第5話
それからしばらくして、俺はある感触で目が覚めた。女性の繊細な指が俺の胸元に触れたのだ。
「ハニー?大丈夫?」(原文英語)
ああ…よかった!妻のバーバラの声だ!
俺はようやく夢から覚めた。
「うん。怖い夢を見てたんだ…俺が寝たきりで病院にいるとこだった」
「まあ、それで?寝たきりだったの?赤ちゃんみたいに」
「うん。体が全然動かなくて、しゃべることもできなかったんだ」
「こんな風に?」
バーバラはシャンプーのいい香りを漂わせながら、俺の体の上に乗って来た。身長が175センチもあるから、言っちゃ悪いがすごく重い。俺がほほ笑むと、情熱的に唇を重ねて来た。彼女の舌が俺の割れ目をこじ開けて滑り込んでくる。しばらくディープキスをすると、俺はこれが今の俺の生きている世界だと実感した。
俺はやっぱり俺は有栖川聡史なんだ。アメリカでの名前はBradly Cooper Allisだ。妻は元オリンピック選手。子どもは男が二人でマックとヒーロー。マックはマクラーレンから取った。
俺は妻があまりに重いから、払いのけようと思ったが無理だった。鼻で息をしたいのだが、妻のキスがあまりに情熱的で空気を吸う隙間もなかった。
俺は苦しくて体をバタバタと動かした。しかし、無理だった。あまりにも妻の力が強すぎて、俺は足先くらいしか動かせなかった。
「苦しい!このままじゃタヒぬ」
俺は心の中で叫んだ。
その瞬間、俺は妻との離婚を決意した。
もう、君とはやって行けない。
君は重過ぎるし、力が強すぎる。
次は誰と結婚しようかな。
女優の〇〇・ワトソンがいい。
俺は息が苦しくてもがいた。
本当にタヒんじまうじゃないか。
薄れゆく視界の中で目を開けると、そこにはあのよぼよぼの老婆がいた。
そして、俺の口元に濡れたタオルを当てていた。
病棟 連喜 @toushikibu
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