第3話

20分ほど歩くと街の西側にそびえる岩山に着いた。小さな洞と古い井戸があるその場所に、この街一番の長老が暮らしている。それがダンちゃんのいう『どぎついばーさん』である。


『どぎついばーさん』については街の人々の中でも伝説化していた。湖の女神だとか、1000年生きているだとか、目が合うと呪われるだとか…。どこまでがデマでどこまでが事実かは分からない。


彼女が街を出歩くことはない。街の人々が日々、変わるがわるやって来ては洞の入口に食料や日用品を置いていく。そこに病気や探し物などのお困りごとを紙に書いて添えておくと、後日解決に必要なものが置かれているのだそうだ。


そんな魔女のようなばーさんを訪ねるのには理由わけがあった。


消息不明の父を探すダンちゃんの事情を知った街の人が、ダンちゃんが捜索のために渡した写真を食料に添えてばーさんに届けたのだ。すると、後日寄木細工の小箱が置かれていたのだという。それは父が誕生日に送ってくれたものと同じものだった。


それが、私がここに来た理由。


この日を迎えるにあたって、やりとりを試みたダンちゃんが言うには『どぎついばーさん』らしい。


彼女が父の行方について、本当に手がかりを持っているかどうかは不明。それでも藁をもすがる気持ちで遥々やって来たのだ。


「さ、着いたな。心の準備はいいか?とにかくだ。どぎついばーさんだ。何があっても驚くなよ。」


次元スタイルの顎髭あごひげを指先でシュルリと整えながら、横目で私を捉えてニヤリと笑うダンちゃん。


「どぎついキャラには免疫十分よ。心配ご無用!」


鼻息も荒く、いざ、魔女の棲まう洞の扉をくぐらん!!



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『時の扉』 弾丸妄想時空トラベラー クルクリ @kurukuri

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