お久しぶりです〜!年度末が忙しく、まともに浮上できず申し訳ないです……
息抜きに短いものを書いたので、以下に載せます。
以前書いた『久々に会った元カノが妊婦だった。』
https://kakuyomu.jp/works/16818093089473054070に登場する"元カノ"(未冬)の夫、"住吉くん"の母親視点という、なんとも謎な短編ですw
しかも、作中時間の3年前という設定。
ちなみに近況としては、住吉くん視点も入った『久々に(以下略)』の続編をのんびり製作中です〜!
(追記)
我慢できずに短編として1エピソード新規投稿しましたw
https://kakuyomu.jp/works/16818622171650182869/episodes/16818622171650235666*****
長男の周真は、24歳になってもどこか子供らしさが抜けきらない子だ。
内向きな性格で、趣味はゲーム。
しかし趣味に関しては並々ならぬ思いがあるようで、心待ちにするゲームタイトルの発売日には、前もって有給休暇を申請してしまうほどだ。
そんなことで仕事を休むだなんて、と、母親としてはなんだか情けなく感じてしまう。その情熱を向ける先は他にないのだろうか。
しかし、もう周真も大人なのだし、有給の使い道は自分で考えて決めるべきだろう。……"今時の若者はそういうもの"、と思って、自分で自分を納得させるしかない。
そんな息子が、今日は夜11時を回っても、まだ帰っていなかった。
『昔の友人が地元に帰ってきたので、食事をしてくる』という旨は聞いている。しかし、そう遅くはならないだろう、という話だったのに。
──いつもだったら。
残業で帰宅が遅れる場合にも、マメに連絡を入れてくれるあの子が。
何かあったのだろうか。
思えば、昨日から様子がおかしかった。少しだけ帰りが遅かったうえ、夕食は「食欲がない」などと言って断っていたし。
それでも今朝になればすっかり元気になり、「お腹空いた」と言って夕食の残りまで平らげていた。だから、油断したのかもしれない。
とにかく気が気ではなかった。スマホを確認しては落胆し、またすぐに手に取ってしまう。
「……ねえ優也、お兄ちゃんから何か連絡来てたりしない?」
落ち着かない私は、離れて暮らしている大学生の次男に連絡をした。
「母さんさぁ〜」
心配する私をよそに、次男は呆れ口調だった。
「兄貴、もう社会人だろ? 過保護過ぎだって。ていうか今日、金曜じゃん。どうせ朝になればフラッと帰って来てるだろ」
「そうかしら……」
「そうだってば」
子どもに諭され、気を揉みながらもベッドに入り、朝を待つことにした。どうか、無事で帰ってきますように……と祈りながら。
そして翌朝。
玄関のドアが開く音に目が覚め、私は思わず寝室を飛び出した。
「……周真?」
そこに待ち侘びた長男の姿を認め、私は「ああ……」と脱力してしまった。安堵やら怒りやら、様々な感情が腹の内から沸いて出てくる。
周真は私の顔を見てギョッとしたようだが、すぐに取り繕うように苦笑いをした。
「た、ただいま……」
──あんたって子は。
私は呆れて、何から言うべきかと言葉を詰まらせてしまう。
しかし、どこか昨日までの息子とは違う気がして、しばしその顔をじっと見てしまう。
浮かれているような、しかし自信に満ちたような顔つき。それから、肌もなんだかツヤツヤとハリがある。
──なるほど……ね。
息子を長年近くで見てきたからこそ気が付けたのかもしれない。
ずっと子供のようだった周真にも、ついにこの時が来たか。
「……ええ。おかえりなさい」
それだけを告げて、寝室に戻った。
本当は、小言でも言ってやるつもりだった。
「連絡くらい寄越しなさい」って。
けれど、幸せそうな息子の顔を見たら、そんな気持ちは失せてしまった。私から言えることなんて、何もないのだろう。
息子の成長が寂しいような、誇らしいような、そんな朝であった。