乱闘騒ぎ終結、そして大和屋
乱闘が始まり、斉藤さんや藤堂さんらが刀を続々と抜いていく。
俺もずっと見ているわけにもいかず、初めて刀を抜いた。
「重っ」
当然だが未来の木刀よりずっと重い。
抜くのにも一苦労した。
こんな時に出雲さんがいれば…。
そんな風に思ったが、出雲さんは今近藤さんらと共に奉行所に行っている。
すると一人の力士が八角棒を殴りかかってきた。
俺だって出雲さんに劣るものの、大会で個人戦三位の実力なんだ。
ここで死んでどうする。
そう考えると、不思議と刀の重さが気にならなくなる。
息を吐いて刀を構える。
そして力士が八角棒を振り上げた瞬間に、肩を斬りつけた。
「ぐっ」
斬りつけた力士は呻き、うずくまる。
そして続けざまに足払いをかます。
その動きに我ながら驚く。
足払いなんてしたことなかったのに。
どうやら少しは、俺の体は天然理心流を覚えているようだ。
周りを見ると芹沢さんは鉄扇で力士達を張り倒している。
そして、この乱闘は新選組が優位なまま終わった。
「ふん。
口ほどでもないな。
飲みなおすぞ」
芹沢さんはそう言って中に戻っていく。
近藤さんや出雲さん、井上さんらが、奉行所の人が来た。
「すみません。
明日にでも報告に上がります」
と山南さんが奉行所の人に頭を下げる。
力士側には、死者が一人、怪我人が五人という犠牲があった。
新選組では数人が打撲等の軽い怪我があっただけだ。
「見廻りで騒ぎを起こした…なんて、どういうつもりなんだ」
「そう言われましても…。俺だけやらないわけにいかなかったので…」
「お前だって怪我をおわせたんだろ」
前川邸に帰った後、土方さんに小言を言われ、反論したが睨まれ、俺は黙るしかなかった。
その後、近藤さんらが話し合いを進めたおかげで力士達とは無事和解できたという。
相撲興行を行うことにもなるほどだった。
力士達との乱闘騒ぎから少しした頃、事件は起こった。
夜、ぐっすり眠っていた俺と出雲さんは永倉さんに叩き起こされた。
「二人とも起きろ‼︎
大和屋を芹沢さんが焼き討ちにしてるぞ‼︎」
「はあっ⁉︎」
上洛中のあれかよ、と寝ぼけた頭で考えながらも起き上がり、急いで寝間着から普段着へと着替える。
永倉さんを見ると、既に隊服を着ていた。
「出雲さん、大和屋って…」
着替えながら俺が出雲さんにそう言うと
「あぁ、そうだ。
尊王攘夷派の奴らに資金を渡している生糸問屋だ」
出雲さんも着替えながら頷いた。
「芹沢さんが金を巻き上げてやろう、ってなったらしい」
永倉さんはそう言い、俺と出雲さんが着替え終わると、先に部屋を出る。
「フユ、駿。
いくぞ」
そう言われて俺も出雲さんも、永倉さんに走って着いていく。
あれ、今日何日だ。
確か八月十三日。
すっかり忘れていたが、事実であればあと五日で、八月十八日の政変が起こるんだ、ということを思い出す。
これからますます大変になる…。
そう、思った。
誠の刀-青春疾風伝- 氷崎悠良 @hisaki_0821
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。誠の刀-青春疾風伝-の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます