ジャングル・キングダム

あのね!

第1話 アザーン少年


  

 アフリカの壮大なジャングルで赤々と燃える夕日を眺める一人の少年アザーン。だが、その顔はライオンのたてがみに覆われ顔は人間そのもので、体はライオンの毛で覆われ2本足で立っている。


 一見ライオンのようでもあり、人間のようでもある。だから、心ない動物たちの中にはとんでもない噂をするものもいる。


「アザーンは我らが最も恐れる野蛮な人間と、我々『テルース王国』の王に君臨してきたライオンの間に出来た子供では?」このような噂をする者まで現れた。


 だから、ライオンとは一線を画すライオン人間のような風貌であった。


 長い間『テルース王国』のライオンが王国を支配していたが、ある時どこで調べたのか、物珍しい絶滅危惧種恐竜がいたのに目を付けられて、とんでもない計画を立てた人間たちが我が物顔でこのジャングルに攻め入って、ジュラシックパークならぬサファリーパークを作ろうと画策した。


 こうして開発が始まろうとした。それと言うことは不必要な動物たちはこの地から追い払われるか、多くが処分される事になった。そこで怒り狂ったアザーン少年が人間と話を付けた。

 

 結果…いくら長老のライオンでも頼りにならないと言うことで、急遽アザーンがこの王国の王様に任命された。それでもいくら何でも浅はか過ぎではないか?


 こんな……まだ年端もいかない16歳の少年を……。



 ☆★


「ピュ―――――ッ!ピュ―――――ッ!ピュ―――――ッ!」

 壮大な緑あふれるジャングルの断崖絶壁に立ち指笛を吹き仲間を集めている。


 すると一斉にアフリカの広大なジャングルに先ずはライオンに象にキリン、シマウマ、ヌー他色んな動物たちが集まってきた。


「今日みんなを呼んだのは他でもない、実はこのジャングルの象を撃ち殺して象牙を盗もうと十数頭の象が撃ち殺され象の牙を切り取って逃げた不届き者がいる」


 ※印鑑や置物、アクセサリーなどに用いられる「象牙(ぞうげ)」。

象牙とは象の口から出た、長い2本の牙のこと。この象牙のために、アフリカゾウが殺されている。


 動物たちの王国、広大なジャングルの大地『テルース王国』。その王として君臨する少年16歳のアザーン。


 それでは何故若干16歳の少年アザーンが、王に祭り上げられたのかという事だが、前述した通りライオンにはない優れた知能が備わっていたからだが、更には強靭な肉体を持ち二足歩行で、顔は人間の顔という出で立ちの男子だ。


 2歳のときに虐待する両親から鉄格子に入れられこのジャングルに捨てられ、それ以来ライオンの群れと、開けた森とやぶ、低木あるいは草の茂みが混じった環境で生活をしている。


 

 ★☆

 それでも、アザーンは子供の頃から自分はライオンの子供だと思って疑わなかった。過去にはこのジャングルの王様はライオンが代々王様に君臨して来た。だから自分が王様に祭り上げられたのは、自分はライオンだからだと信じて疑わなかった。


 だが、ある時同年代のライオンのお友達シンバに言われた。


「お前自分をライオンだと思っているが、ライオンとは似ても似つかない。よくこのジャングルにやって来て密猟する人間に似ている。ひょっとして人間が送り込んだスパイじゃないか?」


 アザーンは自分はジャングルで生活してライオンの言葉を話し、自分はライオンだと思ってずっと生きて来た。それなのに友達のシンバにこのような言葉を吐かれてショックで仕方がない。


 そこでアザーンを育ててくれたこのジャングルの長老ハムダーンに自分の生い立ちを聞いて見た。


「嗚呼…実はお前は2歳の時に虐待する両親から鉄格子に入れられこのジャングルに捨てられたのだと言ったが、実はお前の生みの親、源五郎丸(げんごろうまる)博士は密猟ハンターに殺された。その理由は自由に密猟が出来なくなるからじゃ。このジャングルは希少価値の高い動物の宝庫じゃ。だから…いろんな輩がやって来て密猟が後を絶たない。そこで博士がアザーンと名づけ「アフリカへ渡り、荒れ果てたジャングルを救う王になりなさい」と言いきかせて船で連れて来たのじゃ。お前は……お前は……源五郎丸博士が開発した人型ロボットだったのじゃ。悪い人間たちを成敗して、このジャングルの王様になるために作られたのじゃ」



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