第3話 YouTubeライブでダンジョン攻略

「ハロハロー‼︎ ゆーちゅーぶ☆」


女装くんが元気よくカメラに向かって手を振る。そう、今日はYouTubeでのライブ配信だ。しかも、舞台は山奥にある例の謎のダンジョン。俺も一緒にいるんだが、正直これ、やっていいものかと悩んでいる。


「今回はモンスターが出る謎のダンジョンにやって来ました‼︎ 場所は上毛地区の山奥とだけww」


画面越しの視聴者たちに語りかけながら、女装くんはニートの俺と妹の梨花、そしてピンクのクマ・デスコを引き連れて、ダンジョンに入るところだ。俺たちはこの状況をじっと見守っていた。


「お兄ちゃんさぁ、ライブ配信なんて許して良かったの?」梨花が俺に耳打ちする。


「俺も最初は断ったよ。でも、女装くんがバイト代を出すって言うしなぁ。俺と梨花とデスコに一万円ずつ、だってよ」


「端金じゃん?」


「ああ、そうだよな。でも俺はニートだからさ、つい考えてしまうんだよ。一万円あったら焼肉できるって」


「お兄ちゃんのバーカ」


「辛い」


そんなやり取りをしている間にも、女装くんは元気よくカメラに向かってメンバー紹介を始めていた。


「今日のメンバー紹介するよ! 世紀末風美少女ヤンキーの妹ちゃん! 今日はボクのボディーガード兼照明係です!」


「うっす」と、梨花が冷めた口調で挨拶する。


「次は動くクマのぬいぐるみ、デスコ! カメラワークを担当してくれます!」


デスコはニヤリと笑って、「敵かなぁ? 味方かなぁ?」とボソリ。


「最後は……糞ニート‼︎ 荷物持ちです!」


「俺の扱い酷くね?」


「そして主演は女騎士のコスプレしたボクでーす。じゃあ、ダンジョンにレッツゴー♪」


俺たちは女装くんに引っ張られるようにして、ダンジョンの中へと足を踏み入れた。すぐにスライムが現れたが、女装くんが躊躇なく脇差しの剣を抜き、何匹もスライムを斬ってやっつけた。


「おりゃー‼︎ ざぁーこ♡ざぁーこ♡」


「女装くんは可愛いだけじゃなくて、オスみもあるから剣撃が格好いいなぁ」俺が感心していると、女装くんはカメラに向かって得意げに言った。


「じつは演劇教室で剣劇を学んでたことあるんですよね‼︎ 剣の魅せ方は心得てます!」


周囲のスライムを全滅させ、まるで女豹のような仕草で剣を鞘に収める女装くん。ネットでは「格好いい」「可愛い」とコメントが殺到し、視聴者は大盛り上がりだった。


「つまらねーものを斬ってしまった。あっ、この階、もう敵いないの?」


デスコがカメラを操作しながら答える。「いないヨォ。次は地下2階に降りるよ。次はゴーストが出るホラー階なのさ」


地下2階に降りてすぐ、俺たちは人の形をしたゴーストの群れに遭遇した。女装くんは素早く剣を振り回して斬りつけるが、どうも手応えがない。


「うっわ‼︎ 斬った感触がないし、ゴーストを倒せてない! どうやればイイんだよぉ……」


「ふむ、妹ちゃん、スライム倒してなかったけど、パーティー参加者扱いだから、さっきレベル上がったよね?」デスコが聞く。


「うん、レベル5になってる」


「なら、ソードヒールという魔法が使えるヨォ。それを女装くんに掛けてあげて」


「こうかな⁉︎ ソードヒール‼︎」


梨花が魔法を唱えると、女装くんの剣が青白く光り、ヒールの力が宿った。


「ゴーストやアンデッド系はヒールなどの回復魔法でダメージをくらう。それで斬りつければゴーストをやれるヨォー!」


女装くんはゴーストの攻撃を避けながら、反撃の準備を整えた。そして、冷や汗を流しながらも自信を取り戻すと、高らかに叫んだ。


「闇は闇に‼︎ 亡霊はあるべき場所へと還れ‼︎ 我が閃光の一線は全ての穢れを焼き尽くす‼︎ さあ、反撃のショータイムだ!」


女装くんは次々とゴーストを斬りつけ、瞬く間に全滅させた。ゴーストたちは光に包まれ、次々と消えていく。


「またボクの大勝利かぁ。敗北が知りたい」


デスコは軽く笑って言った。「さあ、2階の敵も片付いたし、3階に行くヨォー。ちなみにこのダンジョンは3階が最終階層ね」


「もう終わりなの? 拍子抜け」梨花がつまらなさそうに言う。


「このダンジョンはまだ生まれて間もないから、地下3階までしか成長できなかったみたい。でも、3階にはボスがいるからね、気を抜かないで」


「ボクがいれば楽勝でしょ♪」女装くんが自信満々に答えるが、デスコがすかさず忠告した。


「えー、油断しない方がいいヨォ」


そして全員で地下3階に降りる。梨花が言った。


「あー、めっちゃ闇みが強くて暗い。ちょっと照明を広域モードにして、全体を照らすか……」


照明が3階全体を照らし出すと、そこはがらんどうの広い空間だった。女装くんが不思議そうに言う。


「3階は広いだけで、通路も何もない? ただのフロア?」


その時、上から砂のようなものが少し落ちてきた。俺は嫌な予感がして叫んだ。


「……梨花! 照明をハイビームで上に照らせ! 速く!」


梨花が言われるがままに照明を上に向けると、そこには全長10メートルほどの巨大なガイコツ、ガシャドクロが天井に張り付いていた。


「デカっ!」


「まさか、あんなに巨大化するなんて……」デスコが焦りを見せる。


「みんな避けろ!」


俺の叫び声と同時に、ガシャドクロが天井から落下。巨大な骨の怪物が俺たちを押し潰そうと迫りくる。


第三話 終わり。

次回に続く。

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山奥ニート、謎のダンジョンでレベルアップして無双生活始めます 犬ティカ @inutika

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