第73話 マフラー

11月に入り、少し寒くなってきた。


「はあ……」


屋内のなんと温かいことか。私は冷えた手で靴箱を開け、靴を履き替える。


「筒井さん、おはよう」


振り返ると、山越くんが青いマフラーを巻いて立っていた。


「おはよう、山越くん。寒いね」

「うん。なんか一気に寒くなった気がするよ」

「でもマフラーは少し早くない?」

「うん。でも父さんが巻いていけって。似合うからって」


似合うから。マフラーってそういうものだっけ。似合うから巻くものだっけ。多分違うと思う。


「荷物になるから僕は気が乗らなかったんだけどね……」


とは言いつつも巻いてくる山越くん。親と仲がいいんだね。


「中学の時は森浦と2人で一つのマフラーを巻いてたよ」

「へえ……」


山越くんと森浦くんで?言っちゃ悪いけど、身長差があるからすごく歩きにくい気がする……。


「またやりたいな」

「いいと思う」

「だよね」


私も誰かと一緒にやりたいな。誰かマフラー巻いて学校来ないかな……。

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となりの山越くん 茨 如恵留 @noel_0625

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