祠を壊してしまったかもしれない

いぬきつねこ

祠を壊してしまったかもしれない

「お前あの祠を壊したんか」

 ある日の深夜にXに投稿されたのは、それだけの短い文だった。むしろ人目を引いたのは、添付された写真だっただろう。

 どこかの山の中、木漏れ日の下に佇む祠があった。半壊していた。屋根は傾ぎ、扉は半ば外れている。自然に朽ちたわけではなく、人の手が入ったことがわかるような崩れ方だった。扉には靴跡もついている。投稿者のアイコンは初期設定のシルエットで、名前は「あああ」。これ以外の投稿はない。


「これってなんだと思う?」


 梓が尋ねると、マサキにいちゃんは「あんまり見ないほうがいいよ」と言って、再びスマートホンの画面に目を落とした。忙しなく指が動く。画面の中で、色とりどりの衣装のキャラクターが敵に向かって斬り込んでいく。たしか、神様とか英雄とかを集めて戦わせるゲームだ。戦局が悪いのか、柾は舌打ちして独り言をつぶやいている。

「クソ。バフかけて一気に押すか」

 耳聡くそれを聞いていた母親が眉をひそめる。


「柾、クソとか言うのやめなさい。梓もいつまでもスマホいじってないで。何回夕飯だよって言えば気が済むの」


 「はぁい」と梓と柾は声を合わせて母親に返事した。そろそろ母親の怒りの導火線が短くなってくるのが声からわかった。いそいそと二人して箸や皿をを並べにかかった。

 夕飯はコロッケ、筑前煮、わかめとカニカマの酢の物。汁物はわかめと豆腐の味噌汁。酢の物に使ったものの残りらしく、わかめの量は少なめだった。柾はキュウリが嫌いだから抜いてある。

 皿を並べ終わったところで父が帰ってきた。食卓はできるだけ4人で囲むのが家の決まりで、時には煩わしくはあるけれど、梓はそんなに団欒が嫌いではない。


「ねえ、お父さん。祠ってなんなの?神社と違うの?」


 柾にいちゃんが「またかよ」という目で梓を見た。無視する。知りたいものは知りたい。これは切実な問題だった。

 父はうーんと唸って、それでも懸命に娘の疑問に答えようとしてくれた。


「お父さんもその辺はあんまり詳しくないからなあ。規模の違いじゃないか?大きいのが神社で、小さいのが祠。いや、社ってのもあるか……」


「神様の違いだよ」


 急に柾が話に割り込んだ。

 高校生になったくらいから、少し口数が少なくなって、ごちそうさまと同時に自室に戻ってしまう彼が会話に積極的に参加するのは珍しかった。


「神社は名前のある神様を祀るところで、祠は名前のない神様を祀る。名前がある神様が生まれる前から日本にいた古い神様を祀るのが祠だ」


「名前がある神様って、古事記とか日本書紀とかに載ってるやつか。国津神とか天津神とかいうんだったか?」


 父が持っていた椀をテーブルに置いて、息子の話を聞く体勢になる。


「そう。そういうの広がったのは、少なくとも奈良時代くらいだろ?その前から日本にはもっとたくさん神様がいたんだって。そういうのを祀るのが祠」


 柾は澄ました顔で言い終わるとコロッケを平らげにかかった。


「柾、どこでそんなこと知ったんだ」


 父が尋ねるのに素っ気なく、「別に」と返し、柾は味噌汁を啜る。


「あれはどうなのかしらね」


 首を傾げたのは母だ。


「あれ?」


 梓も首を傾げる。母は思い出すように上を見つめながら、えーっと、えーっとねえ、たしか三丁目の……と空に地図を描くように指を動かした。


「お狐さんの祠。三丁目の水神社の中にある祠には、ここには宇迦之御魂うかのみたまを祀ってますって書いてあるじゃない。名前がある神様でしょ?」


「柾にいちゃん、どうなの?」


 梓が水を向けると、柾の肩が震えた。


「知らねえよ。そういうのもあんじゃないの」


 柾は不機嫌そうに答えたが、耳が赤い。

 席を立ってしまわない辺り、怒ってはいないのだろう。いまいち掴みどころのない兄の意外な一面を見たようだ。

 なんだ、柾にいちゃん意外と知ったかぶるんだ。ちょっと可愛いじゃん。


「ごちそうさま」


 食器を流しに出した柾がダイニングを出ていくのを梓は追いかけた。


「柾にいちゃん!」


「なんだよ。また祠の話か?」


 梓は頷いた。


「しつこいな。もういいだろ」


 柾は梓を置いて階段を上がろうとする。


「お願い!」


 3年生くらいまでは、こうして柾の後ろばかりついて行っていた気がする。柾は梓がいじめられると、すぐに助けてくれた。迷子になった時も最初に見つけてくれたのは柾だった。


 だから、こういう時にもきっと助けてくれる。


――助けてくれるだろうか?


さすがに、これは柾にもどうしようもないのではないか。不安がが心を掠めて、ずっと我慢していた涙があっという間に目の縁に溜まってくる。止める間もなくこぼれた。何気ない風を装っていた分、もう止まらない。


「まさきにいちゃぁん……」


 服の袖でで目を擦って耐える。どんどん袖口が湿る。


「うわ、梓泣いてんの?なんだ、いじめられたのか?」


 慌てて階段を降りてくる柾は、大学生になってもやっぱり優しい。


「どうしたんだよ、母さんたち呼ぶか?」


 梓は首を振った。


「お母さんとお父さんには言いたくない」


 また涙がぼろぼろ落ちて、鼻水も垂れてくる。


「わかったよ」


 柾は少し考えて、「オレの部屋行こう。梓の部屋はリビングの真上だから、声が響くかもしれないし」


 柾がぎこちなく伸ばした手を梓は握った。

 久しぶりだ。前よりずっと大きくなって、ずっと骨ばった指だった。


 それだけで、少し安心した。



 柾の部屋は散らかっていた。知らない人の部屋みたいだ。窓際のスタンドにエレキギターが立てかけられている。小学生の時から使っている勉強机は、今はパソコンデスクになっていたが、その上もテキストやら漫画やらタブレットやらがごちゃごちゃ置かれ、勉強ところではなさそうだ。

 壁に、家族でハイキングに行った時の写真が押しピンで留めてあることに、なぜだか梓はホッとした。海が見える展望台で、梓と柾がカメラを向いて笑っている。まだ梓は小学生で、柾は中学に上がったばかりだった。


「シーツ変えたばっかだから汚くねえよ」


 柾はベッドの上の洗濯物を床に置くと座るように梓に目で示す。

 梓はベッドに腰を下ろした。

 ポケットから、買ってもらったばかりのスマートホンを取り出す。中学受験の合格のお祝いに買ってもらったスマートホンは、かわいいピンクのケースに包まれて、肩からかけられるように長いネックストラップもつけてある。

