姉妹

成阿 悟

姉妹

 穏やかな日の午後、私は姉と一緒に街を歩いていた。

 風が少し冷たくなり、ショーウインドウには秋物の洋服やブーツが並び始めている。

 行き交う人々は暖かそうなコートを羽織り、街の雰囲気も冬の足音を感じさせる。

「このコート、どう思う?」

 姉がウインドウ越しにベージュのコートを指差して尋ねてきた。

「似合いそうだね」私は微笑みながら答えた。

 姉はいつもおしゃれで、どんな服でも彼女に似合う。

 それに、彼女が着ると服が特別なものに見えるから不思議だ。

 私たちはしばらく街を歩き続けたが、時おり通行人の視線を感じる。

 姉の美しさは人目を引く、今日も例外ではない。

「なんか、みんな見てない?」私は姉に問いかけた。

「そうかもね」

 姉はいつものように軽く微笑んで答える。

 姉と一緒にいると安心できる。

 彼女と過ごす時間は、私にとって何よりも大切なものだった。


 少し疲れた私たちは、カフェに立ち寄ることにした。

 窓際の席に座り、姉がコーヒーを注文する。

 外の冷たい風とは対照的に、店内は心地よい温かさで包まれていた。

「ここのカフェ、いい感じだね」

 私は姉に話しかけた。

「そうだね、静かでゆっくりできそう」

 姉は微笑みながら答える。

 彼女の笑顔を見ると、自然と私も笑顔になった。

 店員がコーヒーを運んできた時、ふと彼の視線が姉に止まった。

 まるで何か気になるような、そんな目だった。

「なんか、店員さんこっち見てなかった?」

「いちいち気にしないの。あんたが可愛いからよ」

 姉は軽く笑って言った。

 こういうのも姉の素敵なところ。

 カフェを出て街を歩きながら、私たちはまたウインドウショッピングを楽しんだ。

 姉があれこれと私に服を勧めてくるのが嬉しい。

 彼女の言葉に応えて、私は楽しそうに頷く。

「このジャケット、すごく似合うよ。試してみたら?」

 姉の言葉に、私は賛成した。

 彼女が私のことを褒めてくれるのは、とても嬉しいことだから。


 陽が沈む頃、私たちはたくさんの服を抱えて家に戻った。

 姉がバスルームに入って髪を整え始める。

 私は彼女をじっと見つめていた。

 鏡の前で髪をとかしながら、姉は自分の顔をじっと見ている。



 鏡に映る姉の右頬に――「人面瘡」である私の顔が、くっきりと浮かんでいた。

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姉妹 成阿 悟 @Naria_Satoru

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