『言霊』の表裏一体を記す古い日記帳。

側から見れば幸せそうな若い夫婦。
互いに好き合い結婚し、子供も生まれた。
夫はそれなりにキャリアを積み重ね、妻は
将来の為パートで働く。その為の保育園も
無事に確保する事が出来た。

 一見、順調に見える夫婦にも間が差す。
小さな不満と倦怠感が齎す隙間に、

 一冊の古い日記帳が入り込む。


夫の視点から書かれた『表』と妻の視点で
見た『裏』同じ出来事に対して全く違った
捉え方をする、男女の立ち位置、感性。
 そして、今まで幸せそうに見えて来た
彼等夫婦の順調な生活が、ぐにゃりと歪み
憤懣と怨嗟が、その隙間から顔を出して
静かに嗤う。

恐ろしいのは人の想いか。それとも。

この古い日記帳は何処にでもある。そして
いつも必ず決まって『中古品』なのだ。
白紙のページに表裏一体の昏い想いが
記されるのを、今も凝っと待っている。