「てか御形くん、心未ちゃんの同期だったんだね」
「あー…確かにいたような…? 同期いっぱいいるし、特に男だから…」
今回文未ちゃんにちょっかい掛けられたのと自分も煽られたので更に心証はマイナスの一途を辿っているらしい。険しい表情で、顔も思い出したくなさそうに一応謎の気遣いを述べている。
「…そういえばその格好。 服買ったんだ、可愛いじゃん」
初めて会った時の印象から、想像以上に純粋無垢なことが判ってきた心未ちゃん。俺の無粋なカマかけにも素直に早速従ってくれて、早い時間から過保護な善クンにでも見せに行ってきたのだろうか。
さて、当の善クンは一体どんな反応をしてくれたのか。お聞かせ願おう。
「……」
「え、心未ちゃん?」
「今それ、嘘でもやめろ。涙、出…」
ぐしゃ、と自覚していないのか言いながら既に目元を拭っているが、
どういうこと?
「大丈夫、似合ってないのわかってるから…。
帰ってソッコー着替えるつもりだったし」
鼻をすすってそれを隠すように俯いている。
え、
え、
え〜〜…?
つまり善はコレに『似合ってない』っつったってこと?
ヤバ〜〜!!? マジで重症じゃん。
こんなん犬が見ても可愛いって解るわ、
「いや可愛いよ。善酔ってたんじゃない?」
「……」
あああ、黙っちゃった。も〜〜何やってんの!? たかが男もいる飲み会に参加した程度で車飛ばすくらい大事なんじゃないの!? 思ったことと真逆のこと言っちゃう病気なわけ!? これじゃ俺がカマかけオカマみたいじゃん!? 俺の所為だけど…やきもちやく方向違うだろ〜〜どうせ妬くなら喜ばせろよ女っ誑しが泣くなぁ!?
表の面は笑っていたが内心大暴れだった。自責の念もある。
「ごめん何回もフォローさせて。そうだ、初対面で寝こけた時家まで送ってもらった礼、まだしてなかったよね」
しおしおの心未ちゃん。自ら話題を変えようと「天野の飲み代も出す?」などと痛々しいにも程がある提案をしていて、思わずその小さな頭に手が伸びそうになった。
「いいって。俺の方こそ何か、ごめんね」
「天野の所為じゃないし、よくない。そういうわけにはいかないのよ、男に借り作りたくないから」
そもそも彼女が頑なに返そうとしているその『借り』だって返すなら善にどうぞ、だ。
あの時迎えに来た善を教えてあげたい。口止めされてなかったら。
…確かに、そう考えると叱るんじゃなくてまず迎えに来る善は本当なのかもな。
テーブル脇にあったナプキンに手を伸ばして、そのまま躊躇なく鼻をかんでいる。だから、本当はもっと、もう少しだけでもそれ、善も本当はめっちゃ可愛いって思ってたよって伝えたかったんだけど俺が言ったところで傷を抉るだけだと思って話題を変えるに加担した。
「…じゃあ、
何で男嫌いになったのか教えてよ」
【過保護】な善は急げない 鳴神ハルコ @nalgamihalco
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