喫水湖に浮かぶ白い怪異。翻り閾を越える。

ある日のこと。
 鰻を獲る事を生業とした男が一人。
仕掛けた魚籠いっぱいに蠢いている鰻に
相好を崩すが。
       ふと、頭上に目を遣ると。
 白い枯れ木か、
  将又、難破した船の竜骨か。それとも
海から流れ込んで来た 何か の瓦礫か。

今まで全く気にも懸けずに日々の活計を
稼いで来たが。一度、気になると更に気に
なってくる。
        途端に、足元がぐらりと
 揺らぐ。小舟が波に翻弄される。

  今まで全く気にも留めなかったもの。
 見てはいるのに、見ていなかった。
あれは、一体何だったのか。

正体を見ても尚、鰻は魚籠の中。