 まだ慣れない画面を指で操作し、Xを開いた。ブックマークしていた投稿を画面に呼び出すと、梓は画面を見ないようにして柾に向け、口を開いた。


「柾にいちゃん、わたし、祠を壊しちゃったかもしれない……」


「は?」


 学習椅子に腰掛けた柾が怪訝な声を出した。しかしまた梓が泣き始めたのを見て、すぐに顔を引き締める。


「これを梓が壊したのか?」


 画面の中の、半壊した祠を柾が指差す。

 梓は半分頷いて、そして勢いよく首を振った。 


「壊してない!わたしこんな山に行ったことない!わたしじゃない!でも……でも……だんだんそうじゃないかって……思えてきてえ……見え……見えるの……」


 梓は身を縮めた。見えてしまったのだ。

 キャンパスノートが散らばった床の上、空になったフリスクのケースが放りだしてあるそのすぐ横に祠が。祠がある。あるわけがない。家の中に祠なんてあるわけないのに。

 半分壊れて扉がひしゃげ、その扉を枯れ木のような指が中から開けようとしている。


「いやっ!そこ!そこにいる!」


 ベッドの上で必死で後ずさって、背中が壁に当たる。


「落ち着け。いつから見えてる?」


 柾が否定をしなかったから、それ以上取り乱さないで済んだ。梓は体育座りで縮こまり、膝にぴたりと額を押しつけた。そのまま話す。


「学校で、ユカちゃんとミオナちゃんに変な投稿があるって教えてもらって、放課後見たの。多分3日前……」 


「3日前から見えるようになったんだな?」


「うん……。最初は見間違いかと思ったの。でも、違った。電車でも、学校でも、通学路にも、気がつくとあるの。あれはわたしが壊した祠だから、だから……だから……罰があたったんだと思う……。もう、終わり……」


 閉じた瞼の裏にも、祠が見える。

 わたしが壊した。わたしが蹴って、私が金槌で叩いて壊した。壊した。壊した。わたしが壊した。


 壊したから、怖いモノが出てくる。出てきてわたしを食べてしまう。


「しっかりしろ!」


 柾が梓の肩をつかんだ。


「大丈夫だ!梓は祠を壊してない。壊してないから呪われない。こんなのはただの暗示だ!」


 スマートホンはいつしか柾の手の中にあった。

 ホログラム加工されたネックストラップがゆっくりと揺れている。


 画面には、あの祠の画像。


「いやっ!」


 梓は目を逸らそうとした。

 しかし柾の手が両側から頭を優しく掴んだ。


「これは写真じゃない。AIが作った画像だよ。見ろ。日本にはこんな形の草はない。それにここに写ってる木の形も変だ」


 柾が画像を拡大し、指差した。

 確かに、言われてみれば森の木々はこんなに揃って生えていない。


「中学受験で疲れてたんだろ。最後の方睡眠削って頑張ってたの知ってるよ。睡眠足りなくなったり、長い時間緊張状態に晒されると暗示にかかりやすくなる。わかるか?暗示っていうのは、本当はそうじゃないのに、そう思わせることだ。初めての学校で緊張もしてたんだろう。特に中1ってのは多感な時期だからさ、暗示にかかりやすいんだ。そういう人を無作為に狙ってたちの悪いものをばら撒く悪いやつがいるんだ。ほら、もう何もない」


