第7話 収穫祭


 大豆だけではなく米作りも始めた『テルース王国』。

 その理由は、サバンナを駆け巡る動物たちの腹持ちを良くするために考えられた。よく考えて見れば「猫まんま」という言葉がある事は多くの日本人が知っている言葉。


 ちょうど好都合なことに、米と大豆は10月に収穫の時期を迎えていた。

 ★米が出来るまで。

 米は田んぼに苗を植える →稲を育てる→ 収穫 稲刈り→ 収穫 もみを乾燥させる →精米する

 田植え機を操作するのはライオン 、ハイエナ、マングース、チーター各々が田植え機にまたがって田んぼに苗を植えている。


 やがて…田んぼ一面を彩る黄金色の稲穂の季節が到来。これを「米」として収穫するには、稲を刈取りし、稲穂からもみを削ぎ落とし、もみとそれ以外の「玄米」を選別するという作業が必要だ。 気の遠くなるような作業だが、心配ご無用。これらを一手に引き受けるのがコンバイン。収穫の全てこのコンバインで可能だ。 


 このコンバインを操作するのはライオン とハイエナ各々がコンバインを操作している。だが、畦(あぜ)を超えることが出来なくてよくコンバインを倒している。


 それを起こすのはその他大勢の草食動物の、シマウマ、ヌー、カンガルー、イランドたちだ。

 ゾウ、キリン、カバ ·、サイ達は倉庫で別の重要な仕事があるのでそんな事はやっていられない。


「オイ!何もできない輩だなあ。倒れたからさっさと来て起こせ!💢」


「自分らのミスのくせにあんな重い機械、重くて出来る訳がない!」


「何をモタモタほざいておるか?さっさと来て起こさんかい!このクズドモメガー!💢💢💢」ライオンのボスカシムが怒りを露わにしている。


「チッ!自分のミスのくせして偉そうに!💢怒れちゃうけど……あんな狂暴な奴らに逆らえば生きていけない。行きましょう」


「仕方ないね!」


「そうそう諦めて起こしましょう」

 このような畦(あぜ)に引っ掛けたり、操作ミスで前進しなければいけないのにバックしたりして、ひき殺されそうになった動物たちも大勢いたが、文句を言おうものなら百倍になって返ってくる始末。


「あの~気を付けて下さい😰💦💦」


「ハン💢!てめえらが作業中にそんなところにいるのが悪いんだろうが!気ーつけんとあかんだろうが?オンドリャー💢💢💢」


 このような始末😰💦💦



 こうしていろいろあったが、田んぼの稲はきれいに駆られた。


 ここで大型動物のお出ましだ。ゾウ、キリン、カバ ·、サイ などは収穫した米を袋詰めにして倉庫に運ぶ仕事が任された。1俵の重量は約60キログラムそれを軽々と倉庫に運んでいる。


 こうして米の収穫は見事な連係プレイで終了した。




 一方の初夏に種を植えた大豆がやっと実をつけた。収穫時期は10月初旬から11月初旬頃だ。

 ★大豆が出来るまで。

 畑の水はけ対策をする⇒土作り、畑を整える⇒種の準備をする⇒種をまく⇒畑の間を耕し、土を寄せる⇒ 茎や葉などが枯れ、さやの色も茶色になるまで待ち、収穫する⇒ 枝豆として収穫する⇒大豆として収穫する


 こうして待ちに待った収穫期がやって来た。 


 ライオン、ゾウ、シマウマ、キリン、カバ ·、 フラミンゴ ·、サイ 、マングース 、 イランド 、ハイエナ などが一堂に会して収穫に入った。


 500平方㎞の大地に米、大豆を植えたものだから収穫が大変。空の王者ワシもお手伝い。ワシの強靭な口ばしで次から次へと茶色に枯れた大豆の茎にかみつき引っこ抜いている。


