あてのない忍者

(5600字の短編) 私には。何代も続く(忍者)の末裔の彼がいた。密かな伝承は…彼には重荷だったのかもしれない。彼のターゲッ トは…私の父。私は。それを知らず…彼の子を産んだ。その父も半年後に他界し。彼の主君(リーダー)も…同時期に亡くなった。遺言も指令も残さずに。主君亡き忍者は。身を隠し…静かに生きるのがオキテ。でも彼は。曲がった信念のまま(忍び)として動き…私の母を落としてしまう。(人だまし)が…やめられない。人をまどわすのが…快感でしょうがない。ただ…それだけで…裏を生きる彼でした。
彼は…弱い人でした。
しばらくして。冷たい風が…乾いた風が吹く頃に。裏通りの場末の店で。背を丸め…ヒジをつき。昔のレコードから流れるバンドネオン…タンゴを聴き…酔っていた。あてのない。落ちぶれた(忍び)が…続きを読む