 柾の手は暖かい。

 促されるまま見た部屋の中は散らかっているだけで、祠はどこにもなかった。


「まさきにいちゃぁん……」


 梓は柾の胸の中でわんわん泣いた。


「あーもー、本当によく泣く妹だよ」


 柾は呆れながらも、泣き止むまで付き合ってくれた。

 やがて涙も出なくなって、梓は鼻をすすりながら柾に訊く。

「暗示のこと、どうしてわかったの?」


「ゲームで見たことある」


 柾は耳を赤くして早口に言った。

「祠と神社の違いもそのゲームで知った」


「なんだあ!結局知ったかぶりじゃん!」


 泣きながら梓は笑う。


「暗示が解けたならよかっただろ。もし梓の友達も祠を見るようなら暗示だって教えてやれよ」


 くしゃりと一度頭を撫で、柾は梓を立たせた。


「ほら、もう自分の部屋帰れ」


 梓は頷いて、兄の部屋を出る。

 祠はどこにも見えなかった。




 それからひと月、5月になって風はすっかり爽やかになった。梓も学校に慣れて、毎日忙しくも楽しくしている。

 あのあと、やっぱり何人か祠を見る生徒が現れて、学校は大騒ぎだった。学校に来れなくなる子も出た。学校にカウンセラーの先生がたくさん来て、祠を見た子と話をしていた。

 でも、やがてそれらは終息し、あの変なアカウントもXから消えてしまった。


「全部、作り物だったんだね」


 バス停でユカちゃんと別れて、梓は家までの道を歩く。

 夕焼けが赤く空を染めていた。影が黒く長く伸びている。町並みは沈んで、影絵へと変わる。

 影が伸びた先、閉店して久しい煙草屋と民家の間を通る細い路地に目をやった梓はハッとして足を止めた。


 祠があった。


 屋根はひしゃげ、扉も傾いて、取れかけている。

 誰かが壊したのだ。


 ちがう。わたしが壊した。

 遊び半分に蹴りつけた、うっかり躓いた、事故だった、壊したくて壊した、わたしが壊した。


 何かの声がした。


「お前が壊した」


 ぎぃぃぃぃぃ


 木の扉が軋む。

 カサカサに乾いた、水気のない腕が伸びて、ずるりとそれが出てくる。


「暗示にかかってるだけ。暗示にかかってるだけ……」


 梓は震える唇で繰り返す。柾兄ちゃんが言ったのだ。だから、こんなのは嘘だ。


 こんなに、顔が抉れていて、そこから今も血が滴っていて、その血がわたしのカーディガンを汚している。腕だけで這って、わたしの体にのしかかるこれは、ただの暗示の産物だ。

 ヒィと喉が鳴る。


「お前が壊した。お前が私を外に出した」


 生臭い息が梓の顔にかかる。それは抉れて陥没した顔を梓に近づけた。のしかかる体の重みが迫ってくる。それの腰から下は、臓物の色だ。剥き出しの粘膜が肉色にてらてら光る。足はない。舌のような肉の塊が、湿った感触を肌に残す。


