第4話 空中探索
サバンナの空を燃え尽くすほどの巨大な夕日は、圧巻の美しさだ。
アザーンは雄大なサバンナを掛ける群れ1500k㎡の広さを持つ、ケニアでも最も動物の生息数が多いサバンナの象、バッファロー、サイ、ライオン、ヒョウのすべてや、群れをなすキリンが生息している姿を見て、何故自分だけ異質の存在なのか、寂しい思いで仲間を断崖絶壁から見ている。
(俺は源五郎丸博士に人工的に作られたロボットだ。だから家族は勿論のこと同じ仲間は誰もいない、俺にだって群れを成す同種の仲間が欲しい。他の動物たちには分からないロボット同士の悩み事を相談する仲間が……)
するとそこに先日助けた美少女サナアがやって来た。
「どうしたんだい?こんなところまでやって来るのは人間の力では至難の業。どんな方法でやって来たのさ?」
「ふっふっふっ……それは……秘密……ふっふっふっ」
それはそうなのだ。切り立った断崖絶壁にやって来るには、いくつもの大小の岩を飛び越えてこなくては来れない危険な場所にあった。
「あの密猟者の男は父親なんかじゃありません。親子のふりをした密猟者です。って言っていたけど一体どういう事?あの男と出会ったきっかけを教えてよ?」
「私は養護施設で育ちました。そして6歳から訓練を受けた忍者です。忍者には、情報収集や暗殺、破壊工作などさまざまな仕事がありますが、中でも最も重要とされるのが、敵の陣地に忍び込み敵方の状況などの情報を収集してボスにその情報を伝えることです。これは忍者が担った最も重要な役割だといわれています。そうです。私はスパイとして養父に引き取られたのです。さまざまな忍術が駆使されました。例えば遁術(とんじゅつ)という術があります。遁術というのは敵から逃げたり隠れたりするための忍術です。それから……水遁の術なら水の中を泳ぐ、潜って身を隠す、逃げている最中に重たい石などを投げ水に飛び込んだと思わせるなどを使っていました。火遁の術なら藁や薪に火をつけ放火する、火薬を使うなど火を用いて敵の注意をそらします。また、僧や曲芸師、農民などに変装して敵陣に忍び込む技術や、盗聴して情報を得たりすることも忍術のひとつです。その他にも呪術や幻術などを用いたり、薬学などにも精通しています。私は親に捨てられ施設で生活していました。だが、ある時養子縁組の夫婦が表れてその男の祖父母の家で訓練されたのです。スパイとして……」
「スパイの目的は何だったのですか?」
「私の養父は山城組の組長です。あの密猟者は養父の子分です。誰にも怪しまれないように、それから密猟の手伝いをするために養父に送り込まれたのです。そして……ザリは私専属の女中です。養父がまだ、14歳の少女では身の回りの世話が必要だと言って一緒に行動させているのです。私はある日、祖父母のもとに送り込まれ6歳頃から尾張に伝わった系統の甲賀流忍術を学びました。その時にザリが私に付いて来たのです。私はスパイ訓練を受ける忍者として敵の情報を掴むために養父の父親のもとに預けられたのです。祖父は、甲賀流忍術の武術家、忍術研究家兼業農家を祖母と一緒にしており、私はそこで訓練を受けながら成長しました」
「そうだったんだね!でも……こんな動物王国にいても危険が一杯だし、やはり養父母の元に戻るかい?」
「私はあんな悪い事をして金儲けをする手伝いなんか絶対にしたくありません。養父母のもとに帰ったらまた汚い仕事に手を染めなければいけません。絶対にイヤです」
「道理で忍者だから軽々とこんな断崖絶壁まで来れたんだね」
「まあここに来るのは容易い事よ」
「僕はこの断崖絶壁からこの動物王国の問題点を探し出す為に、ここに立って様子をうかがっているんだよ。僕は聴力を2000倍に強化することができ、遠くの音や小さな音も聞き逃さないんだ。争いがあれば直ぐに見逃すことなく聞き取れるんだ」
「ねえ私もこの動物王国でいつまでも争いのない、動物王国のお手伝いをさせてくれない?」
「本当に?嬉しいよ!」
そう言うと、背中に装着されるワシの翼のようなもので、強力なジェットエンジンを搭載しているアザーンは、美少女サナアに言った。
「今から空中探索に出掛けるが君も行くかい?」
「わあい……行きたい!行きたい!」
アザーンは叫んだ。「フラインザスカイ!」
するとカシャーンカシャーンと音を立て勇敢なワシのような翼が、アザーンの背中から這い出して来た。
「さあさあ乗って!乗って!」
「よーし空中探索に出かけよう。空中を自由自在に飛行し、王国を乱す悪い奴がいないか見て行こう」
「わあ――❕気持ちいい」
「象の群れが見えて来たね」
サバンナを見渡すかのようにそびえ立つ、白い雄大な山タンザニアのシンボルとなっているキリマンジャロをバックに、象の群れがゆったりと歩く姿は非常に絵になる。
「キャ――――❕空から見ると迫力があるわね」
他にもシマウマの群れにも遭遇、やがて……ヌーが群れを作り徒党を組んで大移動。
湖面に目をやると、カバや鳥類など水辺の生き物を見つけることができた。静寂の中で営む動物たちの姿はゆったりとした心持ちにさせてくれる。
2人は空から王国の風景を目に焼き付けながら実に楽しそうだ。
*🎵*🎶
🎵ア――――ア――――――――ア――――🎶
♫真っ赤な夕日 果てしなき大地
勇ましいたてがみ!そう我らの獅子♪
♬どこまでも広がる サバイバル荒野
おうおう! 勇敢に駆け抜ける孤高のワシ♪
♫それは……それは……一匹オオカミ我らの王アザーンと同じ
今日も空中探検 王国を守り抜くアザーン♪
♬星になった偉大な王たち 平和の鐘が……
🎵ウワーオ ワーオワーオ ワオワー
ウワーオ ワーオワーオ ワオワー
ワーワワワ ワーオワーオ ワオワー
オワオワー♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます