中学時代に書いていた小説ノートを発見して、あまりの恥ずかしさに悶絶したという話
焼きおにぎり
恥の上塗り
先日のことである。
卒業証書やら賃貸契約書やら『大事そうな書類』を突っ込んでいるケースの中に、とある『呪物』が紛れ込んでいることに気がついた。
それは、私が中学生の頃に書いていた『小説』ノート。
ホラーみたいな書き出しなのに、全然ホラーでもなんでもなくて申し訳ない。
しかし私にとって、それは『呪物』と表現するべき品なのである。
中学生、と聞いて、もう既にお察しが付いていることだろう。
――厨二病。黒歴史。
天才でもなんでもない普通の中学生が書いたがゆえに、文章力は未熟だ。表現力がお粗末というだけでも、小説としてはかなりツラい。
が、問題はそれだけではない。
思い出すのは、とある友人の顔。
『呪物』の内容に触れるのは後に回すとして、まずは、これが作られた経緯について述べたい。
そもそも、この『呪物』は、友人に読んでもらうことを前提に書いていたものだ。
その友人とは、小学生のころから、手紙を交換したり、自由帳に描いた絵やマンガ、小説を見せ合う仲だった。
中学生になり、お互い部活動に入って忙しくなったが、頻度を減らしつつ、そのようなやりとりは続けられていた。
冒頭で述べた『呪物』がいつ製作されたのか、はっきりとした時期までは覚えていないけれど、おそらくは中学2年生から3年生くらいの時期だったかと思う。
そのころ、私の周りでは、角川スニーカー文庫、電○文庫などのライトノベルが流行していた。
読書については、小学生時代から続く仲間内でのコミュニケーションツールであったように思う。
私が小学生の頃に読んでいた『夢水清志郎』シリーズ、『かいけつゾロリ』シリーズ、『レストラン』シリーズ、『若おかみは小学生』シリーズなどなど、これらは小学校の図書室に置かれていたため、クラスのみんなが手に取りやすい環境にあったためだ。
図書室のどの本が面白かった、それなら自分も読んでみよう、という読書のハードルが低い環境は素晴らしいものだったなとつくづく思う。
そのような流れを中学でも引き継ぎ、読書仲間の面々は、徐々にラノベに手を広げていった。
私と手紙の交換などをしてくれていた子も、(ラノベだけではなかったが)読書好きで沢山の本を読んでいた。
中学生時代は、周りと競うように読む冊数を重ねていた記憶がある。と言うのも、私の住んでいた県では、1年間に読了した本の数が50冊以上になると表彰してもらえるとかで、『読書カード』なるものに読んだ日とタイトルを記入するだけで、平たく言うと偉い人にホメてもらえたのだ。
割と真面目な生徒が多かったからか、表彰のため、友人に自慢するためにと各々が読書にのめり込んでいった。
小説であれば、作者やレーベル、ジャンル等は指定がなかったから、私たちはそれぞれが本屋の文庫コーナーに行き、面白そうなタイトル、流行りのタイトルを買って読み、友達にシェアしていた。
ちなみに、持ち本、借り本問わず、中学生当時の自分がどハマりして読んでいたのは、『キノの旅』シリーズ、『涼宮ハルヒ』シリーズ、『とある魔術の禁書目録』シリーズ、『デュラララ!!』シリーズ、『レンタルマギカ』シリーズ、『我が家のお稲荷さま。』シリーズなど、やはりラノベが中心であった。
私と世代が同じなら、知っている人が大半であろうタイトルだ。
さて、『呪物』に話を戻したい。
私もそうなのだが、読書好きにとって、自分でも話やキャラクターを考えてみたいなぁと思うのは、よくある現象ではないかと思う。
私の場合、友人が身近な読者となってくれる状況にあった。文章を書いている人には共感してもらえると思うが、ひとりでも読者がいてくれるというのは偉大なことだ。
そして小説は、ノートとペンがあれば書き始めること自体は可能、と、その着手にはお手軽さがある。
そんな状況による間違いから、私は『呪物』を生み出してしまった。
当時は楽しく書いていたのだろうが、今読み返すと内容は酷いものだ。
要素だけを見れば、魔法、神、高校、生き別れの兄弟といった具合で、憧れの現代ファンタジー感がある。
しかし、蓋を開けてみれば、それっぽい台詞の羅列。あとは美少年キャラのウインクに気絶するキャラが出てきたりするなど、プンプン臭う女オタク感。
どこにでもいる一般中学生女オタクが書いているのだから女オタク感が漂ってしまうのは当然なのかもしれないが、あまりにも見ていられない出来映えである。
そして、我が最大の後悔は、黒歴史そのものであるこの『呪物』を、畏れ多くも、頭と性格が良い友人に読ませてしまっていたこと。
これに尽きる。
彼女は今でも連絡をすれば会ってくれて、手書きの手紙交換を未だに続けてくれている。本当に頭が上がらない。
友よ、こんな私を許してくれてありがとう。
と、こんなに長々書いておいて、言いたかったことはそれだけである。
しかし、まあ、その『呪物』。
黒歴史と言いつつ、140ページにもわたって書いてあるから、「捨てるのはもったいないかな?」の精神で、一人暮らしの新居にまで持ち込み、大事に仕舞ってあった。
見付けた際には、懐かしさもあったので「おお」とちょっと感慨深く手に取った。
そして1ページ目を開いた。
苦しみながらも最後まで読んだ。
せっかくなので、今からダメだと感じたポイントについて言っていきたい。
ちなみに、先程から中学時代の自作小説を、繰り返し呪物と表現しているけれども、『呪物』というタイトルというわけではない。
タイトルは、ノートのどこにも書かれていなかった。多分、タイトルをつけるのは苦手なので、最初から決めるつもりもなかったのだと考えられる。
まず、ダメポイントその①。
