第6話 変化

六日目の夜中、卵は現れなかった。……ついに俺は卵地獄から脱却する事が出来た。もう、あの訳の解らない現象に悩まされる心配は無い訳だ。


俺は思った。ネットに記事が載っているという事は、俺の他にもこの現象に悩まされている人間がいるという事だ。

今回の出来事を機に、 俺は生き方を変えた。今までだったら顔も知らない他人がどうなろうと知った事じゃ無かったが、今は違う。特にあの卵地獄を実際に味わった身としては、をなんとしても救済したいという欲求に駆られた。


その為、俺は卵地獄から抜け出す方法をブログにまとめ、そのURLをSNSで紹介し拡散を呼びかけた。そして、その情報はものすごい勢いで国内だけでなく世界中に拡散された。まるであの卵のように。いや、それ以上のスピードで。


※ ※ ※


あれから一年が経ち……いつの間にか、世の中は変わった。


一時、卵の増殖は国内だけでなく、世界中に拡がり2019年の新型コロナのパンデミック以来の深刻な大問題となっていた。

その時、その解決策として俺の書いたブログが取り上げられ世界のいたるところで実践された。今では『怒らない品行方正な人種』が世界のトレンドとなりつつある。



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闇バイト実行役、指示役、共に揃って次々と自首!


SNSの誹謗中傷、今年は殆んど皆無にまで減少!


今月、全国で煽り運転ゼロを記録!


ワクライナ戦争、ついに終結!

『もう卵なんて見たくもない!』(R国、パーチン大統領…談)


アスラエル〜ポレスチナ間、停戦和平協議に合意!










2026年ノーベル平和賞に日本人の沢村孝之氏が受賞!


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ノーベル平和賞の報償金で買ったマンションのバルコニーから、晴れ渡った雲一つ無い青空を眺めながら俺は思った。


人間の攻撃的な意識が卵の増殖に深く関わっている事は判ったが、どうして何も無い所から卵が湧いて出てきたのだろう?


その事に関しては合理的な説明はなにも出来ていない。この空のもっと上の方に神様がいて、イタズラでもしていたんだろうか? 空を見上げながら、俺は ぼんやりとそんな事を考えていた。



※ ※ ※











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ーーここは天空の神様の館ーー


この神様の館の一室で、二人の神様が椅子に座って、こんな話をしていた。


「ペイパーよ。この度はご苦労であった。しかし、お前も妙な事を考えたな……どうして卵なんだ? 」


「ゼウス様。お誉めに預り大変恐縮に存じます!

いやぁ〜色々実験してみたんですが、地味だけど何気にんですよね〜♪ 」


神様にも色々な種類の神様がいる。何千年にも渡り何度も戦争を繰り返す愚かな人間にすっかり愛想を尽かせてしまったゼウスは、今度もまた人間達が戦争を止めないようなら、いっそのこと天変地異を起こして人類を滅亡させてしまおうと考えていた。


それに待ったを掛けたのが神様のなかでは最年少の今年神様になったばかりの新人、『ペイパー』だった。


「ゼウス様、ちょっとお待ち下さい。天変地異の前に私に少しだけチャンスを下さい。私ならば、人間に戦争の無い世界を営むように上手く誘導する事が出来ます。」


「ペイパーとか言ったか。しかしなあ、あの人間達は一筋縄にはいかんぞ。もう何度も試してみたが、一向に平和にはならん。

奴らには、学習能力というものが無いのではないのかのう……」


「それならば、私に最後のチャンスを下さい。もし今度も彼らが戦争を止めないようであれば、その時はゼウス様のお好きなように天変地異でもなんでもなさって下さい」


「お前がそこまで言うのなら、一度だけチャンスをやろう。しかし一度だけじゃ、二度は無いからな」


「御意」


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※ ※ ※


再び、沢村のマンション……



「あ〜あ、もうこんな時間か。なんか腹減ってきたな〜昼飯は近所のカフェででも食べようかな〜! 」


FIN

◆『増殖する卵』を最後まで読んで下さって本当にありがとうございました!この作品はカクヨムコン10短編部門の応募作品です。気に入ってもらえたら♥️、☆レビュー、作品フォローなどで応援していただければ嬉しいです。

よろしくお願いします!

〜夏目漱一郎〜


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【カクコン10短編】増殖する卵 夏目 漱一郎 @minoru_3930

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