 抉れた顔の中に、ぷつぷつと白いものが現れ始めた。歯だ。乳歯も、大人の歯もある。大小さまざまな歯が、びっしりと空間を埋めている。


――あの歯で、わたしの顔をそぎ取るんだ。


 分かってしまった。

 涙が、頬を伝った。


「わたしが祠を壊したから……?」


 そうだよ、と神様は言った。

 お前が祠を壊したから外に出た。

 祠を壊したお前は生贄になった。


 無数の歯が近づく。


 助けて、たすけて……柾にいちゃん……。




「梓、おい梓。なんでこんなとこで寝てるんだ」


 肩を叩かれて、梓は目を開けた。

 辺りは暗い。なにか、とても怖いことがあった気がする。辺りはすっかり闇に沈んていた。

 梓は、煙草屋の前の朽ちかけたベンチに座って居眠りしていたらしい。

 柾にいちゃんが、心底呆れた顔で見下ろしていた。背中に、ギターが入っている大きな鞄を背負っていた。


「変質者に襲われるぞ」


「何でこんなとこにいるんだろ……」


「マジかよ。しっかりしてくれ」


「疲れてたのかな……」


 梓はスカートの埃を払って立ち上がる。

 とたんに寒さを感じて身震いした。


「あれ、わたし上着着てこなかったっけ」


「今朝遅刻しそうになって走ってっただろ。着てなかったと思うけど」


「そうだっけ?」


 梓は思い出そうとしたが、柾がもう歩き始めていたのでその後ろを追った。

 ぱきん。何かを踏み抜いて割れる音がしたが、梓は気が付かない。

 砕けた子どもの歯が、道に残されている。


「早く帰るぞ。今日は麻婆豆腐だってさっき母さんからラインあった」


「やった!わたし麻婆豆腐好き!」


 駆け足で柾に並ぶ。柾の服に白い綿くずのようなものがついているのに気がついた。動物の毛だ。


「柾にいちゃん、犬でも触ってきたの?」


「うん。大学の近くにでかい犬飼ってる家があって、そこの犬散歩させるバイトしてきた」


「えー、いいなあ。わたしも犬飼いたい」


「気が付かないんだね」


「え?」


「何も言ってないけど」


 柾はわずかに首を傾げた。

 もう夕焼けは少しも残っていない。

 道端の街灯が明かりを灯し始めた。

 地面に影がひとつしかないことに、梓は気が付かない。


 ――馬鹿だな。暗示っていうのはこうやるんだよ。


 柾はわずかに口元を歪ませた。




「ただいま〜」

「おかえり。制服が皺になるから、着替えてからご飯にしてね。柾は手を洗ったらお皿並べて」

 ええー、少しくらいゆっくりさせてよ。文句を言いながらも柾は洗面所からすぐに出てくると台所に向かっていった。

 梓は自分の部屋に向かう。

 鞄を置き、制服をハンガーに掛けた時、コルクボードに止めてあった写真がひらりと落ちた。


「柾にいちゃんもこれ、飾ってた。この時の旅行、楽しかったもんね」


 写真の中では、海が見える展望台で、梓だけがカメラに向かって微笑んでいる。





 梓。ねえ。梓。

 あんな下等なやつにお前を食わせたりしないよ。

 テーブルに皿を並べながら、彼はわずかに微笑んだ。


「なに、ニヤニヤしちゃって。彼女でもできた?」


 母が目敏く見つけて指摘してくる。


「手のかかる妹で精一杯」

 

彼は素っ気なく答える。


「あんたたちは昔から仲いいわねえ。ケンカしたことなんてないんじゃない?――なんだか変な匂いがしない?」


 母親の話題はころころと移り変わる。


「そうかな?窓開けたら?」


 言いながら窓を開け、玄関に置きっぱなしのギターバッグをどうしようかと柾は思案した。

 早いところ、あれの残りを食っちまわないと。

思ったよりも梓が気がつくのが早かった。まだ半分ほど食い損ねてしまっている。

 丸めて突っ込んだ梓のカーディガンもどこかに捨てなければならない。

 軽い足音を立てて、梓が2階から降りてくる。

 父親の車がガレージに止まる音もした。


「なあ、梓。あの祠の画像の噂、新しいのがあるの知ってるか?」


「そうなの?」


 梓はサラダのゆで卵をつまみ食いしてからこちらを向いた。つまみ食いの癖は子どもの頃から変わらない。かわいい、俺の梓。


「あの画像を作ったのは忘れられた神様で、みんなが自分のことを認識するようにネットに流したんだって。そして暗示にかかった奴だけを狙うんだ」


「神様がスマホを使うってこと?あはは、さすがにそれはない!」


「令和だからね。神様だってスマホくらい使うさ」


「柾は時々変なこと言うなあ。昔からこうなんだから」


 食卓についた父親が笑う。

 絵に描いたような団欒の席、蛍光灯に照らされても柾の影だけがない。誰も気が付かない。この家の構造上、柾の部屋が存在するわけがないことも、誰も気が付かない。




 柾と名乗っている彼にとって、ほんの少し前のことだ。

 彼の社は朽ち果てて、誰からも忘れられていた。壊されるまでもなく祠は倒れ、土台だけが風雨に晒されるままになっていた。公園の植え込みの陰。今や誰からも気づかれない。

 あの子はそこに毎日花を持ってきてくれた。

 たんぽぽ。すみれ。ガーベラ。つつじ。

 幼子の目は彼を映し、「わんわん」と舌足らずに呼んだ。小さな信仰は、彼を虜にした。


彼女に尋ねる。


 ――きみの願いは何?


「あのね、あずさね。おにいちゃんがほしいの。アイリちゃんのおにいちゃんはすっごくやさしくてかっこいいの。あずさも、おにいちゃんがほしいなあ」


 その日から、彼は梓の兄になった。

 兄として妹を守る。永遠に。誰にもは触らせない。ずっとそばにいる。

 ああいう小賢しいモノに、梓を食わせるものか。

 未だに舌にこびりつく、古い神の血の味を反芻し、柾は食事を口に運んだ。


「なあ、梓。もしかしたら家も祠みたいなものかもしれないね」



 完

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祠を壊してしまったかもしれない いぬきつねこ @tunekoinuki

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