第3話 美少女サナア 



 ある日の事だ。この壮大なサバンナ1500k㎡大阪府とほぼ同じくらいの広さを持つ大地を一台の「ジープ ラングラー」が走り抜けて行った。アザーン少年は断崖絶壁から様子をうかがっていた。


 すると距離にして1kmはあろうというのに、車の窓ガラス越しに美しい少女を発見した。


 このマサイ・マーラ国立保護区は年間多くの観光客が訪れる。だからきっと家族ずれの観光客だろう。そう思ったアザーン。だが、その少女の余りの美しさに王様ともあろう者が、その車にひとっ飛びで追い付いた。


 侍従のチンパンジーラリが追いかけているが、それをも振り払って後を追っている。

 

「王様どこに行かれるのですか――っ?」

 

 実は……アザーンは余りの美しい少女に一瞬で恋をしてしまった。それでも……よく1kmも離れているというのに、ましてやガラス越しに美しい少女だと分かったものだ。


 実は……アザーンは、人間の数百倍の動体視力を持ち、高速で動く対象物や小さな物体も敏捷に捉えることができる。部品の状態が変わったり突発的な何かが起こっても、形を自分の考えで認識する技術を持っているので、物体の変化を認識し柔軟に対応することが出来る高性能の動体視力を持っているので1㎞離れていても瞬時に人物特定できるのだ。


 

 それでも……アザーンはロボットだ。到底感情があるとは思えない不思議な話だ。只のロボットがいかにして覚醒したのか?


 

 ★☆

 源五郎丸博士は幼少の頃から、ちんちくりんのデブで鼻は大きくてまん丸で赤っぱな。更にはぷっくりお腹が飛び出たモテる要素ゼロの子供だった。


 だが、源五郎丸タケシは成績だけは飛びぬけて優秀な坊やだったが、鉄腕アトムのお茶の水博士にそっくりの坊やだったので、あだ名はお茶の水博士。


 この容姿のせいで子供の頃から女の子から見向きもされなかった。それでも……いつも優しくしてくれる近所の2歳上のお姉さんだけは、どんな時も側にいてくれ、お話を聞いてくれて優しかった。


 そこでいつも優しいお姉さんに、ハロウインの日にかぼちゃの衣装で会いに行った。そして…「お菓子貰いに行こうよ」と誘った。

 

 だが、タケシに返って来た言葉が頂けなかった。


「イヤよ。年下のタケシ君じゃ。わあ~でも可愛い!タケシ君かぼちゃみたい」

 まあここまでは許されたのだが、タケシが近所でもらったクッキーを渡して角を曲がった時に何か音がした。


「タケシ君が触ったお菓子なんて要らない。汚い!」聞こえないと思って言ったが聞こえていた。

 

 ”ぐしゃ“ ”ぐしゃ”


 それは角を曲がったのでタケシ君が見ていないと思って踏みつけたのだった。

(あの物言い酷すぎる。それから……僕のあげたお菓子にどんな不満があるんだ。まるでごみでも踏みつけるようにに……)


 唯一優しいお姉ちゃんがこのような始末だから、他の女の子にはもっと酷いゴミ扱いで、全く相手にされなかった。


 この様な理由から自分の果たせなかった女の子から大切にされたい願望が爆発して、16歳の感情がある「完全なロボット」人工知能が目覚めた美少年に創り上げた。



★☆

 ハロウィンはいつから日本に定着したのか? 由来や祝う期間、飾りつけを始める…

ハロウィンに仮装してパーティー等をする理由


「ハロウィン」の発祥の地は、アイルランドやイギリスといわれている。1年を11月1日から10月31日とし、大みそかの10月31日には死んだ人の魂が家族の元へ帰り、さらに悪霊や魔女が町を訪れると信じられていた。


 そのため、当時の人々は悪霊たちが悪さをしないようにと、仮装をしたり、魔除けの焚き火を焚き、悪霊を驚かせて追い払うことを思いついた。やがて、この風習がキリスト教の文化圏にも広がっていった。


 お菓子を配るのは「お菓子をくれないと、いたずらするぞ」という意味。子どもたちはお化けや魔女などに扮装し、お菓子の籠を手にお家を回りお菓子を貰う


しかし、現在では宗教的な意味合いを意識する人は少なくなり、子供たちが精霊やお化けに仮装してお菓子を貰ったり、ホラー映画を楽しんだりするイベントとして多くの国で親しまれている。




 ※古代ケルト、古代ローマ、キリスト教の3つの文化が融合して生まれたとされており、原点はケルト民族(ケルト人は国を持たず、さまざまな民族と接触して交じり合ったためケルト人は国を持たず、さまざまな民族と接触して交じり合ったため、純粋なケルト人による国家は存在していない)の宗教儀式の一つ「サウィン祭」。


 ★☆

 アザーンがその美少女が乗った車を追跡していると、車を危険地帯に乗り捨て降りた中年の男がピストルを構え象目掛けて発砲した。


 ”バ――――ン“ ”バ――――ン“ ”バ――――ン”

 

 だが、象たちが群れを成して少女の父親らしき男を包囲して襲い掛かって行った。


 キーキーキーと吠えながら突進してくる。少女は父が危険だと思い車から出て象の前に出て行った。


 アザーンは少女が殺されると思い一目散で象の前に出て言った。


「お前らその少女に手を出したらただじゃ置かないからな。分かったか!」


「王様ではありませんか?何故このような場所に現れたのですか?俺達は何も人間に手を出すつもりはなかったのです。でも……この男がピストルで仲間を撃ち殺そうとしたので反撃に出ただけです」


「お嬢さん危険じゃありませんか、こんな危険地帯で車から降りるなんて絶対にいけません。あなたのお父さんは密猟者らしいな。おいらの仲間を撃ち殺そうとするなんて……」


「この男は父親なんかじゃありません。親子のふりをした密猟者です。結局家族を装って私たちを同行させた悪人です。私達もその内に売り飛ばされるのです」


「それは許せざる行為。お母さんとお嬢さんはここで降りて下さい。テメーらはさっさと失せろ💢💢💢」


「何だと―!若造のくせして生意気な!」

 そう言うとピストルをぶっ放した。


 ”バ――ン“ ”バ――ン” ”バ――ン”

 アザーンは一瞬で空を飛び、5本の指先から車目掛けてマシンガンを発射して撃退した。


 バンバンバンバンバンバン


「キャ――ッ!タタタ助けてくれ――――――ッ!」


 そういうとその密猟者は一目散に逃げて行った。


「お前たちのこの親子に手を出したら只じゃ済まないからな!」


「ヘイ!分かりました。王様!」

 そういうと象たちは自分のアジトに帰って行った。


「お名前は?」


「サナアといいます」


「お母さんの名前は?」


「ザリです。本当にありがとうございました」

 色々な事情を抱えているこの親子は一体何者なのか?

 それでも……改めて近くでサナアを見てあまりの美しさに、一段と好きになってしまったアザーン。

 




 


















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