第2話:悪魔

———ポンポン。


合金製のクソ硬い扉を叩き、劣化していないかを確かめる。もし侵食されていたら、お目当ての内部までダメになっている可能性がある。


まぁ、その時はその時だが……


「いい状態を保ってんなぁ」


なぜ800年前のものが現存しているのか。考えてみてくれ、ただでさえ酸素が薄いのに、ここの空気はずば抜けて少ないんだよ。そりゃ酸化も遅れるってものだ。


しかも外装は世界最強の金属、インコネル合金の膜が貼られている。缶詰にしたら3000年以上持つ密閉性と対酸化性能を持ってるパーフェクトシェルターだ。


「有効活用してやるからな……オラッ!!」


———ギィィィン!!


銃口を持ち、銃底で思いっきり殴りつける。これは市販の装備にインコネルの破片を取り付けたご機嫌な解体チップだ、耐久性が違う!


なぜ叩いているかと言うと、インコネルが貼られているのはあくまで表面だけだからな。ぶっ叩いて弱い金属を露出させた方が100倍早い。


「おっ、出てきたな。じゃあみんな大好きバーナーカッターの出番だ」


フェイスマスクの上からさらに金属マスクを付け、これまた水素を動力源としたハイドロゲンバーナーで焼き切る。


これ、どんどん酸素が減ってくなぁ……と考えたが、この程度の消費は誤差に過ぎないことを計算する。


のためにも、ドカンと一発何かを得た方がいいのかもしれないしな。


「ご開帳〜〜〜」


中は一般的な民家……に見せかけた研究棟だな。埃が積もっているが、そこそこ綺麗に保たれている。さすがクソデカ缶詰。


めぼしいものはやはり武器の類だろうか。当時からしたら安価で市販されていたものも、今からすればものすごく硬度があることも少なくない。主にカーボン製品や包丁だな。


「サバイバルナイフゲットぉ〜」


薬品系は全部ダメになってそうだな。


用途不明……この時代の人からしたらだが、そこらへんも回収する。もしかしたら似たようなものを作れるようになるかもしれない。











そして、アタシは悪魔を発見する。












「あん? ……………おいおいマジかよ」




ここにあったか……………これは間違いなく今の環境を大きくひっくり返すロストテクノロジー。




ひとまず回収するが、絶対に査定には出さない。汚染区域で発見したものについては、発見者に所有権を認められているから、提出するかもこちら側で決められる。


ガラスを破壊し、中にあるものを取り出す。あとはこれを隠し収納に入れてオッケーだ。


なかなか大きかったが、ギリギリ入ったな。


バックにはまだまだ余裕があるが、欲張り過ぎてはいけない。ついさっき手に入れたばかりの切り札を使うハメになるかもしれないし、これだけでも随分のお釣りが来る。


「帰ろう」


帰るまでが遠足、というが、この時代では洒落にならないほど身にしみた言葉となっている。




自然に殺される世界、母なる森は狭くない故に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 12:00 予定は変更される可能性があります

自然郷《アーストピア》 ―科学の世界樹に殺された800年後の地球を再生させる旅― 涙目とも @821410

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画