 ライオン 、ハイエナ、マングース、チーターも器用に右手で大豆の茎を引っこ抜いている。

 他の草食動物たちは肉食動物とは出来るだけ距離を置きたい。あれだけ王様アザーンから『テルース王国』の動物を襲ってはいけないと厳しく言われているにも拘らず、一緒に田植えを協力してやってきたが、草食動物に向けられる目が異常だ。目をギラつかせよだれがダラダラ出ているではないか。もう少しのところで食われそうだった。だから肉食動物とは出来るだけ一緒に仕事はしたくない。同じ草食動物と共に働いている。


 同じ草食動物シマウマ、ヌー、カンガルー、イランド達1千頭は10匹に一台電動豆さや殻むき機が与えられ殻むきをしている。


 電動豆さや殻むき機を操作するもの、袋に詰めるもの、リヤカーで倉庫に運ぶものと役割を決めて作業が急ピッチで進められている。


 こうして米と大豆の収穫は終わった。


 ★☆


 いよいよ待ちに待った収穫した食物の披露パーティーが、大きな森の木の下で行われた。

 

 森の中には電飾の青、赤、黄色のつららLEDライトが灯されて華やかで幻想的だ。 


 木目の入った木で作ったテーブルと、木目の入った切り株イスに腰かけた『テルース王国』の動物たちは収穫した料理に只々喜びにあふれている。


 料理を作るのはザリお母さん。ザリお母さんはサナアお嬢様には平身低頭尽くしているが、元来ケニア人なので気性が荒い。


 動物たちもやっと食べ物に有り付けるとあって期待と喜びで一杯だ。

 

 料理を作るのはザリお母さん。次から次へとおにぎりにハンバーグや唐揚げ豆腐が出来上がり、心配された肉食動物の反応だったが、どうだったのだろうか?


 だが、動物たちの反応はすこぶる悪い。


「な~んだよ。このおにぎりとか……不味い!」


 するとザリお母さんが言った。


「私はケニア人だから野菜のシチューを飲んでいたけれど、ジャパニーズは味噌スープとかいう大豆から作った味噌スープが定番らしい。お前らも味噌スープ飲みなさい」


 そう言ったが早いか、その味噌スープをライオンの目の前にドンと置き、おにぎりを味噌スープの中に入れた。


「ライオンのボスでカシムと言ったな。食べてみろ!どうだ?」


「嗚呼……これなら食える」


「ボス本当ですか?肉しか食ったことのない我々がこんな貧相な白い米なんか本当に食えますか?」


「いいから食ってみろ!」


「しゃあない食ってみますぜ!」


”しゃらしゃら“ ”しゃらしゃら”口に駆け込んでいる。

「嗚呼……食えます。食えます」


「じゃ~おいらも」


「おいらもだ」


 今度はライオンのボスカシムが味を占めて、大豆ハンバーグや大豆唐揚げにも挑戦した。


「ああああああ……ああああ……嗚呼……美味しい!美味しい!」


 そう言うと山盛りに盛ってあったハンバーグや唐揚げをぺろりと食べた。


「嗚呼……なくなっちゃう!みんな食べようぜ」


「俺も!」


「私は赤ちゃんが生まれたばかりだから授乳のためにも沢山食べるわね!」


 肉食動物のライオン 、ハイエナ、マングース、チーターたちも舐めて掛かっていたが、猫まんまをたらふく食った上に、大豆ハンバーグと大豆唐揚げで腹一杯になった。


「イヤイヤイヤ……猫まんまの馬力は相当だ。腹一杯なったわ!」


 そういえば猫だって昭和初期の貧乏な時期には、猫まんまといってご飯にみそ汁ぶっかけて食べていたものだ。当然ネコ科動物のライオンやチータなども食べれる筈。


 そして…現在は新米ママたちの手抜き必需品でもある。離乳食をさぼりたい主婦達はこっそりと生後5~6ヶ月の赤ちゃんに、具はミキサーにかけるなり、細かくするなりして猫まんまを食べさせる事があるらしい。


 だが、大豆はイソフラボンたっぷりで具がいっぱい入っていれば最強である。案ずることはない。


 ※大豆アレルギーの赤ちゃんもいるので、大豆は少量の離乳食の豆腐から試しましょう。

 


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