〈シンプルに文章が下手〉
……とりあえず、現在の文章力は置いておいて。
語順がおかしくて、読んでいる途中にかなり引っかかる。
それと、本来は陳腐な表現しかできないことがありありと伝わってくるのに、なぜかいきなり難しい単語を使おうとして、そして誤用している。しんどい。
ダメポイントその②。
〈顔の良いキャラ出しすぎ〉
美形キャラの大渋滞を起こしている。
文中に「美少女」とか「美少年」、「端正な顔立ち」なんて表現が出てくるたび、キショすぎてノートをバリバリに引き裂いてやろうかと思うくらい恥ずかしくなるのだが、その頻度が高すぎる。しんどい。
ダメポイントその③。
〈キャラの台詞が痛々しい〉
上記②の顔の良いキャラが、みんな痛々しい台詞でしゃべる。
謎に、「That's right!」等、ところどころ英語でしゃべるキャラが出てくる。ウザい。ウザいけど、作者はかっこいいと思って書いてそうなのがまたしんどい。
ダメポイントその④。
〈どこかで見たような設定、ストーリー、キャラクター〉
これが一番のダメポイントか。
何に影響を受けたのかが分かりやすすぎる。
もちろん、上で挙げた作品の影響がモロに出ていることは言うまでもない。しんどい。
ダメポイントその⑤。
〈何も説明されない〉
序盤にキーワードとなりそうな意味深な単語を出しておいて、最後まで読んでもその説明が全くない。まあ……説明するのって難しいからね。
ダメポイントその⑥
〈俺たちの戦いはこれからだ!エンド〉
最後のページに「つづくかも。」と書いてあるのだが、続きを書く気など毛頭ないし、当然のごとく続いていない。
ちなみに、ラスボスと思わしき人物を逃がしたまま話が終了している。
ダメポイントその⑦
〈メインキャラが高校生〉
これを書いていた当時は中学生のはずなのに、高校生をメインキャラにするのはまずい。
何故って、「これ書いてるの中学生の時で合ってたよね? 流石に高校生でこんな幼稚な文章書かないよね?」という不安を読者に与えてしまったからである。
……と、まだまだ細かく書こうと思えばいくらでも改善点はあるのだが、「今はどうなん?」という恐ろしい疑問が常に隣り合わせなので、もうこの辺りで終わりにさせていただきたい。
代わりに、一つだけ褒めておきたいところがある。
それは文字が綺麗だという点。書き殴ったような文字は見受けられなくて、一応、読んでもらうために丁寧な字を書くということだけは気を付けていたようだと分かる。
しかし、自分が中学生のころには(私の周りだけかもしれないが)中学生がインターネット上に自作小説を公開するのが一般的ではなかったので、それは不幸中の幸いだったと言える。
もしも『呪物』が電子データであれば、最後に挙げた『字が綺麗』という長所も出なかったことだし。
ただ、こんなのがネット上に公開されていたら、私は恥ずかしさのあまり死んでいたのか? と言えば、別にそんなこともないのかもしれない。
なぜなら、今まさに私は「恥」を晒しているところだからだ。
畏れ多くも今年の夏ごろから、私はカクヨム上に小説をアップし始めた。
カクヨムにユーザー登録したきっかけは、昔、それこそ中学生時代にハマりまくった作品の作者、つまり尊敬している先生が、小説の連載を始めたからである。
(ペンネームが違うので、どなたとは書かないでおきます、一応。)
「なんでこの作品が無料で読めるんだ? カクヨム恐ろしすぎる……」
と、ユーザー登録をきっかけに、他にも色々と作品を読み始めた。
読むことは好きだ。
しかし読んでいるとやはり、「自分も書いてみたいなぁ」と思ってしまうのは何故なのだろう。
それで、8月の半ばに「ミミズの死体を写真に撮る女子高生の話」という、おそらく私しか喜ばない短編小説をアップしてみた。
それまで、ピク○ブに二次創作の小説を上げたことはあったが、オリジナル作品を上げるのは初めてだった。
出来映えはともかく短編を書き上げた私は、長編もチャレンジしてみたいと思うようになり、色々と空想を重ねた。
最初は百合モノを書きたいと思いつつ、それは物語の展開に悩んでしまって断念。最終的に、小中学生のころに憧れたようなファンタジーを書いてみたいと思った。
中学生以来のファンタジー挑戦と言うことで、これは『呪物』の大幅リメイクと言っても良いのかもしれない。
しかしそれが地獄の入口だった。
私は、物語を書くことに関する経験値は『呪物』を生み出した当時からほとんど変わっていないし、当然ながら上手く書くことが出来ない。上手く書けないので、書きながら手が止まってしまう。
大人になって目が肥えてしまっている今、常に「自分の文は下手だなあ」と思いながら文を書いていて、小学生・中学生の頃のようにただ楽しく書くということもできず、苦しい気持ちのほうが大きい。
それでもまあ、自分なりに『呪物』を書いた頃よりも成長を感じられれば、それでいいかなと思っている。
そしていずれ、かつてリアルタイムで『呪物』を読み、当時の私にありがたい感想をくれて、その上で現在もなお友人を続けてくれている女神に、「また趣味で小説書いてるんだ……」と打ち明けることを目標にしたい。
ちなみに女神こと友人は、高校卒業後は国公立大学に進んで文藝部に入り、そこで同じくハイレベルな人達の中で作品を執筆していた人で、私などとは全くレベルの違う人である。
だから恥を上塗りすることになるだろうけど、ちょっとでも面白いと思ってもらえたら、嬉しい。
中学時代に書いていた小説ノートを発見して、あまりの恥ずかしさに悶絶したという話 焼きおにぎり @baribori
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