

「これくらいしか教えてくれなくて」

「そうなんだ、それでひかりの親戚って話?」

「そう、優なら小学生からの付き合いって言ってたし」

「ん-ひかりにも親御さんにもそんな話は聞いてないけど」

「そっか」

「じゃあ行こう、今までの事ゆっくり話そう」

「じゃあ駅の喫茶店でも行こうか」

「うん、今話題の有名小説家先生の話は面白いんだろうな」

「ハードル上げるな」

「はいはい」

私のバックには今でも思い出のぬいぐるみが付いている、これが私の想い出。

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