〈五跳〉-完-
夢は見なかった。短いけれど、ただただ深い睡眠だった。目が覚めると、カーテンの隙間からブラジルでの業務を終えた太陽が日本での開店準備を進めていた。夜を這い続けた夜行バスは私の下車するバスターミナルに到着し、ドアを機械的に開ける。
カエルさんはまだ睡眠と踊り続けていた。次の終点まで踊るつもりなのだろう。私はステップの邪魔にならないように静かにバスを降りる。
早朝の外の空気には水分が多く、夜の渋谷とも、深夜のパーキングエリアとも違う味がした。
朝露が太陽の光を浴びてキラキラと健康的に街を彩っている。
カエルさんはまだ降りない。
それで良い。
今はまだ、カエルさんが持っていてくれてる。私の大事なものを、カエルさんが大切に丁寧に梱包して預かっていてくれる。いつかまた、夜行バスで乗り合わせた時に受けた取ろう。
ただひたすらに眠かった。
就活生としての私はまだしばらく終わらない。
でもその現実は、私にとって辛いだけではなくなっていた。
とにかく今は家に帰って眠ろう。ゆっくりとぐっすりと、カエルさんのように。
夜を這う・カエルは眠る 雪 @yuki